
中東における地政学的緊張の指標としての石油の重要性は失われたのかもしれない。しかし、ここ数週間で石油は世界経済の指標としての役割を証明した。
原油相場は、1月の高値から14.5ドル以上下落している。月曜早朝のブレント市場での取引では、1バレル当たり53.44ドルとなった。米国の指標であるWTIは、一時的とはいえ、日曜に心理的に重要な指標とされる1バレルあたり50ドルに達しなかった。
この情勢の悪化はコロナウイルスによるものだ。BPによると中国は世界第2位の石油消費国であり、2018年には世界消費の約14%を占めた。
中国の石油精製業界幹部らは、2月の需要が日量350万バレル(世界需要の約3%)急減し、価格に打撃を与える可能性があると懸念している。リビアでの生産量が1月に国内の地政学的圧力のために激減したにもかかわらず、悲観的な状況に陥っている。
最近の動きは、とりわけ中国がグローバル・サプライチェーンの中核であり、世界経済の中心であることを示している。コロナウイルスの流行により旧正月前後の工場閉鎖期間は延長された。一部の工場が操業を開始したにもかかわらず、多くの工場が閉鎖されたままだ。これは中国の国内総生産に影響を与えるだけでなく、すべての大陸の製造部門全体に連鎖反応をもたらしている。ヒュンダイはスペアパーツが国境を越えて入ってこなくなったため、工場を閉鎖しなければならなかった。今後、アジア、ヨーロッパ、アメリカの他の多くの企業も影響を受けることが予想される。
コロナウイルスは、中国がいかに世界経済の中心的な位置を占めているか、関連し合うサプライチェーンがどのようになっているか、そしてエネルギーの移行に注目が集まっているにもかかわらず、石油が依然として商品としていかに重要であるかを浮き彫りにした。
コーネリア・マイヤー
たとえば、中国は部品の製造とiPhoneの組み立てに関して重要な位置を占めている。貿易が停止すると、輸送の主要燃料、すなわち石油の需要は減少する。これは、複数の経済圏の生産部門への連鎖反応が拡大し、主要な経済ハブへの発着便が切断された場合にさらに悪化する。
サウジアラビアとOPEC(石油輸出国機構)は、OPECプラス(OPEC加盟国とロシア率いる非OPEC加盟国10カ国からなる)の生産枠を、昨年12月に行われた前回の会合での日量170万バレルから、さらに削減することを望んでいた。先週、3日間にわたる技術会議が開かれ、6月までさらに60万バレル削減することが提案された。石油減産には省議同意が必要で、正式な閣僚会議でしか決定できない。サウジアラビアは、3月5日と6日に予定されている次回のOPECプラス総会の前倒しを強く望んでいたが、ロシアはその緊急性を見いださず、原油価格をサポートする行動をほとんど起こさなかった。
3月に閣僚会合が行われる際、状況は進んでいるはずだ。そのときの進行状態によって、どの程度の追加減産がどのくらいの期間必要かが決まるだろう。必要最小限の量は日量50万バレルだと予想される。一歩先んじるには、大抵の場合かなり思い切った手段をとる必要がある。それまでにウイルスがどれだけ拡大するか、そして世界のサプライチェーン、航空、観光にどのような影響を与えるかに大きく左右されるだろう。
コロナウイルスは、中国がいかに世界経済の中心的な位置を占めているか、関連し合うサプライチェーンがどのようになっているか、そしてエネルギーの移行に注目が集まっているにもかかわらず、石油が依然として商品としていかに重要であるかを浮き彫りにした。
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