
ジェッダ:アラブ連盟加盟国は19日、サウジアラビアの沿岸都市ジェッダで開催された首脳会議に出席した。10年以上ぶりに全22ヶ国・地域の代表が揃った歴史的サミットとなった。
19日の第32回アラブ連盟首脳会議では「ジェッダ宣言」が採択され、アラブ世界や他の地域における安全と安定の実現に向けたアラブ連盟の統一した立場が再確認された。
アラブ連盟首脳会議の開催は、新型コロナパンデミックを受けた3年間の中断以降では、昨年11月のアルジェリアでの会議に続いてまだ2回目だ。
イスラエルとパレスチナの間の緊張、スーダン紛争、イエメンの和平プロセス、リビアの情勢不安、レバノンの政治状況など、多数の問題が取り上げられた。
重要なのは、シリアがアラブ連盟首脳会議に招待されたのは、2011年に同国が同連盟への参加資格を停止されて以降ではこれが初めてだということだ。
今回のサミットの最終宣言は、アラブ諸国にとって「パレスチナの大義が中心的な問題」であり地域の安定のための主要な要因の一つであることを再確認するとともに、パレスチナ人とその生命、財産、存在に対して行われている全ての行為や侵害を非難した。
また、1967年の境界線に基づき東エルサレムを首都としたパレスチナ独立国家の樹立を確かなものにするために、国連安全保障理事会決議第242号および2002年のアラブ和平イニシアティブに従って、二国家解決を通したパレスチナ問題の包括的かつ公正な解決を実現するための取り組みを強化することの重要性を強調した。
さらに、エルサレムにあるイスラム教徒の聖地の保護の必要性を含め、これまでのサミットにおける立場を改めて強調した。
昨年末ベンヤミン・ネタニヤフ首相が極右政党やユダヤ教超正統派政党を含む連立政権のトップとして復権を果たして以来、イスラエルとパレスチナの間の紛争がエスカレートしている。
ヨルダン川西岸地区では、イスラエル軍が過激派組織に対して急襲を繰り返し、しばしば路上での衝突や銃撃戦に発展するなど、暴力が激化している。
ガザ地区でも今月、イスラエルと過激派組織の間で境界線越しに5日間にわたって攻撃の応酬が行われ、パレスチナ人に33人、イスラエル側に2人の死者が出た。昨年8月の3日間にわたる戦闘でパレスチナ人49人が死亡して以降で最悪の暴力となった。
一方、イスラエルは数十年で最大の国内政治危機に揺さぶられている。汚職容疑で公判中のネタニヤフ首相が主導する司法制度改革計画に反対するデモが続いているのだ。
サミットの最終宣言は、4月15日に国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の間で戦闘が勃発したスーダンの紛争問題については、紛争当事者に対し交渉のテーブルに戻ることと民間人の保護を求めた。
また、「紛争を煽り地域の安全・安定を脅かしかねない外国からの干渉」を拒否するとしつつ、5月6日にジェッダで始まった協議で交渉継続と危機終結に向けた重要な措置が取られたことを評価した。
この紛争ではこれまでに約1000人が死亡した。犠牲者は主に首都ハルツームとその周辺、そして長年紛争が続く西部ダルフール地方で出ている。負傷者は5000人を超えた。
この紛争をきっかけに大規模な難民危機が発生している。国連によると、84万人以上が国内避難民となり、少なくとも22万人が国境を越えて他国へ避難している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、スーダンの人口の半数以上に相当する2500万人が人道援助と保護を必要としていると訴えた。
シリアのアラブ連盟への参加資格は、同国体制が反政府デモを暴力的に弾圧したことを受けて2011年に停止された。この弾圧が後に12年間におよぶ内戦へと発展したことで、同国は分断され、戦前の人口の半数が難民となった。
サミットの最終宣言は、シリアのアラブ連盟復帰は同国の安定と再統一に寄与するだろうとしつつ、加盟国からの支援は「シリアが危機を解決して」再びアラブ世界に貢献するメンバーになるための助けになるとした。
同宣言はイエメンに関しては、国内で行き詰まっている和平努力への支援を呼びかけるとともに、湾岸イニシアティブとそのメカニズムの実施、イエメンの国民的対話、安保理決議第2216号の3つに基づいて危機を政治的に解決するために国際的・地域的に取り組んでいくことを再確認した。
この決議は、フーシ派は紛争中に占領した全ての地域から撤退し、軍事施設や治安施設から奪った武器を放棄し、イエメン正統政府の支配権の範囲内でのみ行っている全ての行動を停止し、これまでの安保理決議を完全に履行しなければならないと明記している。
ムハンマド・アル・ジャーベル駐イエメン・サウジアラビア大使は先月、イエメン政府とフーシ派の間の争点を取り上げた和平案の草案を携えてフーシ派支配下のサヌアに赴いた。
最終宣言はレバノン情勢に関しては、同国への連帯を表明したうえで、「レバノンの全宗派」に対し、同国が今も続く経済危機から脱出するために大統領を選出し改革を実行に移すよう呼びかけた。同国では、ミシェル・アウン前大統領の任期が正式に終了した2022年10月31日から大統領が不在となっている。
また、アラブ諸国の内政への干渉や無許可・非合法な武装組織・民兵組織への支援はいかなるものも拒否するとしたうえで、内部の軍事紛争は問題解決につながることはなく地域の人々の苦しみを悪化させ発展を阻害するだけだと強調した。
宣言は最後に、全てのアラブ市民の固有の権利としての持続可能な発展、安全、安定、平和な暮らしを、全加盟国の協調的・統合的努力によって実現することの重要性を再確認した。
加盟国は、あらゆるレベルにおける犯罪・腐敗との闘いを継続すること、そして安全、安定、幸福に寄与し高めるような形でイノベーションに基づく未来を作る能力を結集することを約束するとした。