
ナジャ・フーサリ
ベイルート:ベイルート南郊では治安が保たれておらず、住民の不満や怒りの声が高まっており、白昼に行われる武装強盗も増えている。
治安筋は「ベイルート南郊の治安状況の悪さと経済危機の深まり」は結び付いていると述べた。
ただし、これらの犯罪の主たる理由は国家の評判の失墜にある、と同筋はアラブニュースに語った。
ある治安筋によると、以前には強盗は夜間にオートバイを盗んでいたが、今では毎日、日中に武装強盗がオートバイを強奪するようになった。
サレハ氏は、ハレット・フレイクに出勤する途中、交通渋滞だったのでオートバイを道路脇に駐めた。すると、ナイフを突きつけられて車両から引き離され、犯人はオートバイに乗って立ち去った。
ヒズボラの拠点でアマル運動の中心地にも当たっているベイルート南郊では、盗賊やギャングは治安当局や政党関係者を気にせずに、より大胆に武装作戦を実行するようになっている。
2014年のダーイシュの自爆テロ以降、郊外には治安のための検問所が設けられている。
人々は毎晩、武器を使用した衝突の音を聞くが、その理由も発砲者の正体もわからないままだ。ソーシャルメディアを駆け巡る根拠のない情報を通じて、何が起こっているかを把握するに過ぎない。
国内治安部隊(ISF)の報告書によると、これらの郊外地域で盗賊やギャングによる襲撃が行われるたびに、犯人のほとんどは「指名手配されており、その一部は薬物の取引または使用のために犯行に及んでいる」。
非公式な数字だが、この地域には100万人以上のレバノン国民が居住している。その一部は20世紀後半に地方から首都に移ってきた人たちだ。
ベイルート南郊に含まれる町の住民もいれば、アパートの家賃が首都よりも安いという理由で引っ越して来る人たちもいる。
ヘイ・アル・スロムは最貧地区の一つで、社会の片隅に追いやられた人々や指名手配犯が住んでおり、政党を庇護のために利用する。
だが、影響力の保持は、発電機の所有者、インターネットプロバイダー、ケーブルテレビ事業者にも及んでいる。3月、他方の影響圏を侵食したとの理由で、ビール・アル・アベドにおいて2つのグループの間で武力衝突が発生した。
その2週間前、顧客を巡る発電機所有者同士の争いから、レイラキで夜間に衝突が発生した。1カ月前には、ショイファットでインターネットプロバイダー同士の武力衝突が発生した。
この数日、武器を抜き、発砲する事態が簡単に起こるようになった。スフールの食事やシーシャの際に、2つのグループの間で戦闘が起こっている。
選挙を前に人々の不満が高まっていることを懸念したヒズボラとアマル運動は最近、共同声明を発表し、ベイルート南郊のさまざまな地域で窃盗、武装強盗、治安侵害の増加は「悪化の一途をたどり、生命と安全にとっての脅威にまでなっている」としている。
両グループは、治安機関や軍事組織の代表者に、「治安を侵害したすべての者を厳しく取り扱う」ことを要請し、関与者を擁護しないことを強調した。
治安筋は次のように強調した。「南郊には公式の治安機関が存在し、指名手配犯を追跡しており、場合によっては、ヒズボラが我々の任務の後押しをして、指名手配犯の隠れ家まで案内することもあるかもしれない。だが、一部のケースでは、我々は南郊の特定の場所における急襲予定をヒズボラに伝えない」
政治的合意により、南郊では、治安に関わるすべての問題でヒズボラの治安委員会が最終決定権を持つようになった。
このことは、ヒズボラが指名手配犯の隠れ家を知っている場合に、犯人を庇護することを意味するのかどうか尋ねたところ、同筋は、「あの悪党らは無頓着のレベルに達している。もはやヒズボラを恐れていない」と述べた。
いっさいの関与者の庇護を停止するというヒズボラとアマル運動の決定にもかかわらず、夜間の発砲や日中の盗賊行為が発生していることについて尋ねると、同筋は「悪党らは声明を読みもしないし、対応をとることもない」と述べた。
ヘイ・アル・スロム近くのアル・ムレイジャに住むザイナブ氏は、子供が夜間に外出し帰りが遅くなると危険なのでないかと恐れていると明かしてくれた。
時に些細なことから発生する衝突で、マシンガンや場合によってはロケットまで使用されると同氏は語った。
2週間前、午後の時間帯に武装強盗が2件発生した。1件目は送金関連の店舗で発生した。オートバイに乗った2人組が店に侵入し、客から8千ドルを奪って逃げ去った。2人組は以前からその客を監視していたことが後に判明した。
これとは別に、銃を持った男が日中スマートフォン店に侵入し、客の財布を奪った。そして、止めさせようとした店のオーナーに発砲して、手に怪我を負わせた。