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バイデン氏は来月の中東訪問で新しい中東を目にするだろう

ワシントンD.C.にあるホワイトハウスのサウスローンでマリーンワンから降りるジョー・バイデン氏。(2022年6月14日撮影)(AFP)
ワシントンD.C.にあるホワイトハウスのサウスローンでマリーンワンから降りるジョー・バイデン氏。(2022年6月14日撮影)(AFP)
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16 Jun 2022 11:06:35 GMT9
16 Jun 2022 11:06:35 GMT9

UAEとイスラエルの経済関係は、2020年にアブラハム合意が締結されてから大きく発展した。そして先月、両国は自由貿易協定を締結した。UAEによる数十年に及ぶボイコットの後、両国の関係の新たな章が始まった。

この包括的経済連携協定の目標は二国間の貿易額を、現在の年間8億8500万ドルから今後5年間で100億ドル以上に増やすことだ。この目標が達成されれば、イスラエルは中東におけるUAEの最大の貿易相手国の一つになる。2020~21年の数字に基づけば、イスラエルとの貿易額は、UAEと主要貿易相手国の二国間の貿易額を上回ることになる。パキスタンとの貿易額は80億ドル、エジプトとは36億ドルだ。

しかし、これは単なるビジネス上の取引ではなく、新しい中東の姿だ。それは貿易中心で、外交重視で、あまり対立せず、信頼し合ったパートナーをより深く詮索する。中東では、米国が一歩退いたことで、リーダーシップの危機が訪れると予想されている。

中東の宿敵たちは関わり合い、握手し、交渉し、ビジネスを行っている。トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領のUAE、サウジアラビア訪問から、イラン、UAEの首脳レベルの安全保障・貿易会議、そして湾岸諸国の和解やエジプト、トルコの関係改善へと進み、さらにはサウジとイランの国交正常化交渉へ――ここ10年、非常に敵対しているように見えた中東が、徐々に落ち着いてきている。

バイデン政権が撤退を決め、中東にあまり重点を置かなくなったため、これらの国々は自分たちでその穴を埋めようと歩み寄った。混乱した米国のアフガン撤退は、中東諸国が直面しているリーダーシップの危機を短くまとめたものであり、ロシアや中国といった他の超大国との政治的均衡がかつてないほど必要であることを強く認識させた。

サウジアラビアとUAEはロシア・ウクライナ危機に対して、流血の終結を支持し、両当事国に国際法を順守し、国際法の原則に従うよう求めてはいるが、どちらかというと中立的な立場を取っている。米国は、より強硬な態度を取ることを望んでいるが、中東の同盟国は自国や中東全体に対する、より強固な安全保障と関与を望んでいる。

昨年12月、UAEは、F-35戦闘機を最大50機購入するための米国との協議を中断したと発表した。トランプ政権はこの取引を承認したが、ジョー・バイデン大統領が進展を一時的に行き詰まらせていた。取引の中断を決定する1週間前に、UAEはフランスと、戦闘機ラファール80機とヘリコプター、カラカル12機を購入することで合意していた。

2カ月後、UAEは、武装組織フーシ派の攻撃を何度か受けながら、パリと共同防衛協定を結んだことを発表した。「失敗に終わったテロ行為に立ち向かう」のが目的だが、米国の地域的衰退を示すことにもなった。フランスのフロランス・パルリ国防相は、フランスが軍事的支援を行い、戦略的パートナーが自国の領空を、あらゆる企てられた攻撃から守るのを援助するだろうと述べた。

「課題が、頼られる立場の本質を明らかにしている。こうした状況の下、兄弟や友人という立場にあることに加えて、UAEを支援することで、フランスが優位な立場にあることがはっきりする」と、UAE大統領の外交顧問であるアンワル・ガルガーシュ氏はツイッターに投稿した。「いつものように、UAEは強固な防衛力と幅広い世界的連帯に基づき、テロリストの長続きしない挑戦に賢明に対処している」

そして、米国のインフレ率が40年ぶりの高水準になり、原油価格が1バレル=120ドルに上昇する中、バイデン氏は来月サウジアラビアを訪問し、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談し、湾岸協力会議の会合に参加する予定だ。バイデン氏の狙いは、湾岸諸国の指導者らを説得して原油を増産させ、(何よりもまず)国内の、そして世界の経済的ダメージを軽減することだ。おそらく同氏は、中東を放棄して判断力のなさが露呈したことにようやく気づいたのだろう。

世界的なインフレ、ロシア・ウクライナ紛争、アフガンからの撤退、イランとの核交渉、そして中東への関与の欠如、これらはすべて、国際秩序における米国の覇権が現政権中に衰退していることを浮き彫りにしている。

中東の宿敵たちは関わり合い、握手し、交渉し、ビジネスを行っている。

イブラヒム・シュクララ

そう、新しい中東は、米国を含む新旧のパートナーや他の主要なグローバルプレーヤーと協調して道筋を固めつつある。しかし米国は大きな隔たりを残した。その隔たりにおいて、関係者の利益が重なる場合には、他の国にも役割を果たす権利がある。

ポスト・アメリカの世界になったように見えるが、国際関係の文脈における真の課題は、少なくとも中東においては、信用性を中心にして動いている。世界の石油生産の約30パーセントを支配し、宗教的にも卓越し、政治的・経済的影響力も大きいこの地域にとって、新中東秩序は常に必然だった。

  • イブラヒム・シュクララ氏は、ドバイを拠点とするUAEのジャーナリスト。多くの国家元首や有名政治家・スポーツ選手を取材してきた。米ニューヨーク大学でメディア、文化、コミュニケーションの修士号を取得。Twitter: @shukralla
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