
韓国の尹徳敏駐日大使は27日、東京都内で開かれた内外情勢調査会の会合で講演し、来年にも日韓両国首脳による新たな共同宣言の発表を目指す考えを示した。尹氏は「互いに政治的に安定する来年や、(日本の植民地支配からの)解放80年になる再来年」に「国賓訪問などの機会を借りて、新たな未来に向けての宣言が必要ではないか」と述べた。
日韓関係を巡っては、1998年に当時の小渕恵三首相と韓国の金大中大統領が、戦後日本の歩みを評価し、過去の植民地支配に対する「反省とおわび」「未来志向」を明記した共同宣言を発表。尹錫悦大統領は宣言の取りまとめを決断した金氏を尊敬しているとされる。
尹大使は新たな宣言について、フランスとドイツの和解・友好の礎となった63年のエリゼ条約(仏独協力条約)に触れ、「それに準ずるような、未来志向で互いの国民に恵みが与えられるようなことを盛り込む必要がある」と語った。
また、「(日韓は)価値観、戦略的利益を共有し、(1人当たり)国民所得も似ている」と強調。多数の両国民が気軽に相互往来している現状を踏まえ「パスポート、ビザと言う必要があるのか」と訴え、将来の課題として「ボーダーレスな関係」をつくり経済統合を図るべきだと主張した。
北朝鮮の動向に関しては「来年の米大統領選に向け、核実験を行って緊張を高めるだろう」と指摘。北朝鮮はインドやパキスタンのような事実上の核保有国の立場を目指しており、米国と交渉して、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄と引き換えに日韓を標的にした戦術核の保有を認めさせようと画策すると予測した。
その上で、トランプ前米大統領が選挙で返り咲けばそうした取引に応じる可能性があり、「悪夢のようなシナリオだ」と懸念を示した。
時事通信