
G20 サミットの議長国、サウジアラビアのリーダーシップの下で、エネルギー大臣たちは炭素管理の重要で新たなアプローチ、循環炭素経済(CCE)を承認した。キングアブドラ石油研究センター(KAPSARC)とそのパートナー機関、国際エネルギー機関(IEA)、経済協力開発機構(OECD)、国際再生可能エネルギー機関(IREA)、原子力機関(NEA)、グローバルCCS インスティテュート(GCCS I)が循環炭素経済(CCE)へのガイドを共に執筆した。
CCEは持続可能な開発を支え、可能にするさらに包括的で、弾力的で、地球に優しく、温暖化防止に役立つエネルギーシステムへの総合的・包摂的なアプローチだ。
CCEは利用可能な資源、経済、国の事情に従って、国々にあらゆるテクノロジー、エネルギー形態、エネルギーの軽減機会を活用するように促している。
CCEの発想は、循環経済の概念と、その3つのR、廃棄物の発生抑制(reduce)、再使用(reuse)、再資源化(recycle)を進化・拡大したものだ。循環経済はできるだけ新たな原材料の使用を減らし、できるだけ廃棄物の発生を少なくすることを目指している。これはまた、エネルギーの節約にもなるので、同様にエネルギーの排出量も削減される。しかし、循環経済の焦点は、炭素を管理することではない。
循環経済がどのように機能するのか、ということの好例を自動車が示している。カーシェアリングやライドシェアリングのような新たな所有構造を通して、必要な自動車の台数を減らすことができる。また自動車の耐久性を上げて、長持ちするように設計し、再使用することが可能なので、必要な生産台数を減らすこともできる。自動車の生産台数が減れば、自動車を生産するために必要な材料も減り、製造過程で消費されるエネルギーも減る。最終的に、自動車が再使用できないようになっても、自動車の部品は再資源化できる。再資源化された材料があれば、新たな原材料を使用する必要がなくなり、製造過程で必要とされるエネルギーも少なくなる。
その一方で、CCEは炭素管理に直接焦点を当てている。CCEは循環経済と同じ3Rを適用した上で、4つ目のR、除去(remove)を付け加えている。そもそも私たちは、省エネ対策と並行して、非バイオマス再生可能エネルギー、原子力のような炭素を発生させないエネルギー源を利用することによって、管理しなければならない炭素量を減らすことができる。木、植物、藻類などは、大気中から炭素を吸収することにより、既に炭素を再資源化している。このようなバイオマス資源から得られるバイオエネルギーを使って、このプロセスを活用することができる。二酸化炭素回収技術は、大気中に排出される前の炭素を除去できる。直接空気捕捉技術なら、空気中からでさえ炭素を除去でき、貯留して利用することができる。炭素再使用し、工業用原料に変えて、化学製品、コンクリート、その他の建築用骨材をつくったり、そして、燃料さえつくったりすることができる。
炭素管理に焦点を移すことにより、気候変動の緩和に大きな貢献を果たす炭化水素資源で、CCEはサウジアラビアとその他の国々に1つの方法を提示している。有名なアナリストで、省エネの唱道者、エイモリー・ロビンス氏が、人々はエネルギーを求めているのではなく、冷たい飲み物や暖かいシャワーを求めているとかつて述べていた。同じ発想が気候変動にも当てはまる。人々はバイオエネルギーと炭素利用、あるいは再生可能エネルギーと炭素回収、あるいは気候変動を避けるためのいかなる他の戦略も求めてはいず、安心できる気候と生活の質改善を求めている。こういう訳なので、CCEは気候変動対策目標達成に役立つ可能性のあるあらゆる選択肢を喜んで受け入れている。
石油やガスが生産者と消費者にもたらしている恩恵や、経済的な繁栄を維持しながら、CCEのアプローチは、炭化水素内の炭素管理に焦点を当てている。持続可能な経済的開発・多様性的に貢献しながら、CCEは気候変動への現実的な解決策を提示している。例えば水素は、炭素低減が困難な産業で排出削減の解決策と広く考えられている。サウジアラビアはCO2フリー水素、ブルー水素をつくるための良い立場にある。ブルー水素とは、結果として生じる二酸化炭素(CO2)を回収・貯留して、炭化水素からつくられた水素であり、サウジはこれを実現するために、日本と共同研究をしている。王国はCO2を大量に貯留できる豊かな地質構造を備えている。
サウジアラビアはまた、再生可能エネルギーを使用してつくられたグリーン水素にも最大の投資を行い、世界をけん引している。同国は世界最良の太陽光エネルギーの供給源を幾つか保有し、重要な風力エネルギーの供給源にも恵まれている。
サウジアラビアは直接空気捕捉技術が十分に進歩し、コストが下がれば、この技術を展開していくための理想的な立場にある。サウジの豊富な太陽光エネルギー源がこの技術に動力を供給し、CO2は同国の地下貯留槽に保存できる。
サウジエネルギー効率センター(SEEC)は、重要なエネルギー排出削減を既に達成し、費用効率の高い省エネルギー対策の選択肢を追求しつづける予定だ。サウジアラムコとサウジ基礎産業公社(SABIC)は、CCEのための先進技術の研究開発の草分け的存在となっている。
王国は循環炭素経済で国際指導力を発揮する完璧な立場にあり、現実的な解決策を提供する国家的な規制や財政的な枠組みを確立している途中だ。