

レイド・オマリ
アンマン: ヨルダンの女性の地位は改善しているが、人権活動家によればジェンダーにもとづく暴力に対応し、社会や労働市場における女性の参加を増加させるには依然としてさらなる取り組みが必要であるという。
国際女性デーの際のアラブニュースへの発言で、女性の権利活動家は、ヨルダンは過去20年間に渡って女性に対する差別との戦いで法律の見直しやヨルダンの女性を職場から排除している「社会的タブー」に取り組むことで「注目に値する」進歩を遂げたと主張した。
こうした変化は社会の変化の結果であると活動家は説明し、ジェンダーの平等や女性のエンパワーメントに向けて制度レベルでのさらなる努力の必要性を強調した。
著名な女性の権利活動家ラナ・フセイン(Rana Husseini)氏は次のように語る。「女性の権利運動の成果に関して、最も重要な実績の一つは、意志決定に関わる職種に女性が登用されるようになったことだと言えるでしょう。たとえば大臣、検察官、大使、裁判官などです。今では、いたるところに女性の姿を見ることができます。これは女性がリーダーシップを発揮する立場になることを受け入れ、求めて行こうという方向へと社会がよりオープンになってきたことのサインです」
ヨルダンの社会構造の変化や女性の権利向上にもかかわらず、受賞歴のあるそのジャーナリストが言うには、職場への女性の参加や待遇に関連する問題は依然として存在しており、女性の高い失業率の原因になっているという。
公式の推計によると、2020年第3四半期のヨルダンの失業率は23.9%となっており、2019年の同時期と比較して4.8%高い。学士号以上の学位を持つ男性の失業率は25.2%に達するが、少なくとも同程度の学位を持つ女性の失業率は77%に増加した。
「努力は行われていますが、経済活動への女性の参加は弱い状態のままです」フセイン氏はそう語り、依然として男性に独占されている職業が多数存在していると付け加えた。
「職場には未だに差別があります。雇用主は産休や育児に関連する問題を回避するために男性を雇用したがるのです」
名誉犯罪
平均して、ヨルダンでは毎年10〜15名の女性が名誉の名の下に殺害されているとフセイン氏は語る。
フセイン氏は『Murder in the Name of Honor』(「名誉の名の下で行われる殺人」の意)という痛烈な本の著者であり、その数字には「大幅な低下」が見られると説明する。
「1980年代と1990年代にヨルダンで報告されたいわゆる『名誉犯罪』の件数は20〜25件でした。年間30件に達することもありました。現在、活動家や啓蒙活動や政府など、戦いに参加したすべての人々の活動のおかげで、その数字は10〜15件に下がりました」
フセイン氏は、ヨルダンは女性に対する暴力に関連した法律を改正して刑罰を強化し、その結果、名誉犯罪が減少したと説明する。
最も重要な実績の一つは、意志決定に関わる職種に女性が登用されるようになったことだと言えるでしょう。
ラナ・フセイン(活動家)
「女性に対する暴力に関連する重要な条項の変更もありました。たとえば刑法98条や308条です。第308条は、女性に性的暴行を行った人物が被害者と結婚していた場合に罰則から逃れることを可能とするために利用されていました。現在、このような判例はなくなりました。他の変化としては、いわゆる「名誉犯罪」の加害者が以前のように寛大な判決を受けることがなくなったことが挙げられます。今では、刑事裁判所や司法システムは女性や子供に対する暴力を本当に非常に深刻に取り扱うようになりました。そして、被告の関与を示す強力な証拠とともに法廷に訴訟を持ち込むようになっています」
ヨルダンの法律はもはや名誉犯罪に対する寛大な判決を可能にするものではなくなったとフセイン氏は述べる。
「ですが、刑を軽くするために家族が法廷で行使できる権利を放棄するという問題が依然として存在しています」
フセイン氏は付け加える。「女性に対する暴力はヨルダンや中東地域に特有の現象ではなく、世界中で見られるものですが、私たちの地域では女性が家族や親類に殺されているという違いがあるのです」
新型コロナウイルスのパンデミック
ヨルダンの女性の権利のリーダーたちは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが女性の問題を悪化させているという。女性の経済的参加に悪影響を及ぼし、ジェンダーに基づく暴力が増加しているのだ。
幅広い教育や擁護プログラムを通して女性の前進やエンパワーメントを模索している独立組織「シスターフッド・イズ・グローバル・イニシアティブ(SIGI=Sisterhood is Global Initiative)」によると、パンデミックの結果、多くの女性が職を失い、DV被害にさらされているという。
「感染爆発によって、社会における女性の重要性が証明されました。ヨルダンの女性にかかる重荷は、特に最前線にいる女性にとって、パンデミックの期間に増加しました。多くの女性が職を失い、配偶者や父親、男性の兄弟からの様々な形の暴力に苦しんでいます。そうした女性たちは声を上げずに黙っています。その理由の一部は家族や子供を守るためです。しかし、現在の状況は例外的なものであって、経済的・社会的な課題にあふれているのだという女性たち自身の深い信念にも由来しているのです」SIGIは最近の報告でそう述べた。
フセイン氏は、ロックダウンや夜間外出禁止によってNGOや保護チームが弱い立場の家庭やDVおよび「家族の名誉」の被害者のセンターへの定期的な調査訪問の実施が妨げられているという。
新型コロナウイルスの感染爆発以来、国連女性機関(UN Women)は、最前線にいる人々から上がって来ているデータや報告で、成人女性や未成年女性に対するあらゆる形式の暴力、特にDVが激化していることが示されているという。
西アジア経済社会委員会(Economic and Social Commission for Western Asia)による最近の研究で、パンデミックによって中東地域の170万件の職が失われることになるだろうという結論が出された。そのうち約70万件の職の担い手は女性である。