東京：オオトリさんは20年にわたる相撲人生中、この日本の伝統的な競技で出世を目指し勝利するために奮闘してきたが、現在は好奇心旺盛な観光客というこれまでとは違った観客を楽しませるために戦っている。

オオトリさんは6名の元力士の一人で、新型コロナウイルスによる2年間の鎖国状態の後、円安の影響でこの数十年来で最も安い価格で旅行ができるようになったため、大挙して戻って来た海外旅行者向けに相撲のデモンストレーションの出張サービスを行っている。

「外国人にも日本人にも、相撲への理解を深めてもらいたい」と四股名の「琴鳳」は「ハープ・不死鳥」を意味するという40歳のオオトリさんは語った。

自身が15歳で始めたプロ生活について、「兄弟子たちはいつもかなり乱暴だった」とオオトリさんは言う。「もちろん、みんなと交流できる今の方が楽しいです」

日本がビザ免除措置を再開した1カ月後の2022年11月、東京都心に「横綱とんかつどすこい田中」が誕生した。吹き抜けの天井の下には相撲の土俵と14台のテーブルがある。観客はテーブルで食事後、見学料11,000円（約76ドル）で、取組の観戦や元力士への挑戦ができる。

もう一人の元力士、田中康弘さんは、元力士にCMや映画の俳優としてのセカンドキャリアを提供する会社を設立後、この飲食店を始めた。もっと力士を集めて夜の公演をやりたいと語る。

つい先日の午後、オオトリさんは、外国人観客向けに英語で案内する司会者から「ジャンボ」と呼ばれていた大柄な相手、鳥羽の山と、コミカルかつリアルな練習試合を行った。

メキシコのモンテレイに住む品質管理マネジャーのホセ・アギラールさんは、家族とともに最前列の席に座っていた。娘の15歳の誕生日イベントである「キンセアニェーラ」のため、新型コロナウイルスで先延ばしになっていた休暇に来たが、滞在中「日本を象徴するもの」を見たかったと語った。

観客たちが使い古された相撲のコスチュームを身にまとい、「ジャンボ」と土俵で対戦する。アギラールさんはその一番乗りを果たした。

「最初は、『ああ、なぜ自分が最初の一人になることを選んだのだろう。他の人の参加を待てばよかった』と思いました」と、46歳のアギラールさんは、応戦する「ジャンボ」を土俵の外に押し出した後、語った。「でも、いや、本当にすごく素晴らしかったです」

テーマ・レストランは、岸田文雄首相が年間5兆円の経済効果を期待している観光エコシステムの一環である。大相撲を題材にしたNetflixのドラマ『サンクチュアリ ‐聖域‐』が5月にヒットしたことで、大相撲人気が復活しつつある。

昼食のパフォーマンスは笑いに満ちているが、オオトリさんと「ジャンボ」の体に見られる手術跡は、10代の若者が登用され、30代で多くの力士が引退するあとには再就職先が限られている大相撲の肉体的負担を物語っている。

「現役力士の頃、私たちは遊び回ることはまったくできませんでした」と自身が特に強い力士ではなかったことを認めた田中さん（47歳）は語った。「だから今こそ、みんなに給料を稼いでもらい、幸せで楽しい人生を送ってもらいたいと思っています」

ロイター