日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告の国外逃亡をほう助した容疑で日本への引き渡しを要請されているマサチューセッツ州在住の容疑者の弁護士の主張に対し、アメリカの判事が8月28日疑念を呈した。
元米軍特殊部隊(グリーンベレー)隊員のマイケル・テイラー容疑者と息子のピーター・テイラー容疑者は、日本側の要請を受け今年5月に逮捕された。ゴーン被告を箱の中に隠しプライベートジェット機に乗せレバノンに逃亡するのをほう助した疑いで日本側から逮捕状が出ていた。ゴーン被告は昨年12月に国外逃亡した。自らの報酬を過小申告するなど有価証券報告書の虚偽記載に関する罪に問われ保釈中の身だった。ゴーン被告は容疑を否認している。
テイラー親子を担当するアッベ・ローウェル弁護士は、オンライン審問の場でボストンのドナルド・キャベル米国治安判事に対し、日本の検察当局が法律を曲解し嫌疑不十分なまま2人に逮捕状を出したことを正当化していると述べた。
ローウェル弁護士によると、日本の刑法では「保釈中の失踪」を手助けすることは罪に問われず、テイラー親子を起訴できるのは当局が逃亡前のゴーン被告の行方を既に追っていた場合に限られると主張した。
「かくれんぼは、鬼がいないと成立しません」とローウェル弁護士は述べた。しかしキャベル判事は、両容疑者が日本の刑法に違反したかどうか、米国の裁判所が判断を下すことに懸念を示した。ちなみに父親のマイケル・テイラー被告は民間軍事会社を経営している。
「日本の裁判所や裁判官が事件の全容を解明し、最も適切な判断を下すのを妨害する恐れがある」とキャベル判事は述べた。
スティーブン・ハシンク連邦検事補は、キャベル判事に日本への身柄引き渡し延期を要請した。キャベル判事は1週間以内に判断すると表明した。裁判所がテイラー親子の身柄引き渡しを認めた場合、マイク・ポンペオ国務長官が最終的に判断することとなる。
ロイター通信