
ドルは木曜、対円を中心に幅広く値上がりした。投資家は米国の金利引き上げに備える一方で、固定されたような状態の日本の金利は、どちらの方向にもすぐに動き出すことはないと予想している。
ドルは、アジア市場の早い取引時間帯に、対円で前日の終値から約0.5%高となる24年ぶりの高値、139.69円を付けた。
「相場を動かしている主な要因は日米の金利差であり、今日の値動きも夜間の米金利上昇に追随したものに過ぎない。今後の展開は、米国金利の動向次第と考えている」と、東京のJPモルガンのストラテジスト、中村颯介氏は語った。
堅調な経済データを背景に、来月の米連邦準備制度理事会(FRB)会合で75ベーシスポイント(bp)の利上げが決定されるとの期待が高まっており、FF金利先物も75%の確率で75bpの利上げを示唆している。
「日銀の動きがないままFF金利のピーク期待が高まる限り、ドル/円は押目買い局面となる。140円台前半であれば、どの水準であってもおかしくないと思う」と、シドニーのウェストパック銀行の通貨ストラテジスト、ショーン・キャロウ氏は話した。
ドルの急騰は他の主要通貨も押さえ込んだ。英国経済に暗雲が立ち込める中、ポンドは約0.4%下落し、2年半ぶりの安値となる1.1570ドルをつけた。ポンドの8月の下げ幅は4.6%となり、月間では2016年10月以来となる急激な下落を記録した。
リスクに敏感な豪ドルやニュージーランドドルも同様に7月以来の安値を付けた。豪ドルは0.6%安の0.6805ドルの終値、ニュージーランドドルは0.60925ドルを底値に、0.3%安となる0.6102ドルの終値だった。
ユーロは0.3%下落したが、猛烈なインフレが欧州の金利上昇期待を煽ったため、1.0024ドルとパリティ($1.0000)の上を堅持している。
水曜に発表されたデータによると、ユーロ圏のインフレ率は8月に9.1%と過去最高を記録し、これを抑制するために欧州中央銀行が大幅な追加利上げを行うシナリオが固まりつつある。
市場は、ガソリン価格の上昇と共に痛みを伴う景気後退のリスクが高まっているにもかかわらず、ECBが来週75bpの利上げに踏み切る可能性が40%程度あると見積もっている。
「高いインフレ率とガス供給は、ユーロ圏と英国にとって依然として主要な問題であり、両国の通貨には下押し圧力がかかり続けると考えている」と、オーストラリア・コモンウェルス銀行の国際経済部長、ジョセフ・カパーソ氏は述べた。
「ユーロはかなり早い時期に、再びパリティを下回るかもしれない」
通貨バスケットに対するドルの価値を評価する米ドル指数は0.14%上昇して109.02となったが、月曜につけた20年来の高値109.48には及ばなかった。
「米ドルはもう少し上げ余地がある。その理由の1つは、連邦準備制度理事会がFF金利をどれだけ引き上げる可能性があるかということに関して、市場は過小評価していると我々は考えているからだ」と、CBAのカプルソ氏は述べた。
これらの状況に応じて、米国債の利回りも上昇した。2年物国債の利回りは2007年後半以来の高水準となる3.516%のピークを記録し、FF金利のピーク予想も4%に近づいている。
ロイター