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畳とサッジャード、共通する床文化

畳の端の「縁」を縫う作業中のヤマダ氏
畳の端の「縁」を縫う作業中のヤマダ氏
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14 Jun 2021 08:06:43 GMT9
14 Jun 2021 08:06:43 GMT9

ネイダー・サモウリ

大阪: 何世紀にも及び日本の独自性を表してきた畳は、職人により綿密かつ細やかな配慮によって作られ、日本人の生活に欠くことのできないものである。

畳は、日本の日常生活の中で生じた床文化の発展とともに、日本そのものの多くを形作ってきた。

畳は平均して90 x 180cm、厚みが約5cmの、だいたい人一人がちょうど横になれる大きさのマットで、伝統的には稲わらの芯を天然の編んだイグサ(藺草)で覆う。爽やかな草の香りがし、長い側面は通常へり(縁)と呼ばれる布のようなもので綴じられる。

京都のヤマダ畳店は、父、息子、その妻のヤマダ家が担う、76年続いた畳製造店だ。

「湿度の高い日本の夏の間、畳は空気中の湿気を吸収してくれます。また畳の上を歩くと涼しく感じられます。反対に、冬は畳が空気中に湿気を放出してくれるので乾燥が和らぎます。畳はとても気候に合うのです。クッション性以外に、畳は湿度調整機能とアロマテラピー効果も兼ね備え、人々はその香りでリラックスします。また、(バクテリア)殺菌の効果もあります。これらは全て、畳の原料であるイグサという草の作用です。だから私たち畳職人はとてもイグサを大事にしています。」そう語ってくれたのはヤマダ畳店二代目の息子のヤマダ氏だ。

縁と呼ばれる畳の端を縫うヤマダ氏

ヤマダ氏はまた、北九州大学のモリタヒロシ教授の、イグサの効能に関する研究を説明してくれた。それによると、イグサは勉強する子ども達の集中力を高めてくれるということが、教授の生徒を二つのグループに分けた実験でわかったという。一つ目のグループには畳の部屋で勉強をさせ、もう一つのグループには一般的な部屋で勉強させた。その後、両方のグループに試験を受けさせたところ、畳の部屋で勉強したグループの方が、そうでない部屋で勉強したグループよりも良い成績を示すことがわかった。この結果から、イグサが子どもたちの集中力をより高めたのだろうと結論づけた。

京都にあるたくさんの神社やお寺、お茶室により、畳やその修復は継続的に求められ、床文化の伝統や、畳刺しの伝統が生きて継承されている。

ヤマダ夫人の手作り畳ワークショップの参加者たち(一番右がヤマダ夫人)

「畳はかつては全ての部屋に使われた必需品でしたが、最近ではほとんどの部屋がフローリングのため、畳はより一層生活の中で重要性を増しているように感じます」とヤマダ夫人は語る。

また、「畳職人は毎日重い畳を運ばなければいけないので、体が強くないといけません。だから主人はとてもよく食べるんです」とつけ加えた。

畳は、使用される部屋の寸法に正確に入るように形作られる。約800年前には貴族が畳を使うようになり、その地位によって大きさや厚みが定められ、いくつかの柄やデザインは貴族にのみ使われていた。茶道の発達により、畳はより一般的なものへと変化していった。

父と息子が伝統的な文化を「担って」いるところ。ヤマダさん親子が畳を修復するために部屋を片付けている様子

畳は単なる床文化というだけではなく、茶道では、畳の上でどのように動き、座り、物を置くかというところまで厳しくルールが定められている。

それぞれの畳の境界線が座る場所の基準となり、また小さな畳の縫い目や並びに対し、正確に茶道具を置くことが求められる。例えば、茶釜を温めるための風炉と呼ばれる火鉢台は、もてなす亭主の膝の前16行(指16本分)の、左の端から縫い目7本分、など。客もまた、境界線から16行分離れたところに座るとされる。これらの厳密な配置は、もてなす側にとって最も都合がよく、もてなされる側から見ても美しいとされている。

茶道では、茶道具を畳の上に置く場所が厳密に定められている。亭主は畳の端から16行分空けて座り、その他あらゆるものの置き場も決まっている

畳は確かに日本特有のものかもしれない。しかし床に座るという文化そのものは、アラブ諸国のサッジャード(Sijjad)やアラブ絨毯など、その他いくつかの文化圏でも見られる。イスラム教の主要預言者であるムハンマドが実践し推奨した床文化は、数ある特徴の中でもイスラム世界特有かもしれない。床で座り、食事をし、眠り、最小限の家具以外は置かないことで、謙虚さを示す意味合いがある。

サッジャードやアラブ絨毯といえば、アラジンの空飛ぶ魔法の絨毯が思い起こされるかもしれない。しかし、アラブ絨毯は7世紀まで遡り、一番人気の高い羊毛など様々な素材で作られてきた。

ヤマダ夫人は、「テレビで中東の方々を見たことがあります。彼らは床に座り、食事をし、床のマットの上でお祈りをしていました」と語る。

伝統的なアラブ・スタイルで床に座る様子

日本人には、また別の理由で床文化が根付いている。

ヤマダ夫人いわく、「床文化を大切にしています。部屋の清潔を保つために、家に入る前に靴を脱ぎます。また、生活用の土地が狭いこともあり、寝るときは畳の上に布団やマットレスを敷いて横になります。起きたらそれらをたたみ、押入れに仕舞うことで空間を最大限に活用します。また、床に座って食事をしたり、おしゃべりするなど、その方が、椅子に座るよりも人といて快適にくつろぐことができるのです。」

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