
OPECプラスの最近の会合では、毎月日量40万バレルずつの増産計画を3月も維持することで合意した。それにもかかわらず、原油価格は引き続き「逆ざや」の状態にあり、堅調に推移している。
強気相場は今後も続きそうだ。供給不足や石油備蓄量の低下が継続していることに加え、米ロ間の緊張も原油価格を引き上げている。
しかしながら、そうした傾向の転換点の兆しが見え隠れしている。今年の第2四半期になると世界各地の製油所はメンテナンスに入るが、価格を押し上げていた一時的な要因が弱まって価格が下がる可能性がある。そして原油の需要が減る。
冬が終わりに近づくなか、天然ガスの需要が減る。つまり、発電・産業用の割安な代替品としてのディーゼル油や燃料油の需要も減るのだ。春の到来とともに灯油の需要も減る。
消費者心理は現在ネガティブな状態にあり、2011年11月以降で最低レベルとなっている。高い価格で需要が維持されることは期待できない。さらに、米国とイランが市場の想定より早く合意に達する可能性もあり、4月には制裁が徐々に解除されていくかもしれない。
EIA(米国エネルギー情報局)の週報で示された米国の原油と留出油の在庫により、原油価格は堅調に推移している 。需要は引き続き供給を上回るペースで回復しており、精油マージンも回復してきている。米国の製油所は2年前には原油1バレルの収支を合わせるのに苦労していたが、追い風と言える状況だ。ロシア港湾からの原油輸出は2月に日量12万バレル近く減少する見込みだ。
今後数か月間は生産能力の制約がより厳しくなり、市場の懸念が高まる。本格的なリスクのために在庫の需要がすでに高まっている。
インドでは新型コロナの第3波によって在宅時間が増え、消費が低迷。ガソリンやディーゼル油の売上が落ち込んだ。
石油市場は供給途絶や生産の制約、地政学的リスクの影響を避けられないだろうが、2022年は供給が増えるだろう。業界筋も予測している通り、市場に余剰が生じて価格への圧力となる可能性が高い。
米国のシェール原油とコンデンセートの生産量は過去2年間落ち込んでいたが、今年は日量70万バレルまで増えた。
世界のガス市場は、それぞれの地域でかなり異なる様相を呈している。アジアでの供給不安が価格を下支えする一方で、ヨーロッパ市場は価格低下の可能性を見せ始めている。
ヨーロッパはこのところ穏やかな天候に恵まれる一方、米国では極寒の予報が出ており、今後数日間の価格動向を左右しそうだ。
ウクライナでは緊張が高まっており、外交的な解決の糸口は見えない。ロシアからのガス供給が途絶した場合に備え、欧州諸国は液化天然ガスを確保する方法を外交的に探っている。
高い需要に供給が追いついていない現状に鑑み、投機筋は価格上昇を見込んでいる。石油価格が100ドルを突破すると想定している専門家もいるが、それが需要崩壊につながらないという保証はない。
原油価格の高騰によって、コロナで疲弊した経済の回復が遅れてインフレ危機が高まり、需要に間接的な影響を及ぼす可能性がある。通常、価格高騰は家計や企業の予算に打撃を与え、最終的には経済成長を鈍らせる。