
コロナウイルス感染症の拡大を阻止するには、感染者の行動履歴やその接触者を特定して、疑いがある人たちを検査・治療できなければならない。
16歳の加藤周さんは、スケートボードやブルーノ・マーズ、ハンバーガーが好きな普通のティーンエージャー。しかし、プログラミングの才能をいかんなく発揮している。接触者の追跡に役立てるために、加藤さんはGPSを利用したiPhone用アプリを開発して、個人が自分の行動履歴をスマートフォンに記録できるようにした。
加藤さんのアプリ足あとトラッカー(Asiato)は、10メートル程度ごとに端末の動きを記録する。アプリの英語版はiPhoneのApp Storeから無料でダウンロードできる。
このアプリの動作は、日記に似ているが記録するのは場所だ。プライバシー保護のため、データは端末に保存され自動で共有されることはない。
端末の所有者が自らCOVID-19陽性であることを確認した場合、足あとトラッカーを使って過去数週間の行動履歴を確認できる。陽性者は、感染させてしまったかもしれない人たちに自ら連絡したり、求められた場合に保健機関に情報を提供したりする必要がある。
日本のパンデミック非常事態宣言では、国民は自宅に留まることを「命令」ではなく「要請」される。行動を記録することは、COVID-19ウイルスの拡大をコントロールするうえで非常に有効だ。世界で経済活動が再開されたら、違った場面で利用できるかもしれないと加藤さんは述べる。
加藤さんは早くからプログラミングの技術を活用している。5年生のとき、割り算で小数点以下の数値の替わりに余りの数を表示する計算アプリを開発した。
6年生のときには、読書感想文を書くプログラムを開発した。この240円のプログラムは、ズルをすることなく作文を書くプロセスを簡単にできると加藤さんは述べる。
2017年、加藤さんはそのDrawCodeを認められて、イノベーションを支援するために設立された、政府の支援を受ける社団法人未踏から「スーパークリエータ」に認定された。DrawCodeは、HTMLと呼ばれるウェブページとプログラムのための言語を書く作業を単純化して、子供たちがプログラミングを行えるようにしたサービス。
未踏の代表者として若いクリエーターを支援する鵜飼佑さんは、加藤さんの情熱と問題を特定してソリューションを見つけるスピードに感心したという。
「パンデミックのときに、周のような若い人が社会に貢献する方法はたくさんあります。テクノロジーを使って解決できる数多くの問題がパンデミックで明らかになるからです」と鵜飼さんは述べる。
加藤さんは今、レストランと客がメニューやその他のテイクアウト情報を共有できるウェブサイトを開設することに取り組んでいる。
東京その他の大都市ではUber Eatsなどのサービスを利用できる。加藤さんが住む北海道や東北地方のような地域では、外出を自粛する人々が料理のテイクアウトや出前のサービスを探すことは難しい。そのようなウェブサイトは、打撃を受けたレストランが客を見つけることにも役に立つ。
加藤さんは、自身が「アナログ」家族と呼ぶ家族のなかのデジタルの達人だ。加藤さんの両親は小さな遊園地を運営していて、兄もそこで働いている。パンデミックによる旅行業界の沈滞はファミリービジネスに大打撃を与えた。
年内にアメリカに留学する加藤さんの計画はパンデミックのために中止になって、今はオンラインで学んでいる。しかしいつかは海外を旅して、自分のベンチャー企業を立ち上げたいと考えている。
プログラミングに惹きつけられるのは、創造の純然たる喜びがあるからだと述べる。
「多少なりともお金になれば幸いです」と言って笑う。
加藤さんは、普通の人間が大企業と競争するのは大変だという。
ニッチな需要を追いかけていると、ニッチ過ぎるものを追いかけて失敗することがあるというのだ。
「プログラミングができるだけでは十分ではありません。諦めないでそれを実際に製品化して、多くの人たちがダウンロードして利用できるよう世界に発表しなければなりません」
AP