
延期された東京パラリンピックの開幕まで、24日であと1年となる。新型コロナウイルスの収束が見通せない中、準備をどう進めるか。パラアスリートだけでなく、関係者も暗中模索を続けている。日本障がい者スポーツ協会理事で医学委員長の陶山哲夫さんと、強化部長の井田朋宏さんに語ってもらった。
井田 ボッチャのように(呼吸器系などの)基礎疾患を抱える選手がいる競技団体は非常に慎重にせざるを得ない。当面は合宿などを控え、選手が個人練習するところに指導者が行って確認するなどしている。
陶山 五輪選手よりも平均年齢が高く、生活習慣病などを抱えている人もいる。そうした選手がさまざまな競技に何人かいるので注意が必要だ。
―本番への対策は。
陶山 例えば、片手がない人が手を洗うときにどうするか、など障害に応じた予防策が問題になる。プレ
ーの前と後、試合中と、場面ごとの対策も不可欠。感染を予防するために、少しずつでもさまざまな対策をしていくことが大事だろう。
井田 選手が障害の種類、程度、競技特性を踏まえて自衛することが基本。本番では(選手村に)入れる人が限られるので、視覚障害の場合は介助者も感染防止の知識が必要。支える人が選手とソーシャルディスタンス(他者との距離)を保つことは不可能。日常生活レベルでペアに合ったやり方を見つけて備えることだ。
―コロナで諸外国と連携は。
陶山 カナダ、英国、オーストラリア、日本の4カ国で医療連携会議があったが、ウイルスの流行や、競技ごとの練習再開の状況を共有する程度だった。つまり、まだ各国が悩んでいる状態。世界中でスポーツを少しやり始めたところだが、どういうステップを踏むかはこれからだろう。
―ウィズコロナ時代の東京パラの役目は。
陶山 日本や海外の情勢によるが、なるべく安全にやるしかない。暑熱対策も大切。万全の支援態勢を取りたい。
井田 国際パラリンピック委員会(IPC)のビジョンはパラスポーツを通して「障害があるからできない」と決めつけるのではなく「みんなできるんだ」という共生社会を築くこと。その意味で日本、世界中がコロナという困難に直面しても目を背けずに向き合い、創意工夫して乗り越えていこうというのは、パラリンピック精神と重なる。大変だが、前を向いて頑張っていこうというメッセージを届けたい。
JIJI Press