
エファレム・ コッセイフィ
ニューヨーク:「私の話をよく聞いてほしい」。パレスチナのリヤド・マンスール国連大使は、国連安全保障理事会の会合で向かいに座るイスラエルの国連大使にそう語りかけた。
「安保理はあなたの国を止めるべきだ」とマンスール大使は続けた。「それが彼らの責任だ。国際法と(ハラム・アル・シャリフの)歴史的な現状を守ることは全ての国家の責任だ。彼らはあなたの国を止めるべきだ。だが勘違いしないように。彼らが止めなければ我々パレスチナ人が止めるだろう」
マンスール大使のこの発言は、イスラエルの国家治安相に新たに就任したイタマル・ベン・グビール氏が4日に東エルサレムのアル・アクサモスクの敷地を予告なしに訪問した件について議論するためにUAEと中国の要請で開かれた安保理の緊急会合でなされたものだ。
マンスール大使は安保理に対し、イスラエルによる「我が国、あなた方の国、そして国際社会全体への完全な侮辱」に対して具体的な行動を起こすよう求めた。また、ベン・グビール国家治安相による訪問は「パレスチナ人の生の神聖さ、国際法の神聖さ、アル・ハラム・アル・シャリフの神聖さを完全に無視」した行為だと非難した。
「それにもかかわらず安保理は依然として傍観している。口では結構なことを言うが傍観したままだ」
ベン・グビール国家治安相によるアル・アクサモスクの敷地への訪問はパレスチナ人の怒りを買い世界中から非難を浴びた。
イスラエルがこの聖地の現状変更を企んでいるとの警鐘が鳴らされている中でのことだ。
マンスール大使は、「我々は我慢の限界に達しつつある」と述べたうえでこう続けた。
「我々が示している節度と責任感を決して弱さと捉えてはならない。過去が示しているように、イスラエルがこの路線に固執するならば先に待っているのは降伏ではなく反乱だ」
さらに、国際法と平和を守ると誓っている国々に対し、今すぐ行動を起こすよう求めたうえで、「火が燃え広がって制御不能になってから嘆かない」よう釘をさした。
2007年に反アラブ的な扇動を行ったとして有罪判決を受けた極右政治家のベン・グビール氏は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の新連立政権の国家治安相に任命され、イスラエルの警察に対する拡大された権限を与えられた。
同氏は以前からアル・アクサでのユダヤ人の礼拝を認めるよう求めてきた。
この聖地では過去に何度かイスラエル人とパレスチナ人の間で争いが発生している。
マンスール大使は、「人種差別的な見解」で知られるベン・グビール氏がアル・ハラム・シャリフに来たのは訪問が目的ではなく、「歴史的・法的現状の変更という、彼が生涯をかけて追い求めている過激主義的な計略を追求するためだ。結果がどうであれ、それが彼の目的だ」と述べた。
「アル・ハラム・アル・シャリフは陥落しない。決してだ。これから何世代もこのままであり続ける。ベギン元首相、シャミル元首相、シャロン元首相が去っても存在したし、ネタニヤフ首相、ベン・グビール国家治安相、エルダン国連大使よりも長くあり続けるだろう。アル・ハラムを時間的・空間的に分断しようとする者たちや乗っ取りを企む者たちは、それが世界中の全てのパレスチナ人、アラブ人、イスラム教徒にとって何を意味するのかを理解していない」
「世界中の数十億人の人々にとってこの聖地がいかに敏感な場所であるかを理解していないのだ」
イスラエルのギラド・エルダン国連大使はこの緊急会合について、「殺人的なイラン体制」など、会合を開くべき「安全保障上の無数の状況」が他にある時に、安保理はなぜこのような「意味のない」会合を開くのかと批判した。
また、ベン・グビール国家治安相による訪問は短時間かつ平和的・合法的なものであり、「アル・アクサモスクには侵入しておらず、パレスチナ側によるその他のでっち上げも事実ではない」と指摘した。
続けて、訪問は現状に沿ったものであり、「そうでないと主張をする者は状況を刺激しようとしているだけだ」と述べた。
さらに、「イスラエルは現状を損なっておらず、そうする計画もない」としたうえで、パレスチナ自治政府が「アル・アクサモスクが危険に晒されているという虚偽の主張を通してこの場所を戦場に変え、武器を蓄え、扇動を広め、暴力を助長することで」現状を変更しようとしていると非難した。
「パレスチナ自治政府は、神殿の丘でのユダヤ人の礼拝だけでなくユダヤ人の立ち入り自体を許さないという立場を明確にしつつある。これこそ現状変更であり、完全な反ユダヤ主義だ」
「国連、特に安保理は、パレスチナ人の嘘を正当化することや危険な作り話を助長することをやめなければならない」
UAEのモハメド・アブシャハブ国連次席大使は、ベン・グビール国家治安相がイスラエル軍に保護されながら「アル・アクサモスクの中庭に突入した」と強く非難した。
また、「このような挑発行為はエルサレムのこの聖地の既存の歴史的・法的地位を尊重する意志が欠けていることを示しており、彼らは占領下のパレスチナ領土の脆弱な状況をさらに不安定化している」としたうえで、地域において過激主義と憎悪をさらに掻き立てる恐れのある行為だと批判した。
さらに、シオンの山のキリスト教墓地が破壊された最近の事件を非難し、歴史的・宗教的な史跡にある墓を踏みにじり冒涜した者に責任を負わせるよう求めた。
アブシャハブ大使は、アル・アクサモスクを守ることや、そこで行われる全ての侵害行為を止めることの重要性を改めて強調した。
「我々が強調したいのは、国際法や歴史的現状に従ってこれらの聖地および寄付を管理するうえでヨルダン・ハシェミット王国が果たす役割を尊重する必要があるということと、『エルサレムのワクフおよびアル・アクサモスク管理局』の権限、および立ち入り手続きを含むハラム・アル・シャリフに関わるあらゆる事務の管理というその任務を損なうことのないようにする必要があるということだ」
また安保理に対し、「地域における緊張を刺激したり状況をエスカレートさせたりしかねない行為」に対して統一的な立場を取るよう求めた。さらに、二国間解決を実現し、1967年の境界線に基づき東エルサレムを首都として「平和と安全のうちにイスラエルと並んで存在する」パレスチナの独立国家を樹立するために、中東和平プロセスを復活させることが重要だと改めて強調した。
UAEと共に今回の緊急会合を要請した中国は、ベン・グビール国家治安相による訪問は「現地の深刻な状況」を招いたとしたうえで、この聖地の平和と平穏を守るよう求めた。
中国の張軍(チャン・ジュン)国連大使はイスラエルに対し、「扇動や挑発を全てやめ、状況の悪化につながる可能性のある一方的な行動を控える」よう呼びかけた。
米国のロバート・ウッド国連特別政治問題担当代理大使は、同国は「歴史的な現状から逸脱するいかなる一方的な行動にも」反対し、そのような行動を「容認しない」と述べた。
また、現状維持に対する米国の支持を強調し、「エルサレムの聖地の管理者としてヨルダン・ハシェミット王国が果たしている特別な役割」に謝意を表明した。
さらに、バイデン政権は「全当事者に対し、ハラム・アル・シャリフ/神殿の丘やエルサレムのその他の聖地において、言葉と行動の両面において自制を心がけ挑発的な行為や発言を控える」よう求めると改めて強調した。