
シネム・センギズ
トルコと一部の湾岸諸国との間の現実的な和解は、両者の間の冷戦の終結と、非エスカレーション外交に基づく新しい時代の始まりを象徴している。
11月17日、バーレーン外務大臣アブドゥルラティーフ・ビン・ラーシド・アル・ザヤーニ氏はトルコを訪問し、同国の外相メヴルト・カヴソグル氏と二国間関係や地域・国際情勢について会談した。来週、アラブ首長国連邦のシェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン皇太子殿下が数年ぶりにアンカラを訪問し、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領と会談を行う予定である。
リビア、シリア、エジプト、アフリカなどの問題で対立していたトルコとバーレーン及びアラブ首長国連邦との関係にとって、湾岸諸国の有力者の2回の訪問は「新しい時代の始まり」であり、象徴的な転機となるとみなされている。
またトルコからアラビア湾への「要人往来」が予定されているとの報道も流れている。アラブ首長国連邦の皇太子殿下がトルコを訪問するのに先立ち、トルコと首長国の政府関係者が11月23日にドバイでビジネスフォーラムを開催する予定である。また皇太子殿下は水曜日にトルコのアブダビ大使を宮廷に招き、会談を行った。
昨年、湾岸諸国がイスラエルとの関係を正常化するアブラハム合意に署名したことで、トルコと湾岸諸国との関係はさらに悪化した。そのため、合意に署名した2国の政府関係者がアンカラを訪問した後、同じく緊張しているトルコとイスラエルの関係がどのように推移するのかが注目されている。
またトルコと一部の湾岸諸国との間の和解の風潮は、シリアにも影響を与える可能性がある。UAE政府はトルコ政府とシリア政府の関係を復活させることに関心を持っているという報道もある。近日、首長国連邦の皇太子殿下はシリアのアサド大統領とダマスカスで直接会談し、イランのホセイン・アミラブドラヒアン外相と電話会談を行った。
今回の和解の背景には世界的なコロナ禍に関連する経済的な懸念がある。
シネム・センギズ
今週カヴソグル外相がイランを公式訪問し、エルドアン大統領も近々イランを訪問する予定であると報じられている。イランからレバノンに渡ったカヴソグル外相は、同国への支援を申し出た。
トルコとアラビア湾岸諸国の和解は、いくつかの国内、地域、国際的な要因の結果である。国際的にはバイデン米国大統領の就任により、湾岸諸国は米国の安全保障上のコミットメントに疑問を持つようになっただけでなく、2011年以前と同様に地域協力に頼ることの重要性を強調するようになった。
また地域的には、アル・ウラー宣言への署名はトルコ政府が湾岸諸国との関係を再構築するためのさらなる誘因となった。トルコ国内では、同国の不安定な経済状況に加え、湾岸諸国の安全保障や経済面での懸念、ビジョンに沿った投資の必要性などが、トルコ・UAE・バーレーンの和解の原動力となっている。
一方UAEは、トルコ国内での経済的地位の回復に努めていると見られる。これはトルコの与党が政権を失った場合、将来の新政権に対する戦略とも関連していると思われる。さらにトルコと湾岸地域の和解に影響を与える可能性のある2つの重要な選挙が控えている。1つ目は、2023年に予定されているトルコの選挙、2つ目は、2024年に予定されている米国の選挙である。
トルコと湾岸諸国は、バイデン大統領選挙の結果と地域情勢に基づいてリスク回避と戦略を調整しつつある。この風潮の主な背景は現実的な政治であり、関係国はそれぞれのイデオロギーの相違点を越えて、経済と持続的な外交的関与に焦点を当てることで確実な利益を得ようと決意しているようだ。
また最近の会談では、関係国は軍事力を中心としたハードパワー政治やイデオロギーを中心とした外交政策の時代を終え、現在は利権を中心としたプラグマティズムに重点を置いていることを示している。