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サウジアラビア、アラブ連盟サミットで地域問題への「自力」の解決策を提示へ:専門家

ジェッダで開催される第32回アラブ連盟サミットに向けて、アラブ外相準備会合に出席する代表者たち。(AFP)
ジェッダで開催される第32回アラブ連盟サミットに向けて、アラブ外相準備会合に出席する代表者たち。(AFP)
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19 May 2023 12:05:47 GMT9
19 May 2023 12:05:47 GMT9
  • ジェッダ・サミット前に、サウジアラビア主導で地域危機へのアラブの統一的な立場を築くことを目的とした取り組みが為された
  • アラブ地域内でのサウジアラビアの信頼性の高まりにより今回のサミットはこれまでとは違ったものになると、専門家らは述べている

レイド・オマリ

アマン:サウジアラビアの沿岸都市ジェッダにおいて第32回アラブ連盟サミットが開催される。アラブ世界の数多くの地域が変化と激動に見舞われている時期に開かれる首脳会議である。このサミットは、また、汎アラブグループのメンバー国間の団結と目的意識の拡大・進化への希求とも呼応している。

このサミットに先立って専門家らがアラブニュースに語ったところによると、サウジアラビアの信頼性の高まりと地域問題に対する「自力」の解決策への支持がこの集団的協力要請の推進力となったという。

今回の首脳会議は、スーダンで破滅的な紛争と人道的緊急事態が進行する中で開催される。イスラエル・パレスチナ間の最近の緊張状態も、重要議題となることが予想されている。

このサミットでは、イエメン戦争の解決への進展など、何らかの建設的な動きがあることに疑いの余地は無い。今回は、また、2011年の資格停止以来、シリア首脳が出席する初めてのサミットとなり、シリアのアラブ連盟への復帰を示す機会ともなる。

全般的に、このサミットでは楽観的な雰囲気が広がっている。専門家らは、今回は、これまでのようなただの「儀式的」な行事や「会議のための会議」ではなく、地域の多様な問題に対してリーダーシップを発揮するための実際的で前向きな会合になるであろうと述べている。

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「1945年の設立以来、これまでのアラブ連盟のサミットは、地域の危機と汎アラブ組織内の意見の不一致に苛まされ、中止となることや具体的な成果に至らないことが多々ありました」と、ヨルダンの議員で政治アナリストのオマール・アヤスラ氏はアラブニュースに語った。

「しかし、ジェッダでのサミットは異なる見込みです。サウジアラビアが主導する多くの取り組みや実務的な手順がサミットに先行して行われているのです。そうした取り組みや手順の目的は、この会議のための前向きな立脚点を確保し、その結果として地域の危機に対するアラブの団結やそのために必要とされる集団的な枠組みを構築することなのです」

今回のサミットがこれまでとは異なるとアヤスラ氏が考える理由は、サウジアラビアの地域内での信頼性の高まりや、アラブ諸国間の緊張緩和への熱意、世界という文脈の中でアラブの協力戦線をまとめあげようという目的である。

「地域の現行の複数の危機に対する、サウジアラビア主導で自力の解決策を導出することがジェッダでの今回のサミットのテーマとなるでしょう」と、アヤスラ氏は語った。

アヤスラ氏の見解と同様に、地政学分析者のアマール・サバイラ氏は、ジェッダで開催するというシンプルな選択が、このサミットを一層「重要かつ華やかで取り組み甲斐のある」ものにしていると語った。

敵対する2つの勢力間の戦闘が継続する中、ハルツームの建物の上空に上がる煙。2023年5月17日。ハルツームは5月17日に再び戦闘の渦中となった。残忍な紛争が始まって1ヶ月以上となり、国連によれば、既に貧しい国であったスーダンの「人口の半数以上」が援助を必要とするようになってしまった。(AFP)

さらには、「サウジアラビアは全ての課題に関わっている」と、サバイラ氏は語り、このサミットに先行して、アラブ諸国間にコンセンサスを構築し、会合のための明確な議題を設定しようとするサウジアラビアの「絶大な」外交努力を強調した。

ヨルダンの元メディア相のサミフ・マアイタ氏は、今回サミットの成果については楽観視していないが、シリアの復帰により、過去の会合とは異なるものになると期待している。

22ヶ国がメンバーとなっているアラブ連盟は今月初めにシリアの復帰に合意した。バシャール・アサド政権がシリア全土に拡大した抗議活動を弾圧したことにより、シリアはメンバー国としての資格を12年間停止されていた。シリアにおける抗議活動の弾圧は、その後、無残な内戦へと発展してしまった。

アラブ主導の紛争解決計画の構築は、今回のサミットの重要議題になる見込みが高い。

占領下のヨルダン川西岸地区の町フワラで、イスラエル人入植者によるパレスチナ人住民や店舗の攻撃の最中、パレスチナ人男性にライフルを向けるイスラエル人兵士。2022年10月13日。(AFP / 資料写真)

「シリアに関しては、計画表の主要構成要素についジェッダとシリア政権間で合意に至っていいます」と、アヤスラ氏は語った。「ジェッダでのサミットでは、実現に向けての仕組みの要点が述べられると思います」

ヨルダン、エジプト、イラク、シリアの外相が出席した準備会合において、シリア政権は違法な薬物生産や人身売買と戦い、難民の安全な自主帰還を確実にするための現実的な措置を開始することを誓約した。

「今回のジェッダでのサミットでは、シリア危機の政治的解決策をアラブ連盟内で導出しようという流れになることでしょう」と、マアイタ氏は語った。「シリアについては、アラブに主導権があるのです」

シリアのアラブ連盟への復帰がもたらした高揚感は、しかしながら、スーダン軍が準軍事組織の即応支援部隊(RSF)と戦闘状態に陥っているスーダンの情勢によって水を注されそうである。

「スーダンの情勢はこのサミットに悪影響を及ぼすことでしょう」と、マアイタ氏は言った。ジェッダに参集するアラブの指導者たちはスーダンの危機に直面し、紛争当事者のいずれかが完全に打ち倒されるまで終結しないことを痛感させられることでしょう」

専門家らによると、ジェッダでの会合に参加するアラブの首脳たちは、スーダンの対立勢力に対話を求め、数百人を死亡させ数十万人を国外待避させるに至っている紛争を終結させるためのサウジアラビア主導の会談を再開する予定なのだという。

また、イスラエルとガザ地区を支配下に置くハマスの直近の衝突や、エルサレムヨルダン川西岸地区におけるイスラエルの活動、イスラエルの強硬派政権の政策も議題に上ると専門家らは期待している。

「アラブ各国も今回のサミットで和平提案を行い、2002年の『アラブ和平イニシアチブ』で提案された『二国家解決』を再確認することでしょう」と、アヤスラ氏は語った。

サウジアラビアが提唱する「アラブ和平イニシアチブ」は、1967年以前の国境線に基づくパレスチナ独立国家の成立と引き換えに、数十年間に及ぶ紛争の終結、そして、イスラエルとアラブ諸国の関係正常化を呼びかけるものだ。アラブ連盟はこの構想を2007年に再採択した。

第32回アラブ連盟サミット外相準備会合の代表・政府高官会議の議長を務めた国際多国間問題担当副相のアブドルラハマン・アルラッシ博士。(Twitter/@KSAmofaEN)

「イスラエルの政府も社会も極右化しており、パレスチナ・イスラエル紛争に政治的解決の余地はほぼ無いものの、今回のサミットにおいては関連する国際決議に基づく二国家解決を再強調する必要があります」と、マアイタ氏は語った。

これらの課題にも関わらず、今回のサミットは圧倒的に前向きな雰囲気に包まれており、長年の懸案のいくつかがついにアラブ社会自身によって解決されつつあるという感触が広範に共有されている。

「主要な議題についてコンセンサスを得てからそれに従って行動することが、今回のジェッダ・サミットでは最重要なことです」と、サバイラ氏は言った。

「アラブ諸国による協調的な行動を再度活性化し、イニシアチブに勢いを取り戻すことが、今回のサミットの主たる成果となるでしょう」

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