

アラブニュース
ジェッダ/ドバイ発:8月1日にナフタリ・ベネット首相は、イランは否定しているものの、イスラエルはオマーン沖での死者が出たタンカー攻撃の背後にイランが存在している「証拠」を握っていると表明し、イスラエルは報復の「メッセージを送る」ことができると警告した。
このベネット首相の声明は、「乗組員2名が殺害された攻撃の責任はイランにある」とするイスラエルの「根拠のない非難」をイランが撥ねつけた事態を受けて出された。イラン政府は、大敵が国連による対イラン行動を後押しした場合は、イランの利益を守ることを誓った。
イラン外務省のサイード・ハティブザデ報道官はテヘランで攻撃についてのコメントし、いっさいの関与を否定しつつ、イスラエルは「こうした根拠なき非難をやめるべきだ。同国がイランにこのような非難を向けるのは初めてのことではない」と述べた。
イスラエルの有名な億万長者イアル・オファー氏が運航する石油タンカー「マーサー・ストリート」は、7月29日にオマーン沖で攻撃を受けた。
イスラエルのベネット首相が毎週定例の閣議で、「この件に関して情報機関は証拠をつかんでおり、我が国は国際社会がイラン政府に対して、重大な過ちを犯したと明言することを期待する」と述べたと、事務方が発表している。
「どのケースになっても、我が国は独自の方法でイランにメッセージを送る方法を理解している」
ベネット首相は「臆病」な否定をするイランをエルサレムから罵倒し、「同船に対する攻撃をイランが実行したと絶対確実に判断」できると述べた。
「イランの攻撃的な行動はイスラエルにとって危険なだけでなく、世界の利益、航行の自由、国際貿易にも危害を及ぼしている」
7月29日の石油タンカーへの攻撃では、英国人とルーマニア人の2名の乗組員が死亡した。タンカーはタンザニアのダルエスサラームからUAEのフジャイラに向かっていた。
初期の徴候はマーサー・ストリートに対するドローン攻撃を「明確に示している」と、米軍は表明している。
米中央軍の発表によると、「米海軍の兵員がマーサー・ストリートに乗り込んで、乗組員を支援している。米海軍の爆発物専門家が乗船して、乗組員をさらなる危険から保護している。攻撃の調査に関して支援を提供する用意も整っている」
海運業界の情報分析を行うドライアドグローバルは、今回の攻撃には「イスラエルとイランの間で戦われている『水面下の戦争』の特徴が見られる」としている。
攻撃の背後にイラン政府が存在しているとの評価を行った後の8月1日に、イギリス政府はイランの「狙いを定めた計画的な」タンカー攻撃を非難した。
英国のドミニク・ラーブ外相は攻撃を「違法で冷酷」と形容し、「容認できない」とするこの攻撃に対して、英国は国際的なパートナーとの協調対応に向けて取り組んでいると述べた。
今回の攻撃は、2月以降で5回目となるイスラエル関連の船舶への攻撃とされる。同じ期間に、イラン関連の船舶は2隻が攻撃を受けたという。
イランの国営アラビア語テレビチャンネル、アル・アーラムは、「地域の消息筋」の発言を引用して、今回の攻撃は、イランが政権を支えるシリアの中央部にある空港に対して「最近行われたイスラエルの攻撃への応答」だと報道した。
米国国務省の声明によると、7月31日にアントニー・ブリンケン国務長官はイスラエルのヤイル・ラピド外相と協議を行い、「事実の調査、支援の提供、適切な次のステップの検討」に他の同盟国とともに取り組むことに合意した。
イスラエルのヤイル・ラピド外相は、「イランのテロ」に対する国連の行動を促すよう自国の外交官に指示を出した。
ラピド外相は、「在ワシントン、ロンドン、国連の大使館に、相手国政府内のパートナーや、ニューヨークの国連本部の関係する代表団と協力して取り組むよう指示を出した」
「イランはイスラエルにとっての問題であるだけでなく、全人類を害するテロ、破壊、不安定の輸出国だ」
ラピド外相は、「英国市民が殺害されたこの船舶への攻撃に厳しく対応する必要がある」とドミニク・ラーブ英国外相に強調した、とも述べている。
今回のタンカー攻撃は、制裁解除と引き換えにイスラム共和国の核開発プログラムを縮小するという2015年合意を補強する取り組みとして欧州の大国がイランと会合を持ったタイミングで発生した。
2018年にドナルド・トランプ前米国大統領が一方的に米国を離脱させ、再び制裁を科したときに、この合意は損なわれた。
イランで新たに選出された超保守派のイブラヒム・ライシ大統領の就任式が来週に迫っているなか、米国も間接的に参加しているウィーンでの交渉は行き詰まっている。
イスラエルの退役准将である、イスラエル国家安全保障研究所のシュロモ・ブロム上級研究員は、今回の攻撃は6月にイラン国内の遠心分離機製造施設をイスラエルがドローンで攻撃した際の要素を模倣しているように見えると述べた。
ブロム将軍によると、イスラエルは「ドローンの開発に着手して、カミカゼのコンセプトを最初に開発した国の一つだ」
「イランは我が国を模倣し、同じ技術を採用している」。イランによる攻撃は「ある種のエスカレーションだが、全面戦争の回避を目指している。イランは大きくエスカレートさせることには関心がない。ちょうど我が国も大幅なエスカレーションに関心がないのと同じように」
6月にイラン政府はテヘラン西郊の都市カラジュ近辺の原子力エネルギー機関の建物への破壊攻撃を阻止したと発表した。
だが、イスラエルの民間情報会社ザ・インテル・ラボ(The Intel Lab)が入手した航空写真で、現場の破壊が明らかになっている。
(AFP、APと協力)