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サウジでヘルステック分野の女性向けウェルビーイング・アプリが誕生

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23 Oct 2021 02:10:26 GMT9
23 Oct 2021 02:10:26 GMT9
  • サウジアラビアでは、女性の健康を目的としたテクノロジー「フェムテック」が急速に発展
  • 「IMC Women’s Health App」は、フィットネスのトラッキングだけでなく、ユーザーのボディメトリクス、妊活、ウェルネスをモニタリング

カリーン・マレック

ドバイ:サウジアラビアで成長しているヘルステック分野に、女性の健康状態をモニタリングするための新しいスマートフォンアプリケーションがまもなく登場する。

11月1日にリリースされる予定のIMC(サウジアラビア国際医療センター)の女性向け健康アプリは、ユーザーのボディメトリクスを追跡し、ユーザーが健康をよりコントロールできるようにするとともに、全体的な健康状態の改善を促す。

このアプリは、単なるダイエットやフィットネスの管理だけではなく、婦人科サービス、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、不妊症、疲労、ホルモン不調などにも対応している。また、生理周期、排卵、受胎状況を把握するためのカレンダーや計算機、妊娠やウェルネス管理のための機能も備えている。

このアプリのデザインと分析を担当したファルハ・アブドゥルハーク氏は、アラブニュースの取材に対し「私たちは、ウェルネスと健康を重視しています」と語った。

「それは、ホリスティックなアプローチで心と体、魂を癒すという私たちのビジョンにつながります。生物学的には、女性の方が寿命が長いことが知られています。ただ、寿命が長いからといって健康の質が高いわけではありません」と続けた。

さまざまな機能により、女性は妊娠の予測、症状の記録とモニタリング、避妊、血圧、血糖値、薬の服用などを行うことが可能になる。アブドゥルハーク氏が説明するように、こういった基準で測定を行うには、より多くのデータを収集し、健康管理をよりコントロールできるようにするための、女性のために特別に作られたサービスが必要になる。

「女性特有のニーズ、女性に影響を与える疾患に特化したアプリを提供することで、常に医師の診察を受けることなく、より多くの機会と情報を提供することができます」と彼女は語る。

「このアプリを通じて、より多くの患者さんに来院していただきたいと思っていますが、これは患者さんがすぐに情報を得られるようにするためのものなのです。例えばオンラインで読むよりも、より信頼できる情報源から、必要な情報を受け取ることができます」

このアプリはApple App StoreとGoogle Playでリリースされる。アラビア語と英語で開発された同アプリは、まずジェッダのIMC病院の患者が主な対象となり、次にサウジアラビア国内の女性、そして最終的には世界の女性に提供される予定だ。

「患者さんからのフィードバックをもとに、改善すべき機能がないかどうかを評価します」とアブドゥルハーク氏は言う。「サウジアラビアでは、これまで女性向けのアプリはなかったこともあり、女性のためのアプリを作ることは重要なのです」

女性の健康を目的としたテクノロジーはフェムテックと呼ばれ、急速に発展している分野である。

米大手調査会社Research and Marketsのレポート「FemTech Market – Global Outlook and Forecast 2021-2026(フェムテック市場・グローバルな見通しと予測:2021-2026)」によると、この分野は2020年から2026年の予測期間中に、年平均成長率13%以上が見込まれている。

ヘルスケア業界ではデジタルツールの導入が進んでおり、報告書によると女性の80%が健康関連の商品にお金を使い、家事の90%を、健康を基準にして決定している。全体としては、妊産婦の健康に関連する世界のフェムテック市場は、2026年までに190億ドル以上に達すると予想されている。

「これは女性の健康を発展させることに焦点を当てた、巨大な、技術ベースの産業なのです」アブドゥルハーク氏は語る。「そして女性の非常にニッチな、特定の問題に焦点を当てています」

「生理の周期や更年期の前後、妊娠、産後、バースコントロールなど、女性が経験する人生のステージはたくさんあります。これは、私たちの全体的な幸福度を向上させるためのもので、デジタルツールはそのための手段の一つです。」

「女性はヘルスケアに関して鍵となる意思決定者です。しかし健康に関して得られる情報が少なかったり、情報が誤解されていたりするのも事実です」

このようなトラッキング機能は、サウジアラビアの女性にとって、旅行の手配やウムラ(巡礼の一形態)などの宗教上の義務を考慮する上で、特に重要だと考えられる。

「すべてのデータ、情報、意識を総合的に把握することで、病院に行ったときには医師にどう症状を伝えればよいかを知ることができ、それは早期診断の助けになります」と彼女は語る。

特にアブドゥルハーク氏は、妊娠の可能性、体重やホルモンに影響を与え、診断が難しいとされる多嚢胞性卵巣症候群の発見装置としての役割を強調する。

このアプリは、IMC病院がサウジアラビアの女性に提供することを目的としたデジタルソリューションの一部である。このアプリのプロジェクトマネージャーであるオマー・サイード氏はアラブニュースの取材に対し「医療が患者中心にパーソナライズドされていく現在の状況に合わせ、サウジアラビアの女性のさまざまなニーズを考慮し、テクノロジーを活用して、サービスを手頃な価格で利用できるようにすることが必要です」と述べている。

「世界では数十年にわたり、女性の健康問題やニーズが男性とは異なるという事実を考慮せずに、ヘルスケア製品が開発、設計、提供されてきました。そして今、機械学習、IoT、AI技術は、サウジアラビアの女性のためのインタラクティブな健康ソリューションを生み出す大きな可能性を秘めています」と述べている。

がん検診の改善や女性特有の病気の診断から、妊娠や生理周期の問題に対処するためのセルフケア管理やエンゲージメントの改善、あるいは関節炎、骨粗しょう症、うつ病、アルツハイマー病などの病気の治療まで、多様なニーズや要望がソリューションに組み込まれれば、テクノロジーや科学はより速いスピードで奇跡を起こすことができると、サイード氏は考えている。

「フェムテック市場の中で、ソフトウェア、ウェアラブル、アプリの大半のカテゴリーが妊活や妊娠で占められていますが、それだけではなく、もっと先に進む必要があるでしょう」

「生殖可能年齢だけではなく、あらゆる年齢層の女性のニーズを考慮する必要があります。更年期障害やシニアケアも重要で、同様に慢性疾患やホルモン障害への対応も重要です」

また、経済的なインセンティブもある。世界的に見ても、女性の生物学的ニーズに対応するソフトウェアやテック企業は、2019年に8億2000万ドルを生み出している。「ただ、それよりも大切なことがあります。現在、そして未来において、新しい世代により健康的な人生を生きてもらうこと。そのために、これらの技術に女性を含めることは単なる選択ではなく、必然によるものなのです」

この新しいアプリは、間違いなく市場に受け入れられるだろう。フィリップス社の「未来の医療環境指数(FHI)」によると、デジタル技術を使って健康状態を把握している患者の34%以上が、より自分の状態をコントロールできていると感じている。

ジェッダのIMCで最高情報責任者を務めるムハンマド・スィディクイ氏はアラブニュースに対し「このアプリは、患者と私たちとのエンゲージメント、関係性を高める統合的なデジタル戦略である『デジタルフロントドア』の延長線上にあります」と語る。

「デジタルフロントドアは、患者に主導権を持って頂き、自律性を高めることで、自分のケアについて洞察に満ちた会話をすることを可能にし、ストレスを軽減します。透明性とコミュニケーションが向上することで、患者と医療従事者の関係も強化されます」

また、この取り組みは、サウジアラビアの経済多様化と改革のアジェンダである「ビジョン2030」に沿ったものでもある。サウジアラビアは今年、全国的な医療制度の整備を目的とした「医療セクター変革プログラム」を開始した。

このプログラムは、社会全体の人々が健康であることを最優先事項として、保健分野を再構築し、その能力を向上させることを目的としている。

「総合的に、当病院は『ビジョン2030』と共に歩むことを目指しています」アブドゥルハーク氏はこう話す。「私たちは健康の観点から、適切な目的のためにテクノロジーを利用することを考えています。テクノロジーのイノベーションそのものは目的ではありません」

「私たちは、人々に力を与えることを目指しています。このような改善のプロセスがなければ、テクノロジーは単なるツールにすぎません。ヘルスケア業界は銀行や金融業界に比べてテクノロジーの導入が遅れています。しかし、今は飛躍する絶好の機会なのです」

Twitter : @CalineMalek

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