
キーウ/ヴィルヒフカ(Vilhivka): ウクライナ軍は水曜日、戦争の勢いに変化をもたらす可能性のある反撃で戦場での勝利を収めた。一方、キーウはロシア領内を通るルートのガス供給を停止し、ヨーロッパでのエネルギー危機の不安を増大させた。
ハルキウの東に位置するウクライナ軍が勢力下に置くヴィルヒフカでは、前線での戦闘から、ほぼ常時、大砲の音と複数のロケット砲の音が聞こえるが、現在はさらに東に移動し、ドネツ川岸を占領して向こう側のロシアの補給線を脅かそうとしている。
ウクライナ軍関係者がロイターに語ったところによると、数日間の前進を経て、ウクライナ軍は水曜日の朝、ハルキウ地域のロシア国境から数キロの圏内に入ったという。
ウクライナ軍は、4月にロシア軍をキーウと北部から追い返して以来、最も速いペースで前進し、ヴィルヒフカの東、ドネツ川のほとりにあるルビジュネ(Rubizhne)村を奪還したようだ。
ウクライナの兵士はロイターに対し、村の外で1台のロシア製戦車の残骸の隣に立って、「他のロシア製戦車と同じように燃え尽きている」と述べた。「武器は対戦車用のものが大いに役立っている」
ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領府は、ロシア軍は「ハルキウから徐々に押し出されている」と述べたが、キーウはこれまで、この地域への進攻についてほとんど詳細を確認しておらず、慎重な姿勢を保っている。
ゼレンスキー大統領自身は、戦争初期から絶え間なく砲撃を受けてきた国内第二の都市が、この成功によってロシアの砲兵隊の射程範囲外になりつつあると述べたが、ウクライナ人にまだ過大な期待を抱かないようにと注意を促した。
「毎週、あるいは毎日、勝利が期待されるような、過度の道義的圧力をかける雰囲気を作ってはならない」と、彼は夜間のビデオ報道で述べている。
第92機械化旅団は火曜日、ロイターに対し、ハルキウ北部の4つの村を奪還したことを確認し、ロシア軍を国境に追いやったことを明らかにした。
ウクライナ軍参謀本部は、具体的な内容は明らかにしなかったが、「敵は、ハルキウ地方で我が軍が国境に向かってさらに移動するのを阻止しようとしている」と述べた。
また、ロシアは同地域での戦闘についてほとんど詳細を述べなかった。
ウクライナ軍によって数週間前に奪還されたものの、これまでほとんど市民が戻って来られない程の深刻な被害を受けた村、ヴィルヒフカでは、ウクライナの前進を見ることができる。
この数日、ロシア軍が更に東に追いやられたため、廃墟となった自宅の残骸を片づけに戻る人が増えてきている。ロシア兵のふくれあがった死体は、彼が所属していた部隊が撤退する前に本部を置いていた爆撃された学校の外で、いまだにくすぶっている。
ガス供給
水曜日のウクライナによる別の動きは、ロシアに支援された分離主義者が保有する領域を経由するロシアのガス供給を遮断したもので、紛争によってヨーロッパへのガス輸送が直接影響を受けた最初の例となった。
ロシアのガス輸出独占企業であるガスプロムがウクライナ経由でヨーロッパに送るガスの流れは、ロシアに支援された分離主義者が供給を横取りしたため、ロシア南部のソフラノフカ(Sokhranovka)中継地からの全ての流れを停止せざるを得なかったとキーウが述べた後、25%落ち込んだ。
もし供給削減が続けば、クレムリンが「特別軍事作戦」と呼ぶ戦争が、ヨーロッパのエネルギー市場にこれまでで最も直接的な影響を与えることになるだろう。
東部とは別に、ロシアはウクライナ南部の広い範囲を掌握しており、キーウや西側の同盟国は、モスクワがその占領を恒久化するために独立または併合に関する偽りの住民投票を組織するつもりであろうと見ている。
クレムリンは水曜日に、ロシア占領下のヘルソン地方に住む住民がロシアに加わるかどうかを決めるのは自由だが、そのような決定には明確な法的根拠がなければならない、と述べた。 これに先立ち、タス通信は、ロシアが支配する行政機関の関係者の言葉を引用し、同地域がプーチン大統領にロシアへの編入を要請する計画であることを明らかにした。
また、ロシア軍は南部のマリウポリ港にあるアゾフスタル製鉄所への砲撃も続けている。
ウクライナの参謀本部は、モスクワが廃墟と化した都市にあるウクライナの抵抗勢力の最後の砦を攻略しようとしていると述べた。
アゾフスタル製鉄所の中に立てこもるアゾフ連隊は、ロシアが空から工場を爆撃し、襲撃しようとしていると述べた。ロイターは、そこでの戦闘の報告を独自に確認することができなかった。