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東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗委員長の性差別発言が国内外で批判の波を巻き起こしているが、日本政府やスポーツ界の関係者は森委員長の辞任を求める声に加勢することには及び腰である。
オリンピックの開催はコロナウイルスのパンデミックによって昨年延期され、今また開催が危ぶまれている状況にあるため、利害関係者はここまでオリンピックの東京開催誘致に貢献し、今でも開催の動向に大きな影響力を持つとされる元首相を支持し、静かに見守っている。
83歳の森元首相は、水曜日に行われた日本オリンピック委員会の集まりで、女性は「ライバル意識が強く」、お互いにけん制して、会議でも話しすぎる傾向があると発言したことで、性差別騒動に火をつけた。
日本の菅義偉首相は国会で、森元首相の発言は「男女共同参画というオリンピックの重要な理念から完全に逸脱している」と述べたが、辞任を求める声には直接言及しなかった。
萩生田光一文科相は、「不適切な発言」としながらも、政財界やスポーツ界に強い影響力を持つ森元首相の辞任を求める意図はないと述べた。
他の関係者からも森元首相の発言に対し、批判の声が上がっているが、組織階層のトップが変わることによる影響を懸念して、辞任を呼びかけることに対しては一線を引いている。
森元首相は2014年1月の組織委員会発足時に、当時の安倍晋三首相から委員長に任命されている。政府が特に森元首相に求めたものは、元首相としての圧倒的な影響力と調整能力だった。
森元首相は委員長として、パンデミックによる開催の1年延期に加え、猛暑対策として、マラソンコースを東京から札幌に移したことなど、大会準備の大きな障害を克服するのに貢献し、これまでは任命が功を奏してきた。
また、ある政府筋によると、彼は国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長と「対等な関係」を築いてきたという。
3月から始まる聖火リレー、観客や外国人ファンの参加有無の決定など、オリンピック開催の重要な時期を控えているため、関係者は「(森元首相の)発言は容認できない」としながらも、今から森委員長の代わりを務められる人物を探すことができるかには疑問を呈した。
政府筋は、「森委員長が辞任したらオリンピックは開催されない。どんな犠牲を払ってでも彼に継続してもらうしかない」と語っている。
小池百合子東京都知事は、大会準備中に費用負担問題で森元首相と衝突したこともあるが、現在は一線を画している。一方、山下泰弘JOC会長は、森元首相の発言について、「様々な意見があることは理解している」としながらも、辞任の必要はないことを明らかにした上で、森委員長には「責任を果たしてもらいたい」と述べた。
元大学ラグビー選手である森元首相は、日本スポーツ協会や日本ラグビーフットボール協会の会長を歴任し、2019年のラグビーワールドカップの開催権獲得にも貢献している。
スポーツ界における森元首相の影響力は、日本では事実上比類のないものであり、JSAやJOCの上級幹部でさえ、重要な決定に先立って彼の意見を求めている。
1984年のロサンゼルスオリンピック、柔道無差別級金メダリストの山下氏は、竹田恆和氏の後を継いで2019年にJOC会長に就任している。そのJOCの山下会長でさえ、森元首相の影響下にあり、関係者は、「スポーツ界で生きている者全員が森元首相を頂点とするピラミッドの世界の中にいる」と語っている。
森元首相は、山下氏を支援するために参加していたJOCのオンライン理事会で物議を醸したコメントをしたわけだが、森元首相は山下氏を通して自らの存在感を維持していると情報筋は述べている。
森元首相は40分間のスピーチの中で、山下氏について「彼は素晴らしいリーダーシップを発揮している」と語った。