政府は、対話型人工知能(AI)「チャットGPT」を行政分野で活用することを検討する。国会答弁作成など事務作業が効率化され、国家公務員の業務負担軽減を期待できるのが理由だ。今月末の先進7カ国(G7)デジタル・技術相会合の議長国として、AI技術への対応で議論を主導する構えだが、欧米各国でプライバシー保護を含め情報の取り扱いを巡って規制の動きが強まるなど懸念は少なくない。
チャットGPTの行政での利用について、西村康稔経済産業相は11日の記者会見で「国家公務員の業務負担を軽減するための活用の可能性をぜひ追求したい」と言及。活用例として国会答弁の作成を挙げた。
河野太郎デジタル相は7日の記者会見で、チャットGPTに読み込んだデータの取り扱いや、事実と異なる文章が作成されるといった課題があると指摘。懸念が解消されれば活用を考えていく意向を示した。
一方、チャットGPTを巡っては、G7メンバーのイタリアが個人情報保護の観点で利用を一時的に禁止するなど、欧米を中心に逆風が強まっている。開発元の米新興企業オープンAIは、安全対策を公表するなど懸念の解消に躍起となっている。
松本剛明総務相は、文章や画像を自動作成する「生成系AI」の利用増加を念頭に、群馬県高崎市で開かれるG7デジタル・技術相会合でAIを議題とする方針を示した。AIの普及に向けた国際的なルール作りで議論をけん引する考えだ。
国立情報学研究所の佐藤一郎教授は対話型AIについて、「国会答弁の文章を作る手間を省くなどメリットもあるが、作成の際に読み込んだ行政情報が外部に出てしまうリスクもある」とし、「G7では悪用対策などを各国と議論してほしい」と求めた。
時事通信