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ウクライナ戦争は低迷するバイデン政権に復活の機会を与える

ジョー・バイデン米大統領 (ゲッティイメージズ)
ジョー・バイデン米大統領 (ゲッティイメージズ)
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15 Apr 2022 12:04:44 GMT9
15 Apr 2022 12:04:44 GMT9

2020年の大統領選に出馬したジョー・バイデン氏は、4つの主要テーマを掲げ、外交政策の基本原則を打ち出した。世界中で影響力を強める中国への対抗、自国への再投資、権威主義に打ち勝つ民主主義の重要性の強調、そして崩れ落ちた世界秩序の回復である。しかし、ロシアのウクライナ侵攻は、これらのテーマを過酷な攻撃にさらしている。これはバイデン政権に危険な新章を課し、世界において民主主義を守るという彼の選挙公約が大きく試される状況を作り出した。

米国は現在、ヨーロッパにおける第二次世界大戦以来最悪の戦闘を目撃している。米軍は直接的には関与していないが、この紛争は、米国の力の限界と、国際舞台における米国の地位を回復するために、バイデン陣営が何を保障できるのかを試している。大統領は制裁で脅し、ロシアの策略を暴くことで、ウクライナでの戦争を防ごうとした。

この厳しいシナリオを選択したことにより、バイデン氏はロシアを経済的に罰するための複雑な計画に向かわざるを得なくなった。

調査会社イプソスが3月18日から21日にかけて行った世論調査では、バイデン氏が戦争にうまく対処できていないと考える米国人は52%であった。うまく対処できていると答えたのは36%(民主党員の62%、共和党員は11%のみ)となっている。広範な紛争を誘発することを警戒しているにもかかわらず、大統領はウクライナへの支援に慎重すぎると考えている人は45%と多い(共和党員の60%、民主党員の35%)。政権がこの戦争に対して適切な仕事をしていると考える人は過半数を占め、ロシアとの直接的な軍事衝突を避けたことを理由としたのは58%、ロシアに経済的圧力をかけたことを理由としたのは54%となっている。

政治アナリストの中には、バイデン氏の人気が最低レベルまで低下していることを理由に挙げ、ウクライナ戦争が同氏に利用される可能性があると考える人もいる。また、バイデン氏は外交政策に深い経験を持つ政治家であり、大西洋同盟の定着という米国の伝統的な役割を受け入れている。そのため、同氏はこの戦争において指導的立場に立つにはほぼ唯一無二の存在であり、それが政権の強化につながるという。

つまり、この戦争は米国大統領にとって、政権に懐疑的な論者たちが間違っていることを証明する機会なのである。

バイデン政権は、この戦争を、ドナルド・トランプ前大統領が弱体化させた欧州諸国をはじめとする世界各国との同盟関係の構築や関係強化に活用することができる。例えば、トランプ氏は米国がヨーロッパで長く結んできた同盟関係を蔑ろにした。その点、バイデン氏は欧州、アジア、太平洋地域の同盟国と連携して、ロシアに前例のない金融・輸出制裁を課した。

大西洋を越えた関係の強化は、大統領が宣言した戦略目標のひとつである。ウクライナ危機はロシアと欧州諸国の衝突を招き、米国はNATOの主要な軍事的後ろ盾として重要な支援役を担っている。この戦争は、バイデン氏にとって、米国が世界秩序を回復するという公約を実現するための新たな機会を提供するものである。今後数日から数週間は、世界における米国のリーダーシップを回復することに外交政策の焦点を当てるというバイデン氏の公約が試されることになりそうだ。

ウクライナに対するロシアの軍事的エスカレーションの結果、ヨーロッパが直面している大きな脅威は、安全保障上の懸念を引き起こし、それがヨーロッパ諸国の防衛力強化を促している。これは、米国の欧州向け武器売却の機会が増えることを意味する。また、米国の軍事企業はウクライナの舞台を利用して、新しい技術や武器を宣伝・広報する機会を確保し、世界市場での需要増に貢献することになる。

米国大統領はこの戦争において指導的立場に立つにはほぼ唯一無二の存在であり、それが政権の強化につながる。

マリア・マーロウフ

危機が始まって以来、米国はロシアに対して激しい経済戦争を展開し、それによってロシアを世界から孤立させようとしてきた。その結果、サプライチェーンの分断や商品・製品・サービスの価格高騰など、国際経済の舞台にも影を落とすことになった。

これもまた、結果的には米国製品の販売強化につながるかもしれない。米国は長年、小麦、小麦粉、小麦製品の輸出量において、ロシアに次いで世界第2位の輸出国であった。今年に入ってからは、ヨーロッパへの供給が増えた結果、液化天然ガスの最大輸出国の座を何とか手に入れた。

結論として、たとえ現地で米軍が戦っていなくても、ウクライナ戦争はバイデン政権にとって、外国の紛争で大きな役割を果たす機会であると言える。バイデン氏は、その支持率の低さ、教育構想や気候変動対策などの国内政策のもたつきを考慮し、ウクライナにおける米国の役割に焦点を当てるべきである。11月の中間選挙では、すでに民主党は議会の主導権を失いそうな状況である。彼はこの機会を捉えるべきだろう。

  • マリア・マーロウフ氏はレバノン人のジャーナリスト、ブロードキャスター、出版者、執筆家である。リヨン大学で政治社会学修士号を取得している。ツイッター: @bilarakib
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