人道的災害が発生したような危機的状況では、人命を救い、同胞を助けることの重要性が政治よりも優先されなければならない。トルコとシリアを襲った最近の地震は、死や破壊、家を失うなど、何千人もの同胞に影響を与えている。しかし、トルコには世界中から援助が寄せられている一方で、シリアに支援を送っている国はほんの一握りに過ぎない。

国連によると、今回の地震で100万人以上のシリア人が被災し、数十万人が援助や支援を必要としているという。また、インフラや住宅への被害が広範囲に及び、被災者が食料、水、医療品などの必需品を入手することがさらに困難になっている。

地震に加えて、シリアの人道危機は、長年の紛争と、指導部が自国民の基本的人権を繰り返し侵害したために国際社会がダマスカスに課した経済制裁によって悪化している。シリア政府とその支持者を対象としたこれらの制裁は、援助団体や外国政府による被災者への支援を困難にしている。

シリアに対する制裁、特にトランプ時代に米国が成立させたシーザー法は、壊滅的な影響を及ぼしてきた。しかし、この制裁で最も高い代償を払ってきたのは、政権ではなく国民であった。多くの国の無策と躊躇のために、シリアの人々は再び高い代償を払おうとしている。

同胞であるシリア人に対する過酷な扱いを理由にアサド政権に課された制裁には、人道支援の例外規定があるが、ほとんどの国がそのような支援を控えている。これらの国は、この例外を知らないか、あるいは国際的な制裁に違反するのではないかという大げさな懸念から、シリア政府への協力を避けているのだ。

多くの国の不作為と躊躇のために、シリア国民は再び高い代償を払うことになる。

ダウド・クタブ

シリアは全面的にボイコットされている状態だが、いくつかの国、主にその近隣諸国は、シリアの人々に援助を提供してきた。しかし、本稿執筆時点では、欧米諸国で直接支援を申し出た国は1つもない。

支援を提供している国は以下の通りだが、その他の国々も支援している。サウジアラビアは、被災地に医療・人道支援物資を空輸し、自国の支援組織を通じて救援活動を継続すると約束した。ヨルダンは、救援隊と医療物資を送り、必要に応じて救援活動を継続すると約束した。緊急チームと援助物資を送ったロシア。捜索・救助隊や支援物資を送ったトルコ、医療・人道支援を送ったイラン、救援活動への財政支援を約束したカタール。大量の医療物資を積んだ軍用輸送機5機をトルコとシリアに送ったエジプト、約115トンの食糧や医療物資、テントや毛布を積んだ複数の飛行機を送ったアルジェリアなどだ。

これらの国に加え、国連、赤十字国際委員会、さまざまな非政府組織など、いくつかの国際機関も支援を提供している。これらの組織は、食料、水、避難所、医療品などの必要な物資を地震の被災者に提供した。また、モスクや教会などの宗教団体や、ヨルダン、パレスチナなどの民間慈善団体も、被災したシリア人のために募金活動を開始した。

これらの国や組織が提供する支援は、最も支援を必要とする人々に確実に届くようアサド政権と調整がとれている点に注目すべきだろう。この災害の後、すべての関係者は協力し合うことで、被災者に必要な支援と援助が行き渡ることを期待している。

制裁がもたらす課題にもかかわらず、国際社会と援助団体は、この人道的危機に対処するためにシリア政府と緊密に協力しなければならない。そのためには、援助が効率的かつ効果的に分配され、必要な人々が必要な支援と援助を受けられるようにするための協調的な取り組みが必要だ。

シーザー法の制裁は、アサド政権に紛争を終結させ、人権を尊重するよう圧力をかけることを目的としていることに留意することが重要だ。しかし、6日の地震を受け、これらの制裁によって、国際社会や援助団体が被災者に支援や援助を提供する能力が損なわれないようにすることが不可欠である。バイデン政権は、アサド政権以上にシリア国民を苦しめているこの法律を見直す必要がある。

シリアの現状は、それによって引き起こされた人道的危機に対処するために、シリア政府との協力が重要であることを浮き彫りにしている。米国の制裁や継続している紛争がもたらす課題にもかかわらず、すべての当事者が協力して、困っている人々に支援と援助を提供することが極めて重要である。シリアの人々の幸福が最優先されるべきだ。この災害を前にして、政治的な相違を脇に置くときが来たのだ。

　　ダウド・クタブ氏はエルサレム出身のパレスチナ人ジャーナリスト。プリンストン大学元フェリス教授（ジャーナリズム）。ツイッター：@daoudkuttab