
アメーラ・アビド
ジェッダ:アートは、アーティストの感情の経路にたとえられることが多い。しかし、さまざまな分野で活躍するサウジの若いアーティストたちは、自らの作品を用いてサウジの文化からメンタルヘルスの問題まで幅広い問題を探求するようになった。
デジタルアートが専門の23歳のジャワヒール・ハルディ氏は、サウジの文化を世界に発信したいとアラブニュースに語った。
「眺めたり鑑賞したりするだけではなく、共感し、つながりを持てるようなアートを作りたいです。私の作品を見れば一体感を味わえるような作品です」
ハルディ氏はスキルシェアやユーチューブなどのプラットフォームで技術を身につけたという。「自分のスタイルを育てるのは難しかったです。それは自分にとって大事な事柄を相手に伝えることです。以前グラフィックノベルをたくさん読んでいて、それが言わば今の私のスタイルになっています。つまり、スタイルとは何年もかけて手に入れていくものです」
この独学のアーティストは、絵を描くのは自分の気持ちや考えを伝えたいからだと言った。そのためには、周囲の世界のありようをとらえる必要がある。
ハルディ氏は、サウジの環境の外にいたら自分自身を表現しにくくなるだろうと語った。サウジは彼女が育った場所だからだ。
「自分の思い出を描いた『ヒッサ・サドサ(6時間目)』という作品があります。私は公立の学校を卒業したのですが、よく6時間目をサボって階段に隠れて遊んでいました。大好きな思い出なので、この作品も気に入っています」
ハルディ氏に寄せられるコメントの大半は好意的だ。「でも『どうしてこの少年は宝石を身につけているの? おかしい』などと言われるときもあります。でもそういう批評は気にしないことにしています」と彼女は言った。
シャハド・マトク・アル・ソナール氏は、心理学への関心を活かして、メンタルヘルスの問題に悩む人への共感を求めるアートを制作している。
人々に理解を深めてもらうことではなく、「苦しみを実感してもらうこと」が一番の目的だという。
アル・ソナール氏は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、自閉症、失読症、うつ病、双極性障害を扱ったイラストレーションを制作してきた。
「私の絵は、見る人が落ち着かない気分になるように作られています。なぜなら、それが患者の感じていることだからです」と語った。
アル・ソナール氏は、誤った解釈を避けるため、1つの症状に対して長いときで6カ月間の調査を行うなど、手間と時間がかかる制作過程をふんでいる。また、1人の患者と長い期間を共に過ごし、その人物の気持ちを絵画で伝えられるよう努めている。
アル・ソナール氏は、特定の症状の経験を伝えるにあたって、どんな間違いもゆるされないと思うと常にプレッシャーを感じると語った。
「伝えることの重要性に気づいてからはさらに意欲がわき、絵を完成させてソーシャルメディアにアップしようと思うようになりました」
アル・ソナール氏のアーティストとしての歩みは決してらくではなかった。作品を見て、もっと「シリアスな」手法で描いたほうが、印象が強くなるのではないか、と言う人もいる。
「私のアートはアートではない、とまで言う人もいます。でも、素晴らしいコメントもたくさんついています。たとえ否定的なコメントがあっても、署名を見なくても私の絵だと分かってもらえるくらい、自分のスタイルを確立してきたと思っています」と彼女は述べた。
アル・ソナール氏は、メンタルヘルスの問題を抱えた人に対してもっと心を開き、「その人たちを理解するために最善を尽くす」ことを呼びかけた。