
東京:バーチャル・アイドルのパフォーマンスを見るために、完売したハリウッドのコンサート会場を埋め尽くしたファンは、ステージ上のアニメのキャラクターに向かって光る棒を振った。
ピンクの髪のミュージシャンでライブストリーマーの森カリオペは、アニメのキャラクターのように見え、ホログラムのような錯覚でステージ上で命を吹き込まれた。
Netflixのようなプラットフォームは、日本のアニメをメインストリームに押し上げるのに役立っている。カリオペの東京に拠点を置くタレントエージェンシーは、バーチャルYouTuber(VTuber)たちが日本の次の大きな文化的輸出になることを期待している。
「ほとんどのストリーマーはあまり好きではないのですが、VTuberを発見したとき、『そうだ、私はこれに興味があるんだ 』と気づいたんです」とカリオペのコンサート参加者のルイージ・ガルバンさんは語った。
「彼らはアニメのキャラクターのように見えるし、僕はアニメが好きだから、VTuberというフォーマットにハマるのは簡単だった」という。
VTuberは、モーションキャプチャー技術を使ってファンとオンラインで直接コミュニケーションをとる。
VTuberのトップエージェンシーであるCover Corpの有名ブランド「hololive」のバーチャルスターの半数近くは、日本語ではなく主に英語で話しており、同社は最近、北米でのビジネスを加速させるために米国事務所を開設した。
東京を拠点とするQYリサーチは、かつてはニッチだったVTuber市場が、2024年の14億ドルから2030年までに世界で年間40億ドル近くを稼ぐようになると予測している。
先日ロサンゼルスで開催されたコンサートには、約4000人のファンが来場した。
AFPはカリオペに、バーチャルYouTuberが本当にアメリカ市場を開拓できるのかと尋ねた。
「2、3年前は、「いいえ、無理でしょう 」というのが私の確固たるスタンスでした」と、250万人以上のユーチューブ登録者を持つカリオペは語った。
「でも最近は、もう少し希望を持ってます」とカリオペは付け加えた。
自らを「魂を刈り取る」使命を帯びた「死神」と戯れに呼ぶカリオペは、ピンクのロングヘアと対照的な黒いゴシック調の衣装を好む。
「分身は、年齢や外見ではなく、「内面にあるものを観客に見てもらい、評価してもらう」ことで、VTuberのミュージシャンとしての才能や語りとしての才能を輝かせることができる」、と彼女は言う。
カリオペは、同事務所が抱える80人以上のホロライブVTuberの一人で、インドネシアからカナダまで、彼らは世界全体で8000万人のYouTube登録者を抱えている。
日本はVTuberの世界ではトップに君臨しているが、今後数年間は隣国の文化大国韓国との熾烈な競争に直面する可能性があると、Cover CorpのCEO谷郷元昭氏は警告する。
「K-POP歌手の卵たちは厳しいトレーニングを乗り越え、すでにプロとして活躍しています」
「日本でそのような人材を簡単に見つけることができるだろうか?もちろんそうではない」
「なぜならアメリカの観客は洗練されたパフォーマーを好むからだ」
「対照的に日本では、ファンは未熟なアイドルが進化していく過程を大切にすることが多い」、と彼は説明した。
グローバルな拡大には政治的リスクも伴う。ある人気ホライブ配信者は、北京が自国と主張する台湾を国だと不用意にほのめかし、中国の視聴者の怒りを買った。
VTuberはデジタルの世界に生きているが、キャラクターの背後にある人間的な要素は彼らの魅力の重要な部分だと谷郷氏は言う。
「新しいバーチャル・タレントを生み出すためにジェネレーティブAI技術を使うことは、原則的にありません」
「このビジネス全体は、並外れた芸術的才能を持つ誰かを応援したいというファンの願望に基づいています」
「ファンは、自分が何を、誰を応援しているのかわからなくなると思う」
カリオペのファンであるイアン・ゴフさん(23歳)も同意見で、VTuberの背後にいる俳優たちに魅了されており、彼らのアバターはまさに 「サクラ 」だと言う。
「AIでキャラクターを作ることはできても、AIで人を作ることはできない。それがVTuberをVTuberたらしめているからです」とサンディエゴ在住の彼はAFPに語った。
急速に成長し、競争の激しいこの業界では、VTuberたちは自分のファンダムを拡大するために、ほとんどノンストップでライブストリーミングを続けることで、無理をしすぎる危険性がある。
「ライブストリーミングを続ければ続けるほど、より多くのファンが彼らを見るようになる」と、日本の近大の岡本 健教授(メディア論)は言う。
「これは、彼らの仕事に対する情熱を搾取することになりかねない」
しかし、自身もゾンビのようなVTuberとして活躍する岡本教授は、この業界に明るい未来があると見ている。
メタバースのような仮想世界の人気に伴い、「アバターとして生きることが当たり前になる日が来るかもしれない」
「その時、我々の生活はVTuberのスターともっとシームレスに融合するかもしれない」
AFP