
ディーマ・A・クデイル
ジェッダ:細い針、糸、アイーダ布、そして作り手の創造力によって絵画のような数百もの作品を作ることができる。ジェッダのアラー・アル・サワフさんもそうしたクロスステッチアーティストの一人だ。彼女は専業主婦で、クロスステッチを作り続けて20年以上になる。
この刺繍手法は彼女の家族にとってなじみ深いもので、祖母の影響を受けてわずか10歳でこれを趣味にすることに決めた。
「私が10歳のとき、よくオーストリア人の祖母フィニの隣にいたことがきっかけです。祖母は編み物、かぎ針編み、刺繍などさまざまな手芸を行っていました。私は隣でわくわくしながら、祖母が編むところを見ていました」とアル・サワフさんはアラブニュースに語った。
「祖母の手ほどきで初めて刺繍や編み物をしました。祖母は間違ったところを修正してくれました。私が針や糸に愛着を持つ一番の理由は祖母です」
当時を思い出しながら、彼女はサウジアラビアに刺繍道具を販売する店がなく、海外滞在中に偶然チャート付きのクロスステッチキットを購入したと語った。それがきっかけで、アル・サワフさんは自分の分身ともいえる趣味ができたのだ。
「オーストリアや英国、米国から道具を購入していました。ある夏、ニューヨークにいたときに刺繍キットを買いに行きました。刺繍のキットだと思ったものを購入し、中は開けずにジェッダに持ち帰りました。帰ってから開けてみると、何がどうなっているのかわかりませんでした。説明書を注意深くすべて読み、初めてのステッチをやってみて大好きになりました」
「クロスステッチは、途中で自分が何を縫っているのかわからないところがすごく好きです。遠くから見て初めて全体像がわかるんです。自分の手で縫っただけで、こんなに美しいものができることに、いつも胸がドキドキします」
@lulusstitchesがアル・サワフさんのインスタグラムとTikTokのアカウントだ。彼女はSNS、特にインスタグラムから大きなサポートを受けているという。
「そこに私のコミュニティを見つけました。1つの大きなコミュニティで、そこにいるのはほとんどが海外の人たちです。そのコミュニティからたくさんのことを学び、多くのサポートを得ました」
アル・サワフさんのお気に入りの作品は「Al-Shaikhah」。制作に約78色を使い、2年かけて完成した。伝統的なベドウィンの衣装を着た女性の肖像で、イメージ自体は別のアーティストの制作(インスタグラム@ahmadart86)したものだ。
「気づいたら彼女をステッチしていました。彼女をステッチしていると、自分のスタイルや自分が何をしたいのかがわかります。別のプロジェクトをステッチしているだけだと思っていたのに、それによって自分のスタイルや自分自身が見える作品になるなんて、最高の気分です」
アル・サワフさんは、クロスステッチの愛好家に対し、ケガや体への負担を防ぐために、手や首、背中、目を常にケアすることの重要性を強調した。
「私たちステッチをやる人間は、手だけでなく首、背中、目もケアする必要があります。ステッチをする前に、手や手首をストレッチしてもいいでしょう。フープや針を持つときに力を入れ過ぎないようにすることがとても大切です。楽しめる趣味なので、手をリラックスさせ、ステッチを楽しみ、ときどき手を動かすようにしてください」
「作品制作中は首や背中をまっすぐにします。適切な椅子と、手や背中、肩を支えるピローを選びましょう。個人的に、目は最も重要だと思います。十分な光と最適なメガネや老眼鏡が必要です。目を酷使しないようにしてください。疲れたときや涙目になったら休みましょう」
クロスステッチは、途中で自分が何を縫っているのかわからないところがすごく好きです。遠くから見て初めて全体像がわかるんです。自分の手で縫っただけで、こんなに美しいものができることに、いつも胸がドキドキします
アラー・アル・サワフ
アル・サワフさんによると、作品を仕上げるのに必要な時間はサイズによって違うという。小さな作品なら3~6週間、大きいものや複雑な作品になると11カ月~2年ほどかかることもある。
彼女は現在フックス角膜内皮ジストロフィ(角膜に水がたまる病気)の治療を受けている。
「だんだん目が見えなくなっていく病気で、治すには角膜を移植するしかありません」と彼女は言う。
趣味への情熱によって彼女は強くなり、病気を治すと決めた。
「フックス角膜内皮ジストロフィを患っているので、やがて視力を失い、失明します。私には2つの選択肢が残されています。視力を失い新しい生活に適応するか、手術を受けるかです。私は見ることを選びました。大好きなステッチ見て、やり続けることができるなら、何でもしようと決めました」