
サウジアラビアが来月から始める100万バレル/日(bpd)のさらなる追加減産措置は、市場の需給バランスを安定化させるのに役立つだろう。
この措置の目的は価格を上げることではない。ブレント原油は2週連続で1バレルあたり30ドル付近の狭いレンジで推移している。
そのためサウジアラビアは、6月の原油生産量をOPEC+で合意された割当量よりも100万bpd少ない749万bpdとする予定だ。
これは記録的に少なかったサウジの4月の原油生産量1,230万bpdをさらに480万bpd下回る。
OPEC+協定に基づくサウジアラビアのもともとの生産量の上限は、5月と6月が849万bpd、その後年末までは月間899万bpdだった。では、コロナウイルス関連のロックダウンが緩和されつつあることを受けてちょうど需要が回復し始めている中で、なぜこのような自発的な減産を行う必要があるのだろうか?
この動きは世界の石油需要に改善の兆しが見えているにもかかわらず起こったが、それでも世界でだぶついている石油の余剰吸収を加速し、世界中の精製業者の物流を支援するためには必要なことだった。この減産によって精製業者のタンクに余裕が生まれ、原油の新たな貨物を処理することができるようになる。
サウジのエネルギー相アブドゥル・ビン・サルマンアズィーズ王子が強調したように、王国は市場のバランス回復を早めることで先手を打ちたいと考えているのだ。
この動きはOPEC+内外の他の生産国が同様の方法で協力することを促進し、市場の正常化を助けることになるかもしれない。
一部のアナリストはこの措置だけで市場のバランスを取り戻すのに十分なのか疑問を持つかもしれないが、少なくとも貯蔵スペース内の圧力を軽減し、需要が回復するのを待つための時間を買う助けにはなる。
また、石油生産量を記録的な1,230万bpdからたった2ヶ月でわずか749万bpdへと減らすことができる、世界唯一のスイングサプライヤー(供給調整国)としてのサウジアラビアの役割を強化することにもなる。他のどの生産国もそのような運用管理はできそうもなく、サウジアラムコのインフラが未だ並ぶものがないことを反映している。