
ダボス:サウジアラビアの外務大臣であるファイサル・ビン・ファルハーン王子は、米・中・露の大国間の戦略地政学的な競争が激化する中、世界的な対話と協力を呼びかけた。
「我々が新型コロナパンデミックから学んだことがあるとしたら、それは協力を重視する必要性、協力を育む道を探し続ける必要性だ」と、サウジ外相のファイサル王子はスイスのダボスで開催中の世界経済フォーラム(WEF)のパネルディスカッションで発言した。同ディスカッションでは、ロシアによるウクライナ侵攻後の世界の地政学的展望について議論された。
三大国が地政学的なシフトを図りつつある。最近に軍事侵攻を行ったロシア、大規模な「一帯一路」構想を掲げる中国、新たな経済・軍事提携を結んだ米国である。
米国のジョー・バイデン大統領は今週、日本、オーストラリア、インドとの安全保障グループであるクアッドの首脳たちと会談した。首脳たちは、中国の影響力増大に直面する中、インド太平洋地域の自由と開放性を確保する決意を強調した。
「たとえ違いや競争が存在しても、互いに話し合うための仕組みを見つける必要がある。そして、全ての大国との関係を持ち、世界の非常に重要な部分で役割を担っているサウジアラビアは、特に中国と米国の文脈で話をする時には、何らかの対話を促すことができると考えている」とファイサル王子は語った。
中国はサウジアラビアにとって主要な貿易相手国となっており、2020年には中国への出荷額が334億ドルに達し(ほとんどが原油と石油派生品)、輸出は過去25年間で毎年平均19パーセント増加している。
一方の米国は、サウジアラビアと長期にわたる安全保障関係を築いており、サウジアラビアは米国にとって1000億ドル以上の活発な売上をもたらす対外有償軍事援助の最大の顧客となっている。
しかし、特に食料安全保障のような問題において協力がなければ、「特に発展途上国において大きな困難に直面するだろう」と、ファイサル王子は語った。
「サウジアラビアはG20加盟国だが発展途上国でもあり、他の発展途上国を支援できるような形で世界的なアジェンダの設定に貢献したいと強く感じている」と彼は続けた。
世界の舞台で戦略地政学的な課題が深刻化する中、ファイサル王子は中東における外交活動を活発化することで対話と協力への道をより多く開くことができると希望を持っている。
「本当にそれを望んでおり、実現のために懸命に努力している」と彼は語った。
「サウジアラビアは非常に広範囲にわたるビジョンであるビジョン2030を掲げている。地域の安全・安心・安定があって初めてそれを実行できる。そして全ての近隣諸国の協力があって初めてそれが実現する。だから我々はそのような対話と協力の道を歩み続ける」と、ファイサル王子はWEFのパネルディスカッションで語った。
同ディスカッションの中で、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は「ロシアによる侵攻は2年前には考えられなかった」と述べ、「あのような規模で侵攻が起こるとは予期していなかった」と続けた。
ポーランド大統領は「ロシアによる国際法違反は隣国として受け入れられない。ロシアがウクライナに侵攻した理由は他に考えられない。侵攻は純粋にロシアの帝国的野望によるものだ」と語った。
フィンランドのペッカ・ハーヴィスト外相は、「まだ加盟していないにもかかわらず、主要なNATO加盟国が安全保障上の確約をしてくれたこと」を嬉しく思うと述べた。
フィンランドはNATOを「共通の価値観と非常に強力な大西洋横断協力関係を持つ民主主義国のグループ」として見ていると、同外相は語った。
冷戦中は共に中立国だったスウェーデンとフィンランドは、ロシアによるウクライナ侵攻に刺激され、先週NATOへの加盟を正式に申請した。
フィンランドは1300キロメートルにわたってロシアと国境を接しており、「より高いリスクを引き受ける」意志とハーヴィスト外相が表現するロシアの姿勢に対する懸念が高まっている。
「全く異次元のリスク引き受け能力だ。ロシアは全く予想がつかない行動をしている」とフィンランド外相は語った。