
農林水産省は、月や火星探査に伴う宇宙での長期滞在に備え、過酷な宇宙環境でも安定的に食料を生産・供給できる体制の構築を目指す。研究開発に取り組む大学や企業などの共同事業体に対し、2021年度に3億1000万円を支援。宇宙で生まれた技術を転用し、食料不足など地球が抱える課題の解決につなげる狙いもある。
内閣府が主導する「宇宙開発利用加速化戦略プログラム」の一環。六つの共同事業体が既に申請済みで、6日の審査会を経て支援する事業体を決定する。
宇宙事業の市場規模は、18年の約40兆円から、40年には100兆円規模に拡大するとみられる。宇宙探査が進めば年単位で生活する可能性もあり、食料の現地調達が必要と判断。世界的に宇宙技術開発が加速する中、日本は事業化を目指すことで食料分野の主導権を握りたい考えだ。
今回のプロジェクトでは、滞在する4人以上が必要とするほぼ全ての栄養素を持続的に確保できることが課題。限られた場所で効率よく食料を生産する必要があり、農水省は生産能力を最大限に発揮できる栽培技術や高度な資源循環型の供給システムの開発を求める。
宇宙で長期間生活するため、食を通じて生活の質を維持、向上できるような仕組みの構築も重要だ。同省は「研究で終わるのではなく、SDGs(持続可能な開発目標)の達成など地球規模の課題に応用できる効果を期待する」(担当者)としている。
時事通信