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エルドアン氏の地中海での作戦はどのように1世紀前に起源があると言えるのか。

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29 Dec 2019 06:12:26 GMT9
29 Dec 2019 06:12:26 GMT9

1世紀と少し前、サイクス・ピコ協定は、旧オスマン帝国における欧州列強の影響地域を規定するものだった。

第一次世界大戦の終わりには、さらに協定が結ばれ、新たな国境が描かれ、現在中東として知られる地域における欧米諸国の地政学的・地理経済的利害を主張するものになった。

当時は、オットマン帝国のたそがれであり、ヨーロッパの影響の「絶頂期」であり、新たに自信を得た米国の夜明けであった。当時なされた決定は今日未だに鳴り響いている。

この地域は、安全にはなっていない。いわゆる「アラブの春」は、混乱と内戦に形を変えた。今世紀だけでも、イラク戦争、シリア内戦、リビアの崩壊と破綻国家化、イスラム国の盛衰(どのように再浮上してくるかはまだ分からない)があった。一方、無数のイスラム教徒のテロリスト・グループがマリからイラクまで影響を及ぼしている。

これが、地中海東部におけるさまざまな勢力の作戦を理解するために必要な歴史的背景である。

トルコは、ロシアのS-400地対空防衛システムの購入と北シリアへの軍事侵攻をめぐり、米国およびその他のNATO同盟国との間で対立している。EUはトルコの人権の歴史と報道の自由の欠如を批判しているが、欧州はシリアなどから殺到する難民を食い止めるのにトルコを必要としている。

トルコはすでに360万人のシリア難民を収容しており、低迷する経済には耐え難い負担となっている。アサド政権とロシアの空軍力によるイドリブでの最新の攻勢から20万人以上が避難したことから、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、ギリシャとの国境を再び開くと脅しをかけた-このことにドイツのアンジェラ・メルケル首相は動揺し来月アンカラに出向く計画となっている。

エルドアン氏は、国際的に認められたトリポリのフェイェズ・アル・サラジ氏のリビア政府を支援するために、軍を派遣する可能性があると述べた。このことは、ライバル・リーダーであるトブルクのハリーファ・ハフタ氏を支援するロシア、エジプトおよび湾岸数ヵ国に対して、トルコが真向から対立することになる。米国と欧州は、誰も守ってはいないようではあるが現在も国連の武器禁輸措置の下にあるリビアを非常に不安な思いで見ている。

エルドアン氏は明らかに手が一杯であるのにも関わらず、リビアへ軍事活動を広げる思いにさせたきっかけは何だったのだろうか。答えは天然資源と難民である。

天然ガスが発見されたことで、地中海東部の海底が貴重な不動産となったのである。キプロス、ギリシャ、イスラエル、エジプトの間の新たな同盟が、この埋蔵資源を開発しようとしており、来年初めにはパイプラインに関する合意がなされる見込である。アンカラはこれを挑発と捉えており、石油やガスが同様に豊富な地中海の国と連携することが対抗策になると見なしているのかもしれない。

トルコのリビアに対する動きは、地中海東部の状態をより明確にもしないし、より安全にもしないものであった。

コーネリア・メイヤー

さらに、地中海南部は、アフリカからの難民にとっては欧州への第一歩であり、 エルドアン氏はその流れに影響を与え、同時に欧州の弱さとリビア政策の不統一を露呈することにより自分の立場を強化する機会と見ている; ベルリンで平和会議を開催する案は、計画段階を超えて進展していない。大部分の欧州諸国は、明確な同盟関係を宣言することを避けているが、リビアの旧宗主国であるイタリアはアル・サラジ氏に傾いている一方、フランスのエマニュエル・マクロン大統領はハフタ氏の方を選んでいる。

ロシアと米国には独自の利害関係があるが、シリアやリビアでいずれの側が支援しても、状況は危険である。ドイツ連邦議会の外交委員会委員長のノルベルト・レトゲン氏は、シリアを、多数の国と国以外の参加者が列強とともに関与した第一次世界大戦直前のバルカン半島と比較した。彼は、一つの間違った措置が新たなグローバル紛争の原因になる可能性があることを恐れている。これは悲観論側に外れているかもしれないが、私たちは一つの軍事的誤りが取り換えしのつかないほど拡大していく可能性を過小評価するべきではない。その文脈で考えるとトルコのリビアに対する動きは、地中海東部の状態をより明確にもしないし、より安全にもしないものであった。

必要なのは外交であり、戦争で荒廃した地域を再建するための取り組みであり、軍事的な関与ではない。国家元首は、お互いの地政学的立場を気に掛けるが、民間人は依然として計り知れない苦しみにさらされ続けるのである。

サイクス氏とピコ氏には、大いに学ぶところがある。その後1世紀が経過しており、私たちはより啓発され、対立の新たな機会ではなく解決策を探すべきである。新しい10年の夜明けに際し、私たちは希望をさらには夢をもつことを許可されるべきである。

* コーニーリア・マイヤーさんは、ビジネスコンサルタント、マクロ経済学者でありエネルギーの専門家でもある。

ツイッター@MeyerResources

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