
ジュネーブ:感染が急拡大する新型コロナウイルス・オミクロン株の米国での最初の感染例が報告されるなか、12月1日にWHOはワクチン接種に無関心でいることの危険について厳しい警告を発し、欧州連合はワクチン接種の義務化を検討している。
1週間前に最初に南アフリカが世界保健機関に報告したこの新変異株はすぐに各大陸に姿を現し、経済見通しを悪化させて、北半球にまたも厳しい冬を到来させるのではないかという懸念が深まっている。
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長は、「世界的には、ワクチン接種率が低く、検査も非常に少ないという有害な組み合わせが認められる。この組み合わせは変異株を繁殖、増幅させる原因になっている」と述べ、デルタ株が「ほぼ全症例を占めている」ことを世界に向けて注意喚起した。
「デルタ株の感染拡大を防いで命を救うためには、既に存在しているツールを使用する必要がある。そうすれば、オミクロン株の感染拡大を防いで命を救うこともできる」とテドロス氏は述べた。
WHOによると、オミクロン株の感染性が高いかどうかや病態がより重篤になるかどうか、また現在の治療法やワクチンがこの変異株にどの程度有効であるかを把握するのに数週間かかる可能性がある。
とはいえ、この新変異株の発見や感染拡大は、既にほぼ2年に及ぶ世界的な新型コロナウイルスとの戦いの終焉がはるか先になることを浮き彫りにした。
ブリュッセルでは、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が、EU域内で「ワクチン接種の義務化を奨励したり、ことによっては検討したりする」方法を協議することは「適切であり、理解できる」と述べた。ただし、ワクチン接種を義務化できるのは個々の加盟国のみである。
既にオーストリアは来年2月に新型コロナウイルスのワクチン接種を義務化すると発表しており、ドイツも似たような手法を検討している。ギリシャは11月30日に、60代以上の国民にワクチン接種を義務付けることを発表している。
公式には世界で最も大きな被害を受けている国である米国は、初めてオミクロン株感染者を発見したことを発表している。ワクチン接種が完了済みの南アフリカからの渡航者で、症状は軽く既に回復しつつある。
米国の感染症専門家の第一人者であるアンソニー・ファウチ氏は、ワクチン接種が完了している成人は、できるかぎりの保護を受けるために、接種資格が付与されたらブースター接種を希望すべきであると強調した。
「デルタ株などの変異株に関する経験からいえることとして、デルタ株にターゲットを絞ったワクチンでなくても、十分に高いレベルの免疫応答が起これば、間接的な保護が得られる」
サウジアラビアとアラブ首長国連邦でも最初のオミクロン症例が報告され、アラビア湾は同株が浸透した最新の地域となった。
一方、欧州疾病予防管理センターは、重篤な新型コロナウイルス感染症のリスクがある5歳から11歳までの児童は、ワクチン接種の「優先グループ」とみなされるべきであると勧告している。
経済協力開発機構は、オミクロン株が世界経済の回復を脅かすと警告し、2021年の成長率見通しを5.7パーセントから5.6パーセントに引き下げた。
パリのOECD本部は、経済の回復は「勢いを失って、ますます不均衡になりつつ」あり、ワクチンが世界中に行き渡るまで「不安定」なままだろうと発表している。
オミクロン株の出現により、世界中の政府が主にアフリカ南部を対象とする渡航規制に向けて動き出した。日本は、日本に向かう航空便の新規予約を停止した。
12月1日、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、こうした禁止措置に対する批判が高まっているのに同調して、「たいへん不公平で懲罰的」であり、「効果もない」と述べた。
感染率の上昇に伴って、一部の欧州諸国では既に政府がマスク着用やソーシャルディスタンス措置、夜間外出禁止令、ロックダウンを再導入して、必死に入院者数を抑制しようとしている。他方、企業は今年のクリスマスも暗澹たるものになることを恐れている。
欧州でワクチン接種率が最も高いポルトガルでは、屋内でのマスク着用が再び義務付けられ、今年末までに人口のほぼ5分の1に3回目となる新型コロナウイルスのワクチン接種を行うことを目指している。
イタリアでは、それまでは40歳以上に限られていたが、1日から全成人が新型コロナウイルスワクチンのブースター接種を受けられるようになった。
デンマークでは、最近新たな規制が導入されたにもかかわらず、1日に、過去24時間以内の新型コロナウイルス感染者数が5,120人と記録的な数値になった。
各国政府が一方的に渡航規制を実施している最中でも、WHO加盟国はジュネーブで次のパンデミックへの対応に関する国際協定に取り組んでいる。
将来のパンデミックへの対応について合意に達するための政府間交渉機関を設立して、2022年3月1日までに初会合を開くことが予定されている。
欧州では新型コロナウイルスから解放されたつかの間の夏が終わろうとしている可能性があるが、南半球では、太平洋の国であるフィジーが615日間に及ぶ国際的な孤立を1日に終え、観光客の受け入れを再開した。
草のスカートをはいた伝統的な踊り手が、シドニーからやってきた行楽客を歓迎した。手を振っている行楽客は、今後数週間に予想される、切に求められている大勢の観光客の最初の一団である。
AFP