
ミスラタ: リビアにいるスーダン難民の女性、アサワル・ムスタファさんは、整備士は男性の役割と考えられているリビア西部のガレージの女性専用区画で、レンチを手にオイルフィルターを点検している。
家族とともにスーダンの戦争から逃れ、薬学を学ぶ最後の年を諦めた22歳の彼女は、最近まで生き残ることが最大の関心事だった。
4人の姉妹、母親、そして同じガレージの男性用セクションで働く兄と一緒にリビアに来たアサワルさんは、「最初は、ちょっと辛い経験でした」と言う。
彼女は、「ミスをしてお客さんの車を傷つけてしまうこと 」が怖かったという。しかし、技術を磨くうちに、女性差別に直面してもメカニックに「熱中」するようになった。
人々はアサワルさんに「あなたの居場所は家にある」「台所にある」「これはあなたのための仕事ではない」と言った。
しかし、この若い女性は「それを障害にはしたくない…」と決意していた。「それどころか、私の境遇を知らずにそんなことを言う人がいることが私には可笑しかった。」
「私にはひとつの目標があった」
白いスカーフを巻き、黒いブラウスを着たアサワルさんは毎日、トリポリの東約200キロにある大きな港町、ミスラタから何人もの女性ドライバーを迎えている。
「整備士を含め、あらゆる分野に女性が進出しているのを見るのは素晴らしいことです」と顧客のファウジア・マニタさんは言う。
「リビアではますます多くの女性が車を運転するようになり、男性相手なら威圧感を感じるでしょうが、女性相手の場所では安心感があります」と39歳の彼女は言う。
リビアは、長年の独裁者ムアンマル・カダフィを打倒した2011年のNATO支援による蜂起後、長年の戦争と混乱からの回復に苦闘している。
最南端のランペドゥーザ島から約300キロ離れたイタリアに近いことから、リビアは、主にサハラ以南のアフリカからの移民、難民、亡命希望者にとって、危険な地中海の旅を冒してヨーロッパを目指す重要な出発点でもある。
先月、当局は北アフリカの国にいる外国人の5人に4人が不法滞在者であると発表した。
アブドゥルファッターフ・アル・ブルハン率いるスーダン軍と、彼の元副官モハメド・ハムダン・ダガロ率いる即応支援部隊(RSF)との間で2023年4月に勃発した戦争の中、ムスタファ一家は昨年10月にスーダンを離れた。
国連によれば、この紛争で何万人もの死者が出ている。1,070万人以上のスーダン人が国内避難民となり、230万人が近隣諸国に逃れている。
砂漠を10日間かけて移動した後、アサワルさんはクフラに到着した。クフラはオアシスのような場所で、国連によれば4万人以上のスーダン難民が6万人の地元民とともに暮らしているという。
この町は、モスタファさんがようやく仕事を見つけたミスラタから約1200キロ(745マイル)離れている。
「あの日々は、今まで生きてきた中で最悪の日々でした」と彼女はAFPに語った。
北東部のベンガジ、西部の首都トリポリ、そしてミスラタへと旅した経験について、彼女は話したがらなかった。
修理工場では、19歳の弟サハビさんの励ましが生命線だった。
サハビさんは、「助けが必要なときは私がいる」「安心して」と言った。
32歳の店主アブデルサラム・シャギブさんもまた、唯一の女性従業員であるアサワルさんを支えてきた。
彼は、女性客に提供するサービスは多様化し、より多くの女性が行うべきだと語った。この職業は男性だけのものであってはならない。
「女性はこの分野で働きたいと思うかもしれません」と彼は言った。
世界銀行によると、リビアの労働力人口に占める女性の割合は2022年に37%に達した。
リビアには他にも女性ドライバーのためのコーナーを設けているガレージがあるが、女性によるサービスを提供しているのはシャギブ氏の店が初めてだという。
「今日、ここに来る女性たちは女性と接することに喜びを感じ、より快適に過ごしています」とアサワルさんは言う。
「女性が決心する」限り、どんな仕事も「男性の専売特許ではない」と彼女は言う。
「望みがあるのなら、ためらうべきではありません」
AFP