
フランク・ケイン
ドバイ:コロナウイルスの世界中での感染拡大によって経済的リスクが高まり、原油価格の下落が長期にわたるという見通しに投資家がおびえたため、世界中の金融市場が9日、暴落した。
アジアと欧州の大きな市場が全て急落した後、世界最大の金融市場であるウォールストリートでは主要株価が寄り付き直後に7%下落し、数十億ドルの投資金が消えた。ニューヨーク市場は後場の取引でやや回復し、激しく変動した後、ダウ工業株30種平均は8%近く下げて引けた。
中東でも同様の売りが相次ぎ、リヤドのタダウルも7.75%安となった。UAE市場も同様に下落した。地域市場は2日間で約4000億ドルその価値を下げた。
石油歴史家のダニエル・ヤーギン氏は米国のテレビで、「私たちは今、真の混乱期にいます。恐怖があらゆる所に広がっています」と語った。
世界最大の石油会社、サウジアラムコが来月からの原油の大幅な値下げを取引先に提示したことで、エネルギー市場での価格競争が予想され、既にコロナウイルスの感染拡大による経済的低迷におびえていた世界の投資家はパニックに陥った。
原油価格は世界の市場取引で急落した。中東産原油の指標であるブレント原油は30%近く下落し、寄り付き直後に過去30年近くで最大の下落幅となった。後場の取引で大きく値を戻し、17.5%安の1バレル当たり37.27ドルで取引された。
独立系石油会社の株価が急落した。BPは19%、シェルは15%、エクソンモービルは8%下落した。タダウルの、世界最大の石油会社、サウジアラムコ株は終値で5.5%安となった。
価格競争の最大の敗者となる可能性のある米国のシェールに多額の投資をしている石油会社の損害はさらに深刻だった。テキサス州のシェールに巨額の投資をするオクシデンタル・ペトロリアムは、ニューヨーク市場の半日取引で35%下落した。
それにもかかわらず、投資専門家たちは、石油部門の危機的状況が必ずしも金融危機につながるとは限らないと指摘した。
野村アセットマネジメントの代表、タレック・ファドラーラー氏は、「エネルギー市場の不安定性が高まるとの見通しは、コロナウイルスによって作られた悲観論に拍車を掛けますが、原油価格の下落だけでは2009年のような金融危機は起こらないでしょう」とアラブニュースに話した。
リヤドのアルラジ・キャピタルの調査責任者、Mazen Al-Sudairi氏によると、石油部門は、コロナウイルスの感染拡大によって引き起こされた市場の乱高下の「主要な被害者の1人」であり、地域経済には「カスケード効果」が予想されるという。
しかし、同氏は楽観的な見方も示した。「良いサプライズになりえるのは、季節が進んでウイルスの影響がなくなることやOPECプラスの新協定、供給量の減少に伴う原油価格の上昇、中国情勢の急激な緩和です」