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サウジはロールス・ロイスにとってナンバーワンの市場になり得る、CEO語る

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27 Dec 2021 03:12:58 GMT9
27 Dec 2021 03:12:58 GMT9
  • 女性や若者が同ブランドに惹かれるようになったことで、サウジアラビアはロールス・ロイスにとって中東地域のトップ市場になりつつある
  • CEOのトルステン・ミュラー・エトヴェシュ氏は、超高級ブランドの電気自動車への移行において、ロールス・ロイスは「フロントランナー」であると述べた

フランク・ケイン

ドバイ:サウジアラビアで進行中の大きな変化により、サウジアラビアはロールス・ロイス車の中東におけるトップ市場になる可能性があると、このエリート自動車会社のCEO、トルステン・ミュラー・エトヴェシュ氏がアラブニュースに語った。

「サウジは明らかに大きな市場です。今は市場も開放され、成長も続いているので、今後数年間でサウジからはさらに多くの可能性が出てくると考えています」と彼は語り、サウジの女性に対し、初めて運転免許証を取得、運転する許可を与えた2017年の国王令を挙げた。

「今サウジアラビアでは、当社の自動車に女性ドライバーが乗り始めています。これが、数年後にはこの国が巨大で素晴らしい市場であると言われるかもしれない理由です。結果は誰にもわかりません。ポテンシャル的には可能ですが、他の要素も影響するでしょう」と付け加えた。

ミュラー・エトヴェシュ氏は、中東や世界のオピニオンリーダーへのビデオインタビューシリーズ「フランクリー・スピーキング」で、この予測を語った。

インタビューの中で、英国デザイン、ドイツ資本の高級車メーカーであるロールス・ロイスのボスは、完全な電気自動車化に向けたロードマップ、新型コロナウイルスパンデミックが世界や地域の販売に与える影響、原油価格の上昇が高級車の販売に与える影響などに触れた。

また、この地域のユーザーが好む贅沢なカスタム装備についても語った。

115年前に英国で設立され、2003年からはドイツのBMW社が所有するロールス・ロイスのエンブレムは、カリフォルニアから上海まで、自動車の究極のステータス・シンボルであるが、特にアラブのバイヤーには人気がある。

現在、世界の交通市場では、電気自動車の販売が急増しており、ロールス・ロイスをはじめとするガソリンエンジン車メーカーにも影響が及んでいる。しかし、ロールス・ロイスは超高級車市場でも電動化をリードしていると、ミュラー・エトヴェシュ氏は語る。

2016年2月18日、ヨルダンのアンマンにあるキング・アブドッラー2世自動車博物館の展示会で、ヴィンテージのロールス・ロイスが展示されている。(シャッターストック)

「私たちはフロントランナーと言ってもいいでしょう。つまり私たちは自分たちのビジネスを、いわゆる『普通の』自動車ビジネスとは比較していません。私たちは高級感で勝負しています。そして、皆さんもご存知かもしれませんが、世界で一番初めに『超高級品』のセグメントで自動車を作り出していたのは、私たちです」。

ロールス・ロイス初の電気自動車『スペクター』は、2023年から中東で発売される。ミュラー・エトヴェシュ氏は、「スペクターは、驚くべき、そして注目すべきロールス・ロイスになると言えます」と語る。「時間をかけた部分、それは第一に、ロールス・ロイスでなければならない、という部分です。世界中のお客様にラグジュアリーな体験を提供するためには妥協は許されません。第二に、明らかなことですが、電気自動車であるということです」

『スペクター』は、自動車評論家の間では、基本オプションレベルの車両で35万ドル程度になり、ロールス・ロイスの伝統的な強みを活かしたものになると予測されている。「静粛性にも優れています。私たちは大きなエンジン音や排気音で自分たちを定義しているわけではありません。だからこそ、この電気自動車は私たちのブランドイメージに完全にマッチしていると考えています」

ロールス・ロイスは、初の電気自動車を2023年までに実現すると発表している。(提供)

しかし、ロールス・ロイスが電気自動車市場に参入する理由には、商業的・規制的な必要性もある。「世界的に見ても、数年後には電気自動車でなければ市街地に入れなくなるような規制が出てくるかもしれません。それはもちろん、私たちのブランドにとって素晴らしいことではありません」

イーロン・マスク氏のテスラは、これまで電気自動車への移行の中で最も注目を集めてきた。今では、すべての大きな市場で多くの伝統的な自動車会社が「EV」の流行に乗っている。しかし、ミュラー・エトヴェシュ氏は、ロールス・ロイスにはこの激戦の市場でも戦える伝統的な強みがあると自信を持っている。

「ロールス・ロイスは、エンジンだけで自らを定義したことはありません。それは我々ではなく、他のブランドが行うことです。私たちは、自分たちを究極のラグジュアリーと定義しました。最高の素材、そして最高のクラフトマンシップです。この美しい傑作を作るには、少なくとも1,000時間はかかります」

同氏は、電気自動車への移行はロールス・ロイスの顧客層の変化にも合致すると捉えている。「これから少しずつトレンドが見えてくると思います。特に若い人たちは、電気推進にとても魅力を感じています。また、私たちが学んだことは、一度電気自動車に乗ってしまうと、おそらく内燃機関の自動車には戻れないということです」

かつてロールス・ロイスの顧客は、圧倒的に男性が多く、成功したビジネスエグゼクティブや著名人、さらには王族が多かった。しかし、今ではその傾向が変わりつつあるという。

「私が入社したときも、そして私がこの職務に就いてから12年が経とうとしていますが、ロールス・ロイスのお客様の平均年齢は約56歳でした。それが今では43歳まで下がっています。私たちは、ブランドを大幅に刷新、再構築し、若返らせました。今では世界中に若いお客様がいらっしゃいます」

特に中東では、ロールス・ロイスに乗りたいという女性が増えている。「私が入社したとき、顧客としての女性比率は世界で1%でした。それが今では世界平均で約15%になり、特に中東ではさらに増えると思います。女性ドライバーの数がかなり多いことから、おそらく中東地域は20%前後の割合でかなりのシェアを占めていると考えています」

ロールス・ロイス社の大きな収益源は、富裕層の顧客が追加料金を支払って車に独自の機能を持たせるカスタマイズの伝統、すなわち同社が「ビスポーク」と呼ぶものであるとされてきた。

時にはロールス・ロイスの伝統を重んじる人々が恐れを抱くような、派手なカラーリングや奇抜なアクセサリーが採用されることもある。しかし、ミュラー・エトヴェシュ氏は、自分自身やロールス・ロイスに、個人の趣味を決定する権利があるとは考えていない。

「例えば、鮮やかなオレンジ色の外装と黄色の内装を想像してみてください。ロンドンの中心部では少し奇妙に見えるかもしれませんが、ここの明るい太陽の下では見事に映えるでしょう。こういったことを常に念頭に置いておく必要があると思います。私が一番したくないことは、私のヨーロッパ的なセンスで、海外のクライアントを判断することです。私たちはロールス・ロイスのカスタマイズセンスを取り締まる警察ではありませんからね」

あるときには、富裕層の顧客から豪華なアクセサリーのリクエストがあったという。ダッシュボードに冷蔵機能を持ったシガーボックスを付けてほしいというものであったが、すこし行き過ぎていたという。

「あまりにも突飛すぎて断ってしまいましたが、それはトップパネルにヒュミドール(保湿機能付の葉巻の保存箱)を設置したいというものでした。残念ながら技術的に規制当局の承認を得られないので不可能でした」

『カリナン』は、アラビアの砂漠を含む世界で最も過酷な環境でテストされている。(写真提供:rolls-roycemotorcars.com)

ロールス・ロイスは、当時英国の首相であったウィンストン・チャーチル卿が戦後、サウジアラビアのアブドゥルアジーズ国王に『ファントム』のカスタムモデルを贈ったことから、アラブ世界では古くから特別な存在となっている。

新型コロナウイルスパンデミックの初期には、英国のグッドウッド工場が2カ月間生産ラインを停止し、納品が滞ったため、ロールス・ロイスの販売が激減した。

しかし、それはある現象の前触れに過ぎなかった。回復の兆しが見えてくると、中東をはじめとする世界各地で販売が急加速したのだ。ロックダウンという最初のショックの後、すべての高級品の販売が伸びるという世界的な現象が同社にも起きたのである。ミュラー・エトヴェシュ氏は、この現象について興味深い見解を持っている。

「多くのお客様が『自分も突然死ぬこともある』と実感したと言っていました。それを間近で見たことがある方も多いと思います。それを見て『人生は一度きり、先延ばしにせずに今を楽しもう』と思ったのでしょう」

中東地域では、ロールス・ロイスの長年のフラッグシップモデルであるロールス・ロイス・ファントムVIII』の新型(8代目)の需要が高い。(シャッターストック)

ロールス・ロイスが初めて高級SUV市場に参入した『カリナン』は、『ブラックバッジ・ゴースト』と並び、中東地域で特に高い需要がある。

この地域ではこれまで同様、石油市場の動向が経済の強さ、そしてロールス・ロイスの販売を左右している。

「原油価格は経済の健全性を示す指標であり、私たちのビジネスは経済の動向に大きく依存しています」とミュラー・エトヴェシュ氏は言う。「景気が良くなれば、私たちのビジネスも良くなるのです」

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