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イランは、燃え尽きたくなければ、激情をあおるのをやめよ

2020年11月27日、イランのテヘラン郊外でイランの著名な科学者モフセン・ファクリザデ氏が殺害された襲撃の現場の様子。(ロイター)
2020年11月27日、イランのテヘラン郊外でイランの著名な科学者モフセン・ファクリザデ氏が殺害された襲撃の現場の様子。(ロイター)
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06 Dec 2020 08:12:03 GMT9
06 Dec 2020 08:12:03 GMT9

バリア・アラマディン

イランは戦争をしたいのか

  • イランの代理人らは、イエメンでの紛争をあおり続けながら、ジッダおよびアラビア半島の他の地域へのミサイル攻撃を開始した。
  • イランは、2015年の合意で認められた12倍の量の濃縮ウランを蓄積しており、IAEAは、イランが数百基の新たな高性能遠心分離機を設置する準備をしていると警告している。
  • イラン議会と監督評議会は、高濃縮ウランの製造を加速させ、IAEAの査察を禁止する法案を可決した。
  • 核科学者が暗殺された後、イラン当局者らは西側諸国、GCC、中東地域の標的に報復すると脅している。
  • イランの代理人らは、レバノンでの政府樹立を妨害する一方、シリアとイラクでロケット弾を備蓄し、中東全域に攻撃を行う能力を誇示している。
  • NATOは、イランがバーレーンのテロ組織に武器を密輸出し続けていることを明らかにした。

イランは、ドナルド・トランプ氏が退任する6週間前に全面的な紛争を引き起こすことは避けたいと考えていると言われているが、イランは非常に多くの方面で、戦争を始める活動に多額の投資を行っているため、イランのデフォルトの中東地域での姿勢がどれだけ挑発的であるか判断する力を完全に失っているように見える。イラン政府は、ジッダにロケット弾を発射する一方で、平和を望んでいると主張している。イランは本質的に責任ある行動を取ることができない。

レバノンの国境の両側では、指導者らが部隊に攻撃を命じれば、全ての部隊がどんな状況でも動員される。多くの国にいるイランの代理人らは、要請があれば一致団結して行動する準備ができている。これはぞっとするほど危険な状況だ。判断をほんの少しでも誤れば、我々は戦争に突入する可能性がある。ある西側のベテラン外交官が私に言ったように、「あらゆる方向で狂人を相手にしているときは、あらゆることへの覚悟をしなければならない」

イランによる全世界への反逆は、イランを破産と屈辱の瀬戸際へと追い込み、中東地域のシーア派の人々でさえイランを脅威と見なすようになった。

バリア・アラマディン

ハッサン・ナスララ師は「抵抗の軸は、米国やイスラエルがばかなことをした場合に、倍の対応をする、十分な準備ができていなければならない」と警告している。ヒズボラの指導者である同氏が好戦的に戦争を仕掛けるときには、彼自身がイスラエルの一番の標的になること、そしてイスラエルを挑発することについに成功すれば、イランの代理人や周りの民間人が全滅させられることを同氏は知っており、既にイランに潜伏しているといううわさがある。ベイルートで陰謀や、暗殺するという脅迫に関する報道がされる中、英大使館は外交官の家族を避難させており、米国は、脅威にさらされることを予想して、バグダッドにいる職員の半数を移動させた。

逆説的なことに、バイデン政権が2015年の核合意への復帰に賛成する可能性があるという気配は、さらなる不安定要因になり得る。イスラエルとGCC諸国がイランが核兵器を持つことを望んでいないことは確かだが、バイデン氏は、イランのミサイルの脅威や国境を越えた準軍組織に対処しない合意文書に署名すれば、イランを大胆にし、地域戦争をするための数十億ドルの資金をイランに与えることになるだけだということを認識すべきだ—特に、イランのウラン濃縮活動を制限する重要な条項が、バイデン氏の最初の大統領の任期が終わる頃に失効するときに。

トランプ氏がイランの核施設を標的にすることを議論している中、ネタニヤフ氏は、「大胆な」行動を取るのに、奴隷のように親イスラエルのトランプ政権の最後の数週間より有利な状況は二度と訪れないことを知っている。新たな選挙と、恐らく投獄に直面しているネタニヤフ氏は、さいころの最後の窮余の一振りとして、戦時指導者として自己改革することができるだろうか。私が間違っていることが証明されることを心から願う機会が多い。

我々は、モフセン・ファクリザデ氏殺害に対する、イランの報復の脅威を真剣に受け止めるべきか。イランは、イマード・ムグニヤ氏の殺害に対し「破壊的な対応」をすると脅した。イランは以前、核科学者と軍事目標が攻撃された後、反撃すると脅した。我々は、ガセム・ソレイマニ氏の殺害への対応で世界が震え上がるだろうと約束された。イランは、吠えまくるが、臆病すぎて噛めない犬なのか。

恐らく10人の暗殺者が関与した銃撃戦を見た、と目撃者が報告したにもかかわらず、革命防衛隊が、イランの科学者への襲撃は遠隔操作によって行われたというばかげた主張をして、国内の物笑いの種になった。イランのインターネットは、殺人ロボットや、テスラの自動運転車が異常を起こしたといった、ばかにしたような情報であふれている。イランによる全世界への反逆は、イランを破産と屈辱の瀬戸際へと追い込み、中東地域のシーア派の人々でさえイランを脅威と見なすようになった。

イラク軍がこの法律を実施し、国軍に統合されることになっている民兵組織の旗を撤去するような行動をとれば、イラク軍の上級司令官の手を切り落とす、とカタイブ・ヒズボラの指導者が脅迫する電話の音声が録音された。イランの代理人らは、自分たちはイラクやレバノンよりも大きく、法律は適用されないと考えている。

イスラエルや西側諸国、GCCでは、イランの脅威をなくす唯一の方法は、断固たる軍事行動によるものだ、と多くの有権者が声高に主張している。彼らが正しいかどうかは別にして、これは明らかにイラン政府の存亡に関わる問題だ。イランが自らの死亡証明書に署名することを避けたいと思うなら、そのような攻撃の可能性を阻止するための緊急対策を講じなければならない。

寓話では、リーラはおおかみが自分を食べに来ていると虚偽の主張をしている。最後におおかみがやって来て、彼女をむさぼり食うとき、彼女が叫んでいるのを皆が無視する。ヒズボラやシーア派の指導者らが、イスラエルとの戦争に関する、武力による威嚇を数十年した後、ある日の朝、目を覚ますと、イスラエルの兵器が既に獲物を滅ぼしていることに気付くのだろうか。

最近、中東地域では近隣諸国の和平のために目覚ましい努力が行われており、数十年続いている問題の解決および平和と発展の優先に新たに焦点が当てられている。こうした動きにより、ヒズボラとイランはこれまで以上に孤立している。

UAEやバーレーン、スーダンなどが和平を支持しようとするなら、イランは、自らを守る最善の方法は、絶え間なく紛争を引き起こすことではないことを認識する時ではないか。

  • バリア・アラマディンは、中東と英国で受賞歴のあるジャーナリスト兼ニュースキャスター。『メディア・サービス・シンジケート』の編集者であり、数多くの国家元首にインタビューを行ってきた。
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