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戦争で疲弊し銃があふれる国アフガニスタンはダーイシュに肥沃な土地を提供する

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08 Sep 2021 07:09:00 GMT9
08 Sep 2021 07:09:00 GMT9
  • イスラム国ホラサン(IS-K)は、それぞれがタリバンとの独自の関係を持つアフガニスタンのテロリスト集団の一つだ。
  • ダーイシュは、カブール空港で米軍人13人とアフガン市民約170人を死亡させた8月26日の2度の爆発について、犯行声明を出した。

リーン・フォアド(ロンドン)ハニ・ナシラ(カイロ)

2001年に発生したニューヨークとワシントンへの凄まじい攻撃からわずか3カ月後、米軍特殊部隊と地元の同盟勢力が迫るなか、オサマ・ビンラディン容疑者率いる小集団はアフガニスタン東部の山岳地帯トラボラからの脱出を余儀なくされた。

米国で3千人以上が死亡した9.11テロを差配した時点で、このアルカイダ指導者のアフガニスタン滞在は5年に及んでいた。ビンラディン容疑者は1996年に、ムッラー・オマル氏の第一次タリバン政権時代のアフガニスタンから保護を与えられた。

アルジャジーラのニュースチャンネルで放映されたビデオテープで、2004年10月29日に撮影された映像のフレームグラブ (L) に映る、アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン。 (ファイルAFP)

ソ連に対する聖戦を戦っていた時代から、ビンラディン容疑者は過激主義を標榜して、アフガニスタン国内で数千人のアラブ人新兵に訓練を施し、武装させる役割を担った。

以来ほぼ20年、そして新たなタリバン指導者の下で、アフガニスタンはアルカイダやダーイシュの名を掲げる中央アジアや中東のテロリストたちの避難所であり続けている。8月中旬にタリバンが権力の座に就いて以降、より平和な新しいアフガニスタンという約束と希望は幻想であることが判明した。

8月26日、イスラム国ホラサン(IS-K)はカブール空港やその周辺で米軍人とアフガン市民を狙った2度の爆発について、犯行声明を出した。混沌と混乱が渦巻くなか、ダーイシュとその競争相手アルカイダは、新たな機会の香りを嗅ぎつけた。ちょうど20年前のビンラディン容疑者のように。

ジャララバードのアフガニスタン政府に降伏後、自分たちの武器の傍らに立つダーイシュグループのメンバー(2019年11月17日撮影)(資料/ AFP)

国連制裁監視チームは6月の報告で、アルカイダ指導部のかなりの部分がアフガニスタン・パキスタン国境沿いの地域を拠点にし、IS-Kは「引き続き活発に行動し、危険な存在である」と明らかにしている。IS-Kはすべての集団の中でもっとも暴力的だ。

米軍や旧アフガン政府軍によって大きな痛手を被りはしたが、世界各地から戦闘員を引き寄せ、動機を植え付けるその能力によって、モスクワから北京、タシケントからダマスカスに至るまで、恐怖を抱かせている。そして、カブールにおいてもだ。この集団の新指導者は野心的なシャハブ・アル・ムハジル氏だと、国連制裁監視チームは記している。

アフガニスタンでのこの集団のプレゼンスは2015年に遡る。これはイラクとシリアでアブー・バクル・アル・バグダーディー容疑者がイスラム国樹立を宣言し、世界のすべての地域におけるイスラム教徒のカリフに自分自身を任命した時期に当たる。
アフガニスタンでは、パキスタン・タリバン(別名、パキスタン・タリバン運動、TTP)の元指導者ハフィズ・サイード・カーン氏が、アル・バグダーディー容疑者に忠誠を誓って、支部となるIS-Kを設立した。

2016年のピーク時には、IS-Kはアフガニスタンに推定2,500人から8,500人の戦闘員を抱え、高レベルの攻撃を実行できた。そのほとんどはパキスタン国境に近いアフガニスタン東部のカブール州とナンガルハール州に集中していた。

2021年2月15日、ジャララバードで起きた治安部隊とイスラム国(IS)グループ戦闘員との間の銃撃戦で損壊した住宅を調査するアフガニスタンの警備員。(資料/ AFP)

オーストラリア国立大学アラブ・イスラム研究センター上級講師のキリル・ヌルザノフ氏は、2019年末までにIS-Kは「主な作戦展開地域からはほぼ一掃された」が、「アフガニスタン東部諸州へのIS-Kの帰還は時間の問題かもしれない。IS-Kによる宗派間暴力は激化するだろう」と、アラブニュースに語った。

今年前半に、IS-Kはハザラ人シーア派コミュニティを20回以上攻撃したことを表明している。推定死者数は500人に上る。この種の攻撃はイランの政治体制を動揺させる可能性が高い。それ以外にも、ダーイシュ発行の新聞アル・ナバーによると、米軍の撤退開始以降、IS-Kは91回以上の攻撃を行い、約345人の民間人とアフガン警察官が死亡した。

豪ディーキン大学の中東研究フォーラム主催者、シャフラム・アクバルザデー氏は、「米軍とNATO軍の撤退はアフガン政府の崩壊を促し、権力の空白を生み出した」と、アラブニュースに語った。

2020年8月4日、ジャララバードでダーイシュの武装集団が刑務所を襲撃する合間に、別の武装集団が迫撃砲による攻撃を行った際に損壊した住宅の近くで押収した武器を調べるアフガニスタンの治安当局者たち。(資料/ AFP)

「タリバンは簡単にカブールに入城できると分かったが、IS-Kなどの他の集団も勢力圏拡大の機会を与えられた。このサラフィー主義集団の著しい勢力圏拡大を目にする可能性が高い」

権力の空白はIS-Kのプレゼンスを強めるだけでなく、他のテロリスト集団や過激派集団のプレゼンスも強めるだろう。アルカイダ指導者のアイマン・アル・ザワヒリ容疑者はパキスタンの部族地域で生存し、病気を患っているとされる。アルカイダは、カブールの治安を統轄するハッカーニ・ネットワークを通じて、タリバンと強い結び付きを保っている。

タリバンやダーイシュ、あるいはシリア北部のハヤト・タハリール・アル・シャームとは対照的に、アルカイダのメディアの反応は遅い。アルカイダの能力がいたく劣化していることが示唆される。ビンラディン容疑者とアル・ザワヒリ容疑者に次ぐ元ナンバースリーのアルカイダ上級幹部、サイフ・アル・アデル容疑者は、イランで政府の保護と支援を受けて、生存していると考えられている。だが、タリバンの権力掌握はダーイシュ同様に、アルカイダにも勢いを与えるだろう。

ナンガルハール州のアチン地区で進行中の対イスラム国(IS)戦闘員の作戦に参加するアフガニスタンの治安部隊( 2019年11月25日撮影)(資料/ AFP)

テロリズムと政治的行動主義の心理学の専門家であるアリー・クルグランスキー氏は、「アルカイダは、世界の他のいくつかの地域、西アフリカ、マグレブ、シリアなどに強固なプレゼンスを確保している。タリバンの政権奪取によって、アフガニスタン・パキスタン地域にも安住の地を得て、組織の回復と再建に乗り出す可能性が高い」と語った。

移動の容易さは、ダーイシュにとってもアルカイダにとっても、アフガニスタンという国を魅力的な存在にする。これは現在の拠点地域と比較したときに顕著だ。アフガニスタンの脆弱な国境管理は、特にパキスタンからの、戦闘員の移動を容易にする。国境の山岳地帯は、NATO軍と前アフガン政府軍が、警備は不可能ではないとしても困難だとみなした場所だ。

西部では、イラン国境もテロリストがアフガニスタンに入国する別の通路になっている。IS-Kは、イラクやシリア出身の戦闘員や潜伏メンバーが力を回復し、作戦を再開するためのもう一つの場所を提供する。

イスラム党党首で元ムジャヒディーン指導者のグルブッディーン・ヘクマティヤール氏は、ダーイシュ戦闘員のイラクやシリアからアフガニスタンへの通過を容易にしたとして、イランを非難している。氏によると、この地域での「ダーイシュの新バージョン」の形成につながる事態だ。

とはいえ、この地域はIS-Kに難題を突き付けている。特に、現時点でアフガニスタンのほぼ完全な支配権を手中に収めたタリバンに由来する問題だ。新タリバン政権は早くも8月19日にアフガニスタン・イスラム首長国を宣言することで、宗教的な信用証明を強調することになった。この国名は1996年から2001年までアフガニスタンを支配していた時期に使用していたものだ。

多くのアナリストは。数週間以内にタリバンとIS-Kの武力衝突が激化すると予想している。

トレードマークの旗を掲げてポーズをとるダーイシュの戦闘員( 2014年6月11日撮影)(資料/ AFP)

東洋アフリカ研究学院の紛争・開発研究学教授であるジョナサン・グッドハンド氏は、「ダーイシュとタリバンの間には深い敵意が横たわっている。アルカイダ、TPP、ウズベキスタン・イスラム運動などの類はタリバンの勝利を祝うだろうが、ダーイシュの支配領域が拡大することはまずないだろう」と語った。

タリバンを構成するのは主にパシュトゥン人で、その出身地はアフガニスタンとパキスタンだけだ。一方、ダーイシュはアラブ人、ウズベク人、トルクメン人、チェチェン人、クルド人、カザフ人、タジク人、ウイグル人と非常に多くの国籍の人間で構成されている。

ヌルザノフ氏は、「2015年以来、タリバンは一貫してIS-Kと激しく戦っている。実際、ロシアやイラン、中央アジアの諸共和国が第一の敵とみなすタリバンの戦闘能力こそが、まさにアフガニスタンの近隣諸国に柔軟で現実的な対タリバン姿勢を強いている」と述べた。

古代の軍事要塞の上に彼らの旗を掲げるダーイシュの戦闘員たち。( 2014年6月11日撮影)(資料AFP)

アクバルザデー氏は、IS-Kが勢力圏拡大を試みる結果、タリバンとの緊張が高まると予想する。「タリバンとIS-Kはライバルだ。IS-Kはタリバンのことをフェイク・ムスリムとけなしている。これは他のすべてのムスリム・グループのことを、腐敗しており、本物ではないとして、否定しているのと同じようなものだ。両勢力は以前に武力衝突している。また、タリバンは、セクト主義で暴力的であることが明白なIS-Kとは距離を置こうと努めてきた」

アクバルザデー氏は、「米国の関与がなくなっており、IS-Kが影響力拡大に動いてタリバンと直接衝突するようになれば、両者の緊張は高まる可能性が高い」とも述べた。

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