
東京:東京の青海アーバンスポーツパークでヌノ・ドゥアルテが拍手をすると、その音が空っぽのスタジアムに響き渡る。このスタジアムには、オリンピックのスポーツクライミングや3×3バスケットボールの選手を迎える予定だが、観客は入らない。
「アスリートにとっては、とても奇妙です。こんなことには慣れていませんから」と、ウイルスで延期された大会のために、没入型のサウンドスケープを制作したオリンピック放送機構のシニア・オーディオ・マネージャーのドゥアルテ氏が語った。
東京のオリンピック会場のスタンドは空席となる予定だが、種目ごとにカスタマイズされたアンビエント・クラウド・サウンドは、競技場を雰囲気のない箱物のように感じてしまわないようにするためのものだ。
サウンドトラックを制作するために、ドゥアルテ氏と彼のチームは、2016年のリオ大会と2012年のロンドン大会の音声を徹底的に調べ、純粋な観客のノイズや拍手の音が入った瞬間を抽出した。
彼らは、テレビ視聴者が動きに没入でき、アスリートの注意を逸らさず、且つ励ませるよう、3ヶ月かけて入念にこれらのクリップをつなぎ合わせ、微調整した。
「スポーツには独自のダイナミクスがあります。中にはとても力強く、活気に満ちたものもありますが、アスリートは集中する必要があるので、静寂を必要とするものもあります」と、ドゥアルテ氏は述べた。
野球、スポーツクライミング、空手など、リオ大会やロンドン大会では行われなかったスポーツに関しては、チームはアーカイブから似たような雰囲気を選んだ。
「空手は、観客の反応が柔道にとても似ています」と、オリンピック放送機構のオーディオ・マネージャーのドゥアルテ氏が説明した。同機構は、世界中のテレビ顧客に向けて何千時間もの大会競技を撮影し、配信している。
観客の音声は、世界トップレベルの競技選手から主役の座を奪うのを避けるため、「ざわめきのような非常に小さな音」で再生される。
視聴者にとっては、「スポーツそのものが最も重要な」要素だと、ドゥアルテ氏は述べた。
また、静かな会場は、自宅で観戦している人にも独特の体験をもたらすことになる。
「今まで聞いたことのない、スポーツの細かい部分まで耳にすることになるでしょう」と、同氏は付け加えた。
今回は初めて、大会映像が4K、つまり、いわゆる「没入型」音声付きの超高精細フォーマットで、国際ネットワークに配信される予定だ。
これは「3次元音声」だと、ドゥアルテ氏は、機雷、もしくはコロナウイルスの分子に似たマイクを見せながら語った。
AFP通信