
香港:致命的なウイルス、水ぼうそう、集団下痢症など、豪華客船の旅は、乗客の老夫婦が思い描いたような一生に1度の夢の休暇とはならない場合がある。
クルーズ船の乗客が集団感染となった例は過去にもあり、休暇というのは何千万ドルものコストがかかり、夢の旅行として売られることから、クルーズが置かれている窮地が厳しい注目を浴びている。
「クルーズ船では、風邪やウイルス性胃腸炎などが広がりやすいのです」とロンドンのクイーン・メアリー大学でウイルス学を教えるジョン・オックスフォード教授は指摘する。
「船は常に混雑していて、多くの乗客がいる中、衛星レベルが下がることもあります。」
米疾病予防管理センター(CDC)は昨年、嘔吐や下痢を引き起こす伝染性の高いノロウイルスがクルーズ船で発生した事案が8件あったと記録している。夢の休暇とは程遠い出来事だ。
麻疹、大腸菌、水ぼうそう、サルモネラ菌中毒もすべて、近年クルーズ船で発生している。
「残念ながら、典型的な定期船に乗っている比較的高齢の人々は、深刻な健康被害を引き起こすものに感染しやすいのです」と話すのは英レディング大学で准教授を務めるサイモン・クラーク博士だ。
新コロナウイルスの脅威に関する世界的な懸念が高まる中、20日にはウイルスの感染が確認されたダイアモンド・プリンセス号の乗客だった高齢の日本人の男女2人が死亡した。
横浜に停泊していたクルーズ船は、発生地の中国国外では間違いなく最大のコロナウイルスの感染クラスターとなった。一部では、何百人もの乗客に対する14日間の検疫について、日本当局の対処方法を非難する声も上がっている。
今のところ、米当局はコロナウイルスに関連した渡航制限や検疫に触れ、旅行者にアジア圏内のクルーズ船利用を「再検討」するよう勧告している。
業界専門家のスチュワート・チロン氏は、イメージされるようなウイルスの温床では全くなく、クルーズ会社は「船の衛生に関して広範にわたる予防措置を取るものだ」と話す。
また、「ウイルスが侵入した場合、クルーズ会社は船を清掃し、ウイルスのさらなる拡大を防止するための様々なプロトコルや手順を実施します」という。
米国在住のチロン氏は、病気の蔓延にぴったりの状況となる、数千人が船上に詰め込まれているイメージは見当違いだと指摘する。
「クルーズ船はほとんどの人が考える以上に大きく、乗客が中で散らばって楽しく健康的な体験ができるスペースは十分にあります」と話す。
チロン氏によると、CDCの数値から、昨年クルーズ旅行をした3,100万人以上のうち、ノロウイルスに感染したのは1,308人、または0.003パーセントだという。
チロン氏や他の専門家は、クルーズ産業は過去の否定的な報道をうまく振り払っており、コロナウイルスが収束すればすぐに回復するとみている。
世界最大の業界組織であるクルーズライン国際協会によると、クルーズ船乗客数は2009年の1,780万人から昨年には3,100万人と、継続的にその人気が高まっているという。
全乗客の約半数が北米出身者で、彼らはアジアの客船での出来事に影響される可能性は低いとアナリストは分析する。
「過去の危機同様、人々が一連の報道を追う中で、新規予約は減速する可能性があります」とチロン氏は言う。
「この時期が終われば、予約数は一気に増え、予約のパターンも通常に戻るでしょう。」
オハイオ州ケント州立大学で疫学を教えるTara C. Smith博士はその見方には納得していない。
「仮に何らかの旅行の形や、幼稚園に通う自分の子供とのステイケーションで病気になったとしましょう。」
「しかしクルーズ船は、乗客が常に部屋を共有することから、そのようなバックグラウンド感染のリスクを誇張して考えるものです。」と指摘する。
スミス氏は、コロナウイルスは「極端な例」であり、ほとんどのクルーズ船乗客は何の問題もなく過ごせると話す。
「それでも個人的にはリスクを避けたいです」と彼女は言う。
「どのような病気がクルーズ船に入り込むかは誰にもわかりませんし、他の全乗客と閉じ込められる場所となるからです。」
「それは楽しそうな休暇には思えません。」
AFP