Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

イスラエルの空襲に立ち向かい、レバノンで取り残されたペットに餌をやるボランティア

2024年2月29日、レバノン南部の村カフラで、イスラエル軍による砲撃が一晩中続いた後、被害状況を確認する住民と救助隊員。(AFP/File)
2024年2月29日、レバノン南部の村カフラで、イスラエル軍による砲撃が一晩中続いた後、被害状況を確認する住民と救助隊員。(AFP/File)
Short Url:
01 Mar 2024 05:03:39 GMT9
01 Mar 2024 05:03:39 GMT9
  • スールの住民は、人が消えた町での痛ましい光景について語る

ナジャ・フーサリ

ベイルート:レバノン南部のボランティアたちは、イスラエルの空爆に立ち向かい、紛争の犠牲となった犬や猫や鳥などの動物たちに餌をやり、世話をしている。

ビントジュベイル出身で現在はティールに住むリンダ・ルクさんは、ヒズボラとイスラエルの軍事衝突が激化する中、ソーシャルメディアを通じて集まって動物たちを支えるボランティアの一人だ。そうした人たちの数は今増えつつある。

軍事衝突がヒズボラのメンバーやレバノンの民間人の命を奪い続け、その中には罪のない子供や女性たちも含まれている。そんな中で、ボランティアの人たちの取り組みは、忘れられた紛争の犠牲者である動物たちにライフラインを提供することだ。

ヒズボラとイスラエル軍の軍事衝突が起きる中、レバノン南部の国境地帯に住む何千人もの人たちが、ここ数ヶ月の間に住居や村を放棄して逃げることとなった。

そうした痛ましい決断を下す中で、多くの家族は、避難が短期間で終わることを願って、大切なペットを家に残していくことを選んだ。

軍事作戦が激化して激しい空爆がこの地域を襲う中、村は荒涼としたゴーストタウンと化し、動物たちは見捨てられ、飢餓や爆撃にさらされやすい状況に置かれている。

ルクさんは、故郷のビントジュベイルを訪れた際に遭遇した痛ましい光景について語った。

やせ細った野良猫や野良犬が必死に通りを歩き回り、飢えのために肋骨が浮き出ていて、苦しんでいることが手に取るようにわかった。

その光景を見て非常に心を痛めたルクさんは、同情の念に駆られ、兄とともに救済活動に乗り出した。

二人は、友人が所有するマアルーブの食肉処理場から余った鶏肉を確保することができた。その後、飢えた動物たちに食料を配るために故郷に向かった。

「こうした動物たちは野良の動物ではありません。家庭でペットとして飼われることが多く、見た目もかわいい品種の動物たちなのです。動物たちは今自力で生きていくしかなくなって、人間が見捨てた町で食べ物を探しているのです」とルクさんは語る。

彼女はこう続ける。「痛ましい光景です。こういう町を歩き回っていると、飢えた動物たちの姿を目の当たりにすることになり、その痛ましい印象が一晩中私の心に残って離れないんです」

「紛争のさなかでは、動物たちは痛ましいほど顧みられることがありません。砲撃を受けている村に残っている住民たちは、こうした動物たちに食べ物を与えないことが多いんです」

「私は何度も人の姿がまったくない村を通りました。そうした村ではイスラエルの戦闘機だけが上空で停止してそのエリアを監視していました」

レバノン南部シャクラ出身のカッセム・ハイダルさん(28歳)は、砲撃が繰り返される事態に直面しながらも、シャクラに今も家族と住んでいる。

「私には自分の仕事がありますが、動物たちには同情しています」とハイダルさんは語り、こう続ける。「ベイトレイフで犬が猫を食べているのを見てショックを受け、この村で動物たちに餌をやるようになりました。とても恐ろしかったですね。耐えられませんでした」

「私はソーシャルメディアに頼って、残った食べ物がある人に取っておいてくれるよう頼み、食べ物を集めて捨てられた動物たちに与えることにしたのです」

「お腹を空かせた動物たちの写真を撮ってネットにアップしました。たくさんの人が同情してくれて、寄付を受けるようになりました。袋入りのドライタイプのペットフードから、村々を移動するためのガソリン代まで寄付してくれました」

「動物保護団体にも連絡を取りました。毎日3時間を割いて村々を回り、インスタグラムにストーリーを投稿しました」

「アイタアルシャーブからカファルキラまで、国境地帯の村をすべて訪れました。砲撃のせいで数分しか滞在できなかった村もありましたが、他の村では1時間以上滞在しました」

ハイダルさんは言う。「道端に食べ物を置いていくことが多かったですね。時々、まだ家に残っている民間人に出会ったら、その人が動物に餌を与えられるように、食べ物の入った袋をその人の家に置いていくこともありました」

「また、地域の医療従事者と協力して動物に餌を配ることもあります。私は町を訪問するスケジュールを立てて、いつ戻ればいいのか、いつ町を訪れて動物たちの食べ物を置いていけばいいのかを把握するようにしています」

「手遅れになって、動物たちが餓死したり、他の動物を食べたりしてほしくないんです。砲弾の爆発音で心停止して死んだ犬や猫を見たことがあるんです。そうした動物たちの脈はとても速かったです。すさまじい恐怖を味わったんですね」

「動物たちはいつ砲弾が投下されるかを察知し、その前に散り散りになって逃げ出すんです。私は動物たちの本能に従って行動した結果、一度ならず爆撃から生き延びました。私がいた多くの町で、私がその場を離れた5分後にイスラエル軍が爆撃を行うということがあったんです」

「爆撃を受ける町では、道路に私一人しかいないこともよくありました。母はいつも私のことを心配しています。でも、私は動物たちの命を見捨てることはできないと心に決めているんです」と彼は続けた。

ハイダルさんの活動は犬や猫や鳥に餌を与えるだけにとどまらない。病気になったり怪我をしたりした動物を地元の獣医に連れて行くこともある。

ティールの「Strays Welfare Association(迷子動物愛護協会)」の創設者であるフィラス・ファラジさんは、置き去りにされたペットの多くは飼い主の帰りを待っているのだと語った。

ファラジさんはこう続ける。「私たちは捨てられた動物の正確な数を把握していませんが、ケースバイケースで問題に対処しています」

「置き去りにされた動物の問題は共感を得るようになっていますが、今なお供給よりもニーズの方が大きいのです。国連レバノン暫定隊は以前、部隊の指揮官が動物好きだったことから私たちを気づかってくれて、野戦病院を利用できるようにしてくれました」

「しかし、南部地域での戦闘が始まったことに伴って援助はすべて停止となり、私たちは個人の取り組みに頼る状況になっているんです」

特に人気
オススメ

return to top