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日産のゴーン元会長、名誉回復を目指す

2020年9月29日、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長はCOVID-19のパンデミックの中、防護マスクを着用し、レバノン北部の都市ジュニーエで、危機に瀕した国の支援を目的としたカスリク大学(USEK)との共同イニシアチブ立ち上げの記者会見の後、記者たちに語りかけている。(AFP通信)
2020年9月29日、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長はCOVID-19のパンデミックの中、防護マスクを着用し、レバノン北部の都市ジュニーエで、危機に瀕した国の支援を目的としたカスリク大学(USEK)との共同イニシアチブ立ち上げの記者会見の後、記者たちに語りかけている。(AFP通信)
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22 Oct 2021 05:10:47 GMT9
22 Oct 2021 05:10:47 GMT9

東京:3年前の逮捕でキャリアが止まってしまった自動車業界の元スーパースター、カルロス・ゴーン氏は、静かな引退生活に送るつもりはないようだ。

日産・ルノー連合の元トップは、日本での金融商品取引法違反などの容疑で逮捕され、保釈中の2019年末にレバノンに逃亡した。AP通信の最近のインタビューでは、ゴーン氏は自信と活力に満ち、名誉回復のために戦う決意をしていた。

「私は戦う。気力が続く限り、自分の権利を主張するつもりだ」と67歳のゴーンはベイルートの自宅からZoom(ズーム)で語った。物語は「まだ終わっていない」と彼は言う。

ゴーン氏は、プライベートジェット機の大きな貨物箱に隠れて日本から逃亡した。フランス人であり、ブラジル出身のゴーン氏は、先祖代々の故郷であり、日本と犯罪人引渡し条約を締結していないレバノンに逃亡した。

ゴーン氏は、インターポール(国際刑事警察機構)の赤手配書(国際逮捕手配書)の取下げを要請しようとしているという。赤手配書とは、訴追や刑罰を受けるために指名手配されている人物を捜索し、逮捕するよう各国の警察組織に求めるものだ。彼はレバノン国外への渡航が可能になることを切望しているが、その手続きはお役所的で長いものになりそうだ。

日本の検察当局は、報酬の過少申告や、日産の資金を個人的な利益のために不正に利用した背任の疑いで彼を追及する意向を示しているが、彼はそれを否定している。

日本は米国および韓国と犯罪人引渡し条約を締結している。検察当局は、ゴーン氏が渡航する場合にはブラジルやフランスなど他の国にも協力を求めるとしている。

ゴーン氏は、日本での主な訴訟以外に、フランスでも捜査を受けており、日本では日産自動車から金銭的な損害賠償を求める訴訟を起こされている。東京地検特捜部は、レバノンでの刑事裁判のために、ゴーン氏の捜査資料をレバノンに送ることを拒否している。

日産のフランスのアライアンスパートナーであるルノーは、日産が崩壊の危機にあった1999年にゴーン氏を日本に派遣し、再建の舵取りをさせた。ゴーン氏の下で、日産はルノーよりも多くの収益を上げるようになった。日産とルノーのパートナーシップは、三菱自動車工業や他の自動車メーカーなどのより小規模なライバル企業にも拡大していった。日産はルノーの15%を所有しているが、ルノーによる日産の所有割合は43%と断然大きい。フランス政府はルノーの15%を所有している。

アナリストらは、ゴーン氏の不祥事によって日産・ルノー連合が被った損害を、資本価値、売上高、ブランドイメージの面から数十億ドルと見積もる。日産は、過去2年間は赤字であったが、今年度はなんとか利益を確保できる見込みだ。

ニューヨークを拠点とするCFRAリサーチ社のアナリスト、アーロン・ホー氏は、日産はゴーン氏の不祥事により、競争の激しい業界の中で遅れをとっていると考えている。

「日産が企業力をめぐる内部の問題を解決し、最終消費者のための価値創造に向けた具体的な進歩のために経営資源を再集中させること、これには多くの時間を要し、これまでに多くの時間が無駄になっていますが、それまでは、私たちは楽観視できません」と述べている。

ゴーン氏は、自身に対する訴訟は、日産の役員会議室における権力闘争の中で仕組まれたものだと主張している。ゴーン氏は、ルノーによる買収に近い合併を懸念した日産幹部が、日本の当局にゴーン氏を刑事事件として追及させた「陰謀」を明らかにしたいと語っている。

「私が彼らを修飾できるとすれば、 『日産の中の暴漢』といったところでしょうか」と彼は述べた。

ゴーン氏を糾弾している日産は、ゴーン氏の事件についてコメントしていない。

ゴーン氏と同時に逮捕された日産自動車の元幹部、グレッグ・ケリー氏の裁判では、日産の幹部が検察に働きかけたことが証言されている。

ゴーン氏とケリー氏に対する訴訟の焦点は、日本で高額な役員報酬の開示が法的に義務づけられた2009年以降、ゴーン氏が受けた減給分を退職後に補償するための巧妙な計算である。

検察は、ゴーン氏がその報酬を報告しなかったことで法律違反を犯したと主張しているが、この報酬は支払われたこともなければ、正式に合意されたものでもない。ケリー氏は、自身は無実であり、ゴーン氏を引き留めるために彼に支払う合法的な方法を模索していたと述べている。

皮肉なことに、報告を怠ったとされる金銭は、逮捕された2018年に引退することを前提にしたものであったとゴーン氏は言う。

ゴーン氏は引退したようには見えない。映画製作、経営に関する講義、企業へのコンサルティング、「人物破壊」に関する大学の研究にも協力している。

「見てください、本、本、本です」と、他にどんな仕事をしているのかと聞かれてゴーン氏は答えた。

2020年にフランスで出版された「Le temps de la verite」の英語版である 「Broken Alliances(壊された同盟)」が9月に発売された。彼は、同じく日本で指名手配されている妻のキャロルと共に、自分たちの試練についての本を執筆中である。

人権擁護団体や評論家などは、日本の制度は「人質司法」に等しいと批判している。容疑者は、スパルタ式の狭い独房に独りで閉じ込められたまま、弁護士の立ち会いなしに何日も取り調べを受けている。有罪率は99%以上と、自白の強要についても疑問視されている。

「私が日本のためにできることのひとつは、日本で人質司法制度に反対している人たちと一緒に戦うことです」とゴーン氏は語った。

彼の愛車は今でも日産のSUV「パトロール」である。彼が手がけたもので、中東で人気の車種だ。そして、自分の身に降りかかるトラブルを予測することはできなかったと彼は主張する。

「もし、事件が起こる前に、誰かが私が逮捕されると言ったら、あなたは笑って『冗談はやめてくださいよ』と言うでしょう」と彼は述べた。

AP通信

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