
ルバ・オバイド
ジッダ: サウジアラビア政府が新型コロナウイルスによるロックダウンを緩和したにもかかわらず、サウジアラビアの人々はオンラインショッピングを続けており、eコマースの急増により中小企業はeコマースへの適応を急いでいる。
eコマースにより世界の小売市場は崩壊を免れ、消費者は新型コロナウイルス感染流行の第一波の間に外出せずに済んだ。しかし、中小企業はコロナ禍による影響に対して最も脆弱であり、e-プラットフォームはその生き残りに重要な役割を果たした。
サウジアラビアの消費者行動は、店舗の閉鎖を命じられるや否や、ロックダウン中に一変し、消費者の間に熱狂が巻き起こった。中小企業もまた、オンラインショッピングの需要の高まりに対応するだけでなく、損失を最小限に抑えて生き延びるため、eコマースへの適応を余儀なくされた。
国連国際貿易センターのチーフエコノミスト、マリオン・ジャンソン氏は6月、世界の中小企業の約20%がコロナ禍を生き残れない可能性があると述べた。
Visaによる最近の報告書により、サウジアラビアの国内企業の間で不安が高まっており、67%の中小企業において消費者平均支出の減少がみられることが明らかとなった。
多くのサウジアラビアの消費者は、初めて主に日用品を購入する目的でオンラインショッピングを開始した。Visaの報告書によると、調査対象となったサウジアラビアの消費者の3分の2が、新型コロナウイルスをきっかけに初めてオンラインで食料品を購入し、59%が初めてオンラインの薬局で購入したと回答している。
「最初は混乱しており、何が許されて何が許されないのかわからなかった 」と、ジェッダの政府職員スハド・ザイン博士は述べた。「日用品の買い物のため外出することにリスクがあるのか、ないのか。運転手を含めた家の中の全員の安全を確認し、生活スタイルを変えてしまう目に見えない脅威にさらされないようにしなければならなかった。人々は青果品からペットボトルの水、家電やレジャー用品まで、日用品のほとんどをネットで購入した。新しい変化を受け入れるための時間が必要だったが、実行するしかなかった。」
コロナの恐怖により、消費者の行動が今後永遠に変化することが予想される。「ロックダウンが解除された後もさらに便利になった 」とザイン氏は付け加えた。「数ヶ月後にはこれに慣れてきて、家族の新しい購入手段となった。」
Visaの報告書によると、このような状況がeコマースの触媒となっており、半数以上がコロナ禍以前にeコマースサイトを立ち上げていたものの、国内企業の38%がコロナ禍の直接的な結果としてオンラインサービスを導入したと報告している。
また報告書ではeコマースの急増、信頼するブランドの嗜好、裁量消費支出の減少、持続可能性の二極化が見られるとしている。消費者の消費金額は大きいものの、買い物の頻度は減少し、消費行動は今後自宅から近い店舗にシフトしていくだろう。サウジの消費者行動にも変化がみられる。
しかし、現金決済からデジタル決済への移行が進む中、eコマースへの移行は、現金のみを取り扱う小売業者に悪影響を及ぼしており、消費者行動の変化を理解し、その変化に緊急に対応しなければならない企業にとっては、厳しい課題となっている。
「サウジアラビアの事業主は現在、eコマースへの移行にあたり対応しなければならない複数の課題に直面しており、中にはeコマースの技術がどのようなメリットをもたらし、どのような選択肢があるのかについての知識が不足している人もいる」と、事業開発・マーケティングコンサルタントのタララル・アブドラ氏はアラブニュースに語った。
「また、eコマースへの移行を成功させるためには、技術パートナーを見つける必要がある。そして最も重要なこととして、事業主らがビジネスモデルキャンバスを再検討し、彼らのビジネスにとってベストとなるよう、これらの技術をどのように利用するかを決定する必要がある。」
これらの課題を克服するために、アブドラ氏は、事業主が新しいビジネスモデルに基づき適切な技術パートナーを探すことを提案した。
「適した技術パートナーを見つけることができなかった場合、事業者らは、立ち上げなければならないアプリケーションやウェブサイトの明確な予算を設定しなければならない。しかし、これらの技術サービスのサポートを提供している会社に打診する前に、これらの会社の実際の顧客と接触し、彼らのビジネスや彼らがどのように対処しているかを問い合わせることが重要である。」
また、技術コンサルタントや同様のプロジェクトの経営者に支援を求めることにより、時間と労力を削減することができると付け加えた。ビジネス・アクセラレーターやインキュベーター、起業家のコミュニティーやテクノロジーのコミュニティーに参加することで知識や人間関係が広がり、これによりスムーズな移行につながる可能性がある。
しかし、これらの変化には費用もかかり、コロナ禍の影響によりすでに弱体化している事業者に新たな財務的負担を課し、全く異なる顧客グループをターゲットとした新しいビジネスモデルを構築し、適応するため時間も要することになる。多くの小規模企業にとっては深刻な課題である。
アブ・モハメド氏は20年前から小売業を営んでいる。彼には以前、特定の価格帯の特定の種類の服を買い求める常連客がいた。しかし、ロックダウンにより、彼はほとんど何も売ることができなかった。
「ここ数年、別の種類の顧客をターゲットにして、服を輸入してインスタグラムやeコマースサイトで販売し始めた 」とアラブニュースに語った。「しかし、現在の店舗を完全にオンラインに置き換えることはまだできない。そのためには店の評判を上げるための時間と資金が必要だ。」
ロックダウンは彼にとって過酷な経験であり、消費者が徐々に良く知られたブランドからのオンラインショッピングに移行していることから、彼の店舗をブランド化するという以前から考えていた計画を早く実行に移す必要性を認識したという。
「この変革は決して簡単なことではない。良いマーケティング計画に加え、ツールだけでなく、スタッフに対しても十分な資金を確保する必要がある。これは全く初めての経験となる。eコマースの現実に直面しており、eコマースが我々の唯一の進むべき道であることを認識している。その道を進まなければ、これまで何年もかけてやってきた私の仕事は徐々に消えていくだろう。誰にもわからないがこの危機は、もしかしたら災い転じて福となるかもしれない」と加えた。