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アラブ地域が居住不可能地域になる危険性がある

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17 Apr 2022 11:04:17 GMT9
17 Apr 2022 11:04:17 GMT9

温暖化した地球がアラブ世界の一部を急速に居住不可能な地域に変えてしまうという見通しは、長い間、政治エリートや、他に多くの問題を抱えている各国政府によって軽視され、否定され、嘲笑さえされてきた。

気候変動がこの地域に深刻かつ広範囲な影響を及ぼすという証拠や文献が増えつつあるにもかかわらず、これまでのところ、全体的な対応は遅く、効果も薄く、非常に排他的なものでしかない。

また、一見信頼できそうな気候変動対策計画や関連する政策は、トップダウンの指令に支配されている。計画の見栄えは良いが、意味のある行動、意識の転換、消費の変化など、温暖化に対する緩和の成功の鍵となるものには、常に結びついていない。

このように、政策、法律、教育、社会的な議論すべてにおいて、気候変動に配慮したアジェンダを完全に受け入れ、制度化することには後ろ向きである。そのため、この地域に広がる非公式経済も含め、重要なセクター全体にわたって、複雑な社会的介入を計画、導入する時間は殆どとられていない。

断固とした態度で迅速に行動しなければ、温暖化した地球からの影響は、長年にわたるガバナンスの問題をさらに悪化させ、社会経済的不平等を激化させるだろう。それは新しい破壊を生み出すか、古い確執を再燃させる結果となる。

しかし、それは容易ではない。ほとんどのアラブ諸国政府にとって、地球の気温上昇を産業革命以前の水準と比べて1.5℃以内に抑えるという、共通の目標のための行動をとることは、優先順位の低い課題である。

この地域の一部はいまだパンデミックの影響下にあると同時に、腐敗と縁故主義が蔓延している。偏執的で、特定の思想に凝り固まった支配層エリートによる、非自由主義への明らかな後退と民主化の縮小が、政治不安を煽っている。また、少なくとも3つの不安定な国々では、長引く紛争が何年にもわたって人々の生活と暮らしを破壊し続けている。それは、迅速な復興、難民問題の解決、安定した戦後社会への平和的移行の見通しを暗くしている。

さらに、特にこの地域の若者や女性における高い失業率は、格差を拡大し、より良い医療、教育、社会的地位向上の機会へのアクセスを低下させている。それだけではなく、政府が危機を管理したり、非効率で肥大化した官僚機構を通じてほぼ無限の苦境を乗り切ろうとしたりする試みを複雑にしている。

しかし、アラブ世界が今後直面する課題は、特に、気候変動の影響を考慮した場合、これだけではない。

断固とした態度で行動しなければ、新しい破壊を生み出すか、古い確執を再燃させるだろう。

ハフェド・アル=グウェル

国連の気候変動に関する政府間パネルが最近発表した驚くべき報告書がある。世界が断固として温室効果ガスの排出削減に取り組まなければ、各国の誓約に基づく予測排出量は、2030年までに国際目標の1.5℃を超えて上昇、今世紀末には4℃近くまで上昇すると結論づけている。

世界の他の地域とは異なり、アラブ地域ではわずかな気温上昇でも、温暖化による砂漠化した環境の増幅により熱波が強まる。すでに、同地域では2050年までに気温が少なくとも4℃上昇すると予想されている。そうなれば熱波がより頻繁に発生し、地域の一部では居住性や人間の適応性の閾値を超える可能性がある。

世界で最も水不足に悩む地域で気温が上昇するということは、気候変動に関する無策、人口の急激な増加、無駄な消費、不十分な統治の結果、アラブ世界の一部が事実上、水資源の枯渇に陥る最初の地域のひとつとなることを意味する。同地域の水資源は、特に農業灌漑の需要が大きい国々では、降水量で補えない速度で減少しており、長期的な食糧安全保障も脅かされている。

さらに悪いことに、地球が高温になるにつれ、東部地中海沿岸地域の一部が降水量の減少により最悪の干ばつに見舞われると予測されている。この規模では、地中海のような大きな水域に近いということは助けにならない。特にヨルダンでは、今後数十年の間に少なくとも30パーセントの降水量減少が予想されている。

その結果、2025年までにアラブ世界の9000万人近い住民がさまざまなレベルの水ストレスに悩まされることになる。この数は、世界が排出量の目標値を突破してしまった場合、さらに急増すると予想される。これは、地域の生産性、公衆衛生、砂漠化の進行、難民の急増など、さまざまな影響を引き起こす可能性がある。水不足、干ばつ、急速に減少する水資源を獲得するための闘いは、地域内に激しい紛争を引き起こす原因にもなりかねない。

2030年から2050年にかけて、地球温暖化の影響がさらに現実味を帯びてくる。気候変動そのものが紛争の原因となるかどうかは、アナリストの間では疑問視する声もある。しかし、記録的な干ばつ、猛暑、人口動態の圧迫による食糧と水に対する不安の悪化は、アラブ諸国の優先順位を劇的に変化させる可能性がある。特に、希少かつ、国境を越えた水資源の獲得競争が激化すれば、直接的または代理的な紛争発生の可能性は高まる。

中東・北アフリカ地域の沿岸地域は、海面上昇の脅威や、激しい嵐の後の突然の大雨による鉄砲水のリスクにもさらされている。2100年には世界の平均海面が1.5メートル上昇すると予測されている。その結果、帯水層や井戸における塩害、農業への打撃、臨海部の都市の居住不能化など、さまざまな影響が予想される。

海面上昇は、すでにヨーロッパからサハラ以南のアフリカ諸国への移住者が急増している北アフリカ諸国にとって、特に懸念事項である。ベンガジ、アレキサンドリア、アルジェといった都市が水位上昇によって侵食されれば、住民は他国に移動するしかない。リビアにおけるカダフィ政権後の問題、エジプトの主要水源であるナイル川上流をめぐる緊張状態、アルジェリアの政情不安などにすでに問題を抱えている各国政府にとって、新たな難問が生じることになるだろう。

このような危機的状況を踏まえ、アラブ各国の政府は、湾岸諸国を中心に、自然エネルギーへの転換やその他のグリーンイノベーションを通じて、地球温暖化を緩和する役割を果たすことを公約としている。

しかし、まだやるべきことは多い。理想的な誓約、大規模なプロジェクト、喝采を受けるフォーラム。温室効果ガスの排出を評価できるレベルまで大幅に削減し、最も深刻な影響を可能な限り遅らせるための世界的努力を結集させるのには、これらのことだけでは不十分だ。

アラブ地域の指導者、政府、政策立案者は、最も弱い立場にある人々――貧困層、農村部や沿岸部の住民、女性、移民や難民――の保護を優先し、気候変動に対する取り組みに政治的、経済的な包摂性(一体性)を持たせ、それがもたらす問題に耐え、適応する社会の能力を強化する必要がある。

アラブ地域は、各国の成長、競争力、ガバナンス、長期的安定性を妨げない方法で、気候変動への適応に関してより良い、より持続可能な成果を確保する必要がある。そのためには、トップダウン的、排除的な介入から離れ、より大きな包摂性を受け入れる必要がある。

言い換えれば、気候変動への緊急介入の必要性は、支配的エリートの自己強化のための道具となってはならないということだ。それは、すでに肥大化した公共部門を維持し、国内および国家間の不平等を拡大させることになる。

アラブ地域は、世界規模の気候変動による最初の犠牲者となることを避けなければならない。そのためには、迫り来る危機に対し、単に資金――借り物であれ何であれ――を投入するのではなく、権限を与えられた市民、関与する市民社会、地域機関や自治体を含む全体的な政策を実施するための最初の一歩を踏み出さなければならない。

  • ハフェド・アル=グウェル氏は、ジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院の外交政策研究所のシニアフェローである。Twitter: @HafedAlGhwell
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