
アフガニスタンからの国外退避をめぐり、政府は現地時間27日、出国を希望した日本人1人を航空自衛隊の輸送機で隣国パキスタンの首都イスラマバードへ移した。これに先立ち、26日にはアフガン人十数人も退避させていたことが28日、分かった。政府関係者が明らかにした。退避支援のためアフガン入りした自衛隊員らも離れた。当面は救出任務を継続する方針だが、見通しは立っていない。
政府は28日以降、輸送機部隊などを拠点とするイスラマバードの空港に待機させ、支援態勢を維持する。現地にとどまる日本人の意向や治安情勢を踏まえつつ、出動のタイミングを探る。
待機をいつまで続けるかについて、政府の担当者は「予断を持って答えることは控える」としている。
当初は在留邦人に加えて、退避を希望する日本大使館や国際協力機構(JICA)のアフガン人スタッフら数百人も国外退避させる方針だった。23、24両日に空自のC2輸送機とC130輸送機計3機を派遣した。
だが、現地の混乱から希望者が首都カブールの空港にたどり着けないなど救出に向けた作業は難航。26日には空港周辺で爆弾テロが発生し、多数の死者が出た。
これを受け、菅義偉首相は27日、秋葉剛男国家安全保障局長や外務、防衛両省幹部らを首相官邸に呼び、対応を協議。加藤勝信官房長官は記者会見で「情勢は流動的だ」と語った。
一方、バイデン米大統領は今月末までに駐留米軍を撤収させる方針を堅持。政府関係者によると、空港を管理する米軍は、自衛隊機が空港を使用できるのは27日までとする意向を伝えていた。
◇見通し甘さに批判
このため、日本側は同日の運航を当面の「ラストチャンス」とし、可能な限り乗せる考えだったものの、爆弾テロの影響により邦人の1人にとどまった。共同通信によると、邦人は女性で同社通信員の安井浩美さん(57)。
政府関係者は「爆発で全てが狂った」と指摘。しかし、韓国やドイツなどアフガン人協力者を退避させた例があることから、見通しの甘さや初動の遅れも要因の一つとして批判する声が与党内に出ている。
時事通信