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イスラエルは2030年に向けて前進するのか、それとも1967年から抜け出せないのか

ジョー・バイデン米大統領は、ガザ戦争を終結させる時が来たと述べ、3段階の和平計画の詳細を示した(ファイル/AFP=時事)
ジョー・バイデン米大統領は、ガザ戦争を終結させる時が来たと述べ、3段階の和平計画の詳細を示した(ファイル/AFP=時事)
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06 Jun 2024 11:06:05 GMT9
06 Jun 2024 11:06:05 GMT9

見出しを見逃した人、あるいは見出しを見たけれども読み違えたかもしれないと思った人のためにもう一度言わせてほしい。中東は、あらゆる苦難、戦争、そして傷にもかかわらず、”まだ 良い方向に変わるチャンスはある”。

この熱意のこもった言葉は私のものではなく、マイケル・ラトニー駐サウジアラビア米国大使が今週、アラブニュースのトーク番組 「フランクリー・スピーキング 」の独占インタビューで繰り返し語ったものだ。

同大使は、「歴史的」という言葉が陳腐であることを認めつつも、安全保障協定を文書化し、関係を正常化し、イスラエルを地域に統合し、パレスチナ人に国家を保障するサウジとアメリカの新しい協定案を説明するのにこの言葉を使うことを主張した。「すべての要素は……並外れた価値があります。本当の価値は、それらをすべて統合することです」。米国大使のこのような発言は大きな話題であり、だからこそすぐにアラビア語に翻訳され、オンラインで広く共有された。しかも、ラトニー氏はただの大使ではない。リヤドの前はイスラエルのアメリカ大使館に勤務し、中東紛争の解決と暴力的過激主義への対抗に30年近くを捧げてきた。

インタビューの数日後、ジョー・バイデン米大統領は、ガザ紛争を終結させる時が来たと述べ、合理的な3段階和平プランの詳細を示した。イスラエルの人質とパレスチナ人囚人の解放のための最初の6週間の停戦、すべての敵対行為の恒久的な終結に向けた交渉、そして最後に荒廃したガザ地区の復興である。私を含め、これは遅すぎる、少なすぎるという意見もあるかもしれないが、現実的に考えてみよう。遅くとも全く無いより良いのだ。

アメリカの国旗を燃やし、ハンバーガーやキャラメルラテをボイコットすることでパレスチナの大義に貢献していると考える人々が、アメリカだけが使えるニンジンや鞭を使うことなしに、和平交渉や地域の安定が達成できると考えているのだとしたら、それは妄想にすぎない。事実、アメリカは依然として世界で最も重要な超大国であり、イスラエルに対して影響力を持っている。

イスラエルについて言えば、この戦争が始まって8カ月が経った今、ベンヤミン・ネタニヤフ首相と彼の戦時内閣が達成できたのは、人為的な飢饉と、4万人近いパレスチナ人(そのほとんどが一般市民、女性、子どもたち)の犠牲、そしてガザのインフラを瓦礫と化したことだけだ。

彼らは掲げた戦争目的を何一つ達成していない: 人質が拘束されたままであり、イスラエルは安全ではない。そして、ハマス撲滅にしかりである。イスラエルの首相とその右翼過激派政府は、ハマス2.0を何世代にもわたって育てていくための種をまき、肥料を施したというところだ。

それはネタニヤフ首相にとって目新しいことではない。実際、ハマスに力を与え、ヨルダン川西岸地区の正当なパレスチナ自治政府の信用を失墜させようとしてきた、過去16年間の彼の政策を継続しているのだ。繰り返すが、私の言葉を鵜呑みにするまでもなく、『タイムズ・オブ・イスラエル』紙のコラムニスト、タル・シュナイダー氏が、10月7日のイスラエル攻撃の翌日に、こんな見出しの論説を書いている: 「ネタニヤフ首相は何年もの間、ハマスを支えてきた。今、それは私たちの眼前で弾け飛ぶのだ」

同紙はまた、サウジアラビアが教育カリキュラムから反ユダヤ主義的な教材を削除したと最近報じた。これは驚くべきことではない。新しいことではないし、王国教育省がこれまで行ってきた信じられないような仕事について評価されることはめったにない。実際、サウジアラビアの改革は2016年から進められており、王国はそのエコシステム全体に、イスラエルとの問題は宗教的なものではなく、土地の紛争であり、解決すれば双方に認識と和解と成果がもたらされるという、長年の見解を反映させようとしている。

たとえば本紙は、ユダヤ教をアラブ人としての私たちの社会的基盤の一部であると祝福する記事を掲載し、ユダヤ人に「シャナ・トヴァ(新年おめでとう)」と最初に挨拶し、ロナルド・ローダーからデボラ・リップシュタット(バイデン政権の反ユダヤ主義撲滅特使)まで、一流のラビやコミュニティ・リーダーによるインタビューやコラムを掲載してきた。実際、監視し説明する必要があるのは、イスラエル側の行動とレトリックである。

『ニューヨーク・タイムズ』紙のライター、トム・フリードマン氏が先月発表したコラムで述べているように、サウジアラビアとイスラエルは、米国からどう見られているかという点で、いまや「場所を入れ替えている」のだ。イスラエル選出の政府高官たちは、女性や子ども、動物までも殺すことを正当化する聖書の記述を引き合いに出して、ガザに核を撃ち込むよう呼びかけているが、サウジアラビア政府高官たちは平和を推進し、人工知能に投資し、アラブ系イスラム教徒初の女性宇宙飛行士を宇宙に送り出している。

2030年を羅針盤に、サウジアラビアは前進を続ける決意を固めており、米国などの長年のパートナーもその旅の一部に招かれている。

イスラエルもまた、招待状はいまだ有効であり、2030年クラブの一員となることで大きな利益を得ることができる。サウジアラビアは正当性とアラブ/イスラム世界からの認知を提供し、その巨大な外交的重みと広大な国際関係ネットワークによって、正当なパレスチナ自治政府がイスラエルの平和で豊かな隣人となることを支援する。 1967年に留まるか、2030年に向けて高速列車に乗るか、どちらかを選ばなければならないのだ。イスラエルがすべきことは、敵対関係を終わらせ、バイデンの和平プランを信頼し、正当なパレスチナ国家の存在を認めることによってのみ、自国の安全を保証し、日々増大する一方の孤立を解消できることを認識することだ。

  • ファイサル・J・アッバス編集長。X: @FaisalJAbbas
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