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アル=トワイジリ氏、次期WTO事務局長に唯一の適任者

ムハンマド・アル=トワイジリ氏はサウジアラビアの世界貿易機関(WTO)事務局長候補。(写真/AP通信)
ムハンマド・アル=トワイジリ氏はサウジアラビアの世界貿易機関(WTO)事務局長候補。(写真/AP通信)
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14 Sep 2020 03:09:09 GMT9
14 Sep 2020 03:09:09 GMT9

5月に世界貿易機関(WTO)のロベルト・アゼベド事務局長が1年前倒しで退任すると発表したことで、世界の最重要ポストの1つに就くための競争が始まった。7月8日、サウジアラビアはムハンマド・アル=トワイジリ氏を公式候補としてエントリーした。候補者は合計8人で、その中には英国のリアム・フォックス氏やナイジェリアのンゴジ・オコンジョ=イウェアラ氏など有名な政治家が含まれている。

アル=トワイジリ氏は、政府での経験と民間企業での豊富な経験を兼ね備えた、ただ一人の候補者であるため、唯一の適任者だ。アル=トワイジリ氏は現在、国際的・国内的な戦略的経済問題について王室に助言する大臣の任に就いている。同氏は、2016年から今年3月まで経済企画大臣を務め、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のビジョン2030への統合に尽力した。同氏はビジョン2030を強力に推進している。アル=トワイジリ氏は、パフォーマンス管理と評価に大きな力を入れている。国際通貨基金(IMF)と世界銀行、そしてWTOもアル=トワイジリ氏の大臣としての任務に含まれている。

アル=トワイジリ氏と他の候補者との違いは、同氏の民間部門での深く長い経験だ。元戦闘機パイロットであり、キング・サウード大学でMBAを取得したアル=トワイジリ氏は、国際金融の世界で出世し、最終的にはHSBCの中東・北アフリカ・トルコ担当の副会長兼CEOを務めた。国際的な銀行で大規模かつ重要な地域を担当することは卓越していることの証だ。大手金融機関は実力主義であり、そのようなポジションは最も有能な者にのみ与えられるからだ。

アル=トワイジリ氏についてはここまでとし、次は組織を見てみよう。WTOは1995年1月1日、123か国が署名したマラケシュ協定により設立された。WTOは1948年の「関税及び貿易に関する一般協定」(GATT)に取って代わった。WTOは貿易問題を監視し、貿易交渉の枠組みを提供する。WTOの3つ目の機能は紛争解決メカニズムであり、その重要性は軽視できない。

発展途上国のさらに包括的なグローバリゼーションを目指すWTOのドーハ・ラウンドは未完成のままだ。農業補助金や非関税貿易障壁の問題が大きな障害となっている。 

2001年に中国が参加したときには、ドーハ・ラウンドはWTOにとってハイライトとなった。WTO加盟は中国政府にとっても重要な意味を持ち、その後の経済成長のための重要な基盤となった。サウジアラビアは2005年にWTOに加盟した。

公平で機能的な貿易システムは、世界経済のみならず、持続可能で公平な成長、そしてSDGsの17の目標達成にとっても非常に重要だ。結局のところ、過去数十年間で何億人もの人々を貧困から救い出したのは貿易だった。 

保護主義の暗雲は、米国と中国が貿易対決に乗り出すずっと前から立ち込めていたが、この3年間で確実に強まっている。特に厄介なのは、退任していくWTO上級委員を再任することができなければ、貿易紛争解決メカニズムが膠着(こうちゃく)状態に陥る可能性があることだ。

WTOが機能していることが、これまで以上に重要になってきていると言える。コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界経済を第二次世界大戦以来最大、おそらく世界恐慌以来最大の危機に追い込んだ。国境が閉鎖され、サプライチェーンが寸断され、工場が閉鎖されたため、世界の貿易は苦戦を強いられている。WTOは、パンデミックの影響で今年の第2四半期に世界貿易が18%減少したと推定している。

WTOは、世界貿易の検討課題を再活性化するために、明確な管理運営と組織の刷新を必要としている。7月17日にWTO理事会で発表された アル=トワイジリ氏の声明には、明確で達成可能なロードマップが示されている。そのロードマップは、現状維持を超えて、21世紀の目的に合ったシステムの構築を目指すものだ。 

テクノロジーは、私たちの生活、生計、貿易の方法を変えてきた。どちらかと言えば、パンデミックはこれらの変化を加速させた。サウジアラビアとその経済企画省は、第四次産業革命、すなわち情報技術、ロボット工学、人工知能などの重要性を理解している。昨年の未来投資イニチアチブに参加した者ならこのことを疑うはずはない。大規模な経済の変革とパンデミックの影響の組み合わせは、複数の厄災による破滅的な状態か、大きなチャンスに変わるかのどちらかになる。だからこそ、政府と民間部門の両方の経験を持つ人物をWTOの舵取り役に据えることが重要なのだ。両方に精通した人物だけが、必要な変化をもたらすことができる。

アル=トワイジリ氏と他の候補者との違いは、同氏の民間部門での深く長い経験だ。

コーネリア・マイヤー

米中貿易紛争は日に日に激化しているようだ。米中は世界第1位と第2位の経済大国であり、事務局長が米中両国の政府と話ができなければ、貿易に焦点を当てた国際機関は機能しない。サウジアラビアは米国政府と中国政府の両方と良好で開かれた関係を持っており、これは重要なことだ。サウジアラビアはまた、G20のメンバーでもあり、これにより小さな中立国に比べて、さらに重要性を増している。アル=トワイジリ氏は声明で、中立を保つために新しい事務局長が必要だと強調した。

WTOは、特にドーハ・ラウンドに関連した問題を抱えている。WTOは、何をすべきかを見極めるための新たな目を今まさに必要としている。舵取りをする新任者には、経験、構想、外交的な見識、そして優れた管理能力が必要だ。アル=トワイジリ氏の実績は、これら4つの資質をすべて備えていることを示唆している。

  • コーネリア・マイヤー氏は博士号を持つ経済学者で、投資銀行と産業界で30年の経験を持つ。マイヤー氏はビジネスコンサルタント会社Meyer Resourcesの会長兼CEO。Twitter: @MeyerResources
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