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諸外国の注目を集めるアジア太平洋地域

ASEAN諸国の多くはアジア太平洋地域外の諸外国にとって急速に主要な外交ターゲットとなりつつある。(AFP)
ASEAN諸国の多くはアジア太平洋地域外の諸外国にとって急速に主要な外交ターゲットとなりつつある。(AFP)
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01 Sep 2023 06:09:48 GMT9
01 Sep 2023 06:09:48 GMT9

9月の世界外交は9~10日にインドで開催されるG20首脳会議一色になるだろう。しかし、国際的な注目を集めるこのイベントの数日前に開催される東アジア首脳会議および東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議も重要である。

インドネシアで開催される両首脳会議はG20首脳会議に比べると目立たないが、ASEAN諸国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)は、北米、欧州、中東を含むアジア太平洋地域外の諸外国にとって急速に主要な外交ターゲットとなりつつある。ASEAN諸国が6億人以上の人口と170万平方マイルの国土を有するという現在の熱狂的な地政学的状況の中では、それも不思議ではないだろう。

また、ASEANの購買力平価GDPは10兆ドルを超えており、著しく成長している。この地域に対する国際的関心の高さは、国連貿易開発会議(UNCTAD)が発表した、2022年のASEANへの対外直接投資(FDI)流入額が前年比5%増の2240億ドルに達し過去最高を記録したという事実に示されている。これは同期間の世界全体のFDIが12%減少する中で世界各地の傾向に逆行するものである。

当然ながら、ASEANはアジア太平洋地域やそれ以外の地域の国々と頻繁に関わり合っている。また、国連、湾岸協力理事会(GCC)、南米南部共同市場(メルコスール)などの国際機関・組織の主要パートナーであり、同盟国や対話パートナーのグローバルなネットワークを有している。

しかし、アジア太平洋地域外の諸外国からの注目は急速に高まっている。2011年から東アジア首脳会議に参加している米国もその例に漏れない。昨年カンボジアで開催された米ASEAN首脳会議にジョー・バイデン大統領が出席したのに続き、インドネシアで開催される今年のASEAN関連首脳会議にはカマラ・ハリス副大統領が出席する。

ASEAN諸国の首脳らが米国との関係を包括的な戦略的パートナーシップへと高めたのは、昨年の米ASEAN首脳会議でのことだった。このことは、バイデン政権が、保健、輸送、女性のエンパワーメント、環境・気候、エネルギーに関する5つの新しいハイレベル対話プロセスの立ち上げや、外交、経済、国防に関する既存の対話ルートへのさらなる関与など、米ASEAN関係の大幅な拡大を監督してきたことを浮き彫りにするものである。

EUASEANにとって第3の貿易パートナーであり、貿易額の10%以上を占めている

アンドリュー・ハモンド

米国はまた、国務省と国際開発庁を通して2022年だけで8億6000万ドルという多額の資金援助をASEANに提供することで、外交的プロファイルを高めている。この援助は、気候目標・クリーンエネルギー移行、教育へのアクセス、医療制度の強化、安全保障の現代化の取り組み、法の支配、人権といった分野における共同フォーラムを支援している。

北米以外だと、EUも昨年ASEANとの初の首脳会議を開催した。1977年以来の対話パートナーであるEUとASEANは、2020年のEU・ASEAN閣僚会議を経て戦略パートナーとなることで新たな一章を開いた。それ以降、両者の関係は政治・安全保障協力、経済連携、社会文化的協力という3つの主要なプラットフォームにおいて繁栄している。社会文化的協力には、高等教育、保健、災害管理・防災、生物多様性の保護と保護地域の効果的な管理、持続可能な都市化、持続可能な農業などが含まれる。

例えば、貿易・投資関係は過去10年間で大幅に成長している。EUはASEANにとって第3の貿易パートナーであり、貿易額の10%以上を占めている。一方、ASEANはEUにとって欧州以外では第3の貿易パートナーである。EUはASEAN諸国への最大の投資家でもある。

ダイナミックな中東地域に目を移すと、サウジアラビアやUAEなどの国々もASEAN諸国と関わり合っている。UAEは昨年、ASEANの東南アジア友好協力条約に署名し、分野別対話パートナーの地位を獲得した。これは、貿易・投資協力の強化への道を開くとともに、両者および地域の繁栄に向けた戦略的パートナーシップのための土台を築くものだ。

UAEは、同国はGCC諸国と東南アジアに間に「機会の回廊」を構築していると述べている。その重要な部分は、中東における主要貿易パートナーとしてのUAEの地位を維持するために、東南アジア諸国との包括的経済パートナーシップ協定に関する交渉を急ピッチで進めることである。

この極めて競争的な状況の中では不可避なことだが、他のアジア諸国もASEANへの関与を独自に強化している。このような文脈では中国が特筆されることが多いが、G20議長国のインドを含む他の国々も外交を強化している。

インドのナレンドラ・モディ首相は現在、9月6日にインドネシアを短時間訪問し、その翌日、自身が主催するG20首脳会議の直前に帰国できるようスケジュールを変更することを検討している。インド当局は以前、G20首脳らの到着に間に合うよう帰国する必要があるというスケジュールの都合上、同首相がジャカルタでの会議に出席することは難しいと述べていた。

モディ主要のインドネシア訪問が実現すれば、「ASEAN・インド対話関係」30周年の直後というタイミングで両者の関係を再確認するものとなる。この対話関係のもと、両者の関係は包括的な戦略パートナーシップへと高められた。モディ首相は自由貿易協定の可能性についても検討したい考えだ。

以上の例は、諸外国がASEANとの関与の強化に向けていかに準備を進めているかを示すものである。中国やインドなどの地域の大国を出し抜き、2020年代半ば以降の経済的・政治的優位性を得ようとしているアジア太平洋地域外の諸外国にとって、広大なASEAN地域の優先順位は高まっている。

  • アンドリュー・ハモンド氏はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのLSE IDEASのアソシエイト 
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