
エルサレム:イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は5日前、国防相の解任を決めたことで自然発生的な大規模抗議とゼネストの波が発生し、国が麻痺する恐れがあったため、首相は対立を生むこの司法制度改革計画を中断せざるを得なかった。
しかし、ネタニヤフ氏はイスラエルのヨアフ・ガラント国防相へ正式な解任通知を送っていない、とネタニヤフ氏の広報官は言う。
3月31日現在、ネタニヤフ氏が計画した司法改革に異論を唱えたことでガラント氏は解任されたが、いまだに国防相を務めている。ガラント氏の補佐官によると、国防省で普段通りの仕事をしていたとのことだ。
ネタニヤフ氏がガラント氏の代わりに、自身が所属する右派のリクード党から信奉者を任命することを検討していると、地元メディアでは今週もちきりだった。
しかし、ガラント氏の後任は未定のままで、それでもなお国防省の顔を務めている。
今週、ガラント氏はアゼルバイジャンの外務大臣を出迎え、2つの軍事基地を案内し、28日の安全保障閣僚会議に出席した。
3月30日には、ガラント氏はユダヤ教の過越祭の休日を前にした祝典に、イスラエル総保安庁のロネン・バー長官と共に参加したことをガラント氏の事務所は発表しており、長官の横で笑顔を見せる写真が公開されている。
祝典の乾杯の言葉でガラント氏は「私たちには、イスラエル社会の気勢を鎮め、包括的で一体的な対話を持続していく義務があります」と述べた。
イスラエルにとって極めて重要な国防省の運命の周りに疑惑が渦巻いている。国防省はイスラエルによるヨルダン川西岸の軍事占領を55年間持続し、イラン、レバノンの武装組織ヒズボラ、ガザ地区の武装勢力ハマスの指導者からの脅威に対処している。
イスラエルにとって、ここ数十年で有数の劇的な数週間の後で、その疑惑はネタニヤフ氏の右派連立政権を引き裂こうとする緊張感を反映している。
この局面は、イスラエルで歴代最長の任期を務めている、徹底的に二極化した国を治めつつ汚職の責任に直面している首相の、リーダーシップテストにもなっている。
ネタニヤフ氏は、イスラエルで最大の抗議運動に直面して、イスラエルの最高裁判所の弱体化計画を一時停止させる決定を下したが、これは首相が連立政権を維持するためには必要な複雑な曲芸を行わなければならないことを明白にした、と専門家は言う。
他方ではネタニヤフ氏は、司法改革を支持する、極右や宗教的保守派の連立パートナーを喜ばせる必要があり、裁判を受けながらも、政権の座を奪取した。
しかしネタニヤフ氏はイスラエルの緊密な同盟国アメリカからの、この計画に対する重大な懸念、および穏健派政治家からの怒り、国家的危機が国の安全を脅かすのではないかというイスラエル軍内部からの反対意見も考慮しなければならない。
この措置に抗議して、ますます多くの予備兵が出勤を拒否する中、この危機がイスラエルの軍事力に悪影響を及ぼすのではないかという懸念が高まっている。
ネタニヤフ氏の事務所はガラント氏の未確定の状況について、さらなるコメントを拒否した。しかし、相反する圧力が、国防相を務めるガラント氏の将来を結果として袋小路に迷い込ませることになった。
「ネタニヤフ氏の周りにいる極端主義者が見たいものは、流血とガラント氏の更迭なのです」と、エルサレム・ヘブライ大学の政治学者Gayil Talshir氏は言う。
これら政治家には、連立協定により政府に加わるよう説得を受け大きな力を得た、極右のイタマル・ベングビール国家安全保障相とベザレル・スモトリッチ財務大臣が含まれる。
AP