

【リヤド/パリ】
ウラー王立委員会(RCU)は14日、古代遺跡から出た5枚の青銅貨の返還を受けた。フランス人地質技師のジャン=クロード・ルフェーヴル氏が1966年にウラーで少年からもらったものだ。
ルフェーヴル氏は、パリ・アラブ世界研究所(IMA)で開催中の『ウラー――アラビアの奇観』展を訪れたことをきっかけに、硬貨の返還を思い立った。
ルフェーヴル氏は2月14日、IMAのアブドゥルラフマーン・アッスハイバーニー博物館・展示担当代理(博士)と会い、硬貨を手渡した。硬貨は今後、委員会の考古学者らにより研究され、その起源の究明、ヘグラにおける古代商業路のさらなる理解がはかられる。
アッスハイバーニー博士は語る。「私たちの古代遺産を守り抜いていただき、ルフェーヴル氏には感謝したい。IMA展では去年10月に文化宣言を発表しているが、その結果こうした前向きの行動を促したこと、また王立委員会が古代遺産の保守保存に努めていることがより知られるようになり、欣快のいたりだ。硬貨については今後、解読・研究に回す前に清掃・保全をおこなう予定だ」
ルフェーヴル氏は1966年当時、サウジの石油鉱物資源省の仕事でウラーを訪れていた。現在はサウジには文化遺産についてこれを保護・保守する法律があり、住民や訪問者による持ち出しは禁じられている。
ヘグラは2008年にサウジ初のユネスコ世界遺産となった。ウラー王立委員会は王令により2017年に設立、ウラーの古代遺産の保護に当たるとともに、ウラーの地域住民と協力しながらウラー地域全体を世界最大の生きた野外博物館として開発する業務に着手している。
ヘグラに象徴的な古代霊廟をいくつも建造したナバテア人の遺物には古代都市や非宗教的な遺跡もある。ナバテア人はローマ帝国のトラヤヌス帝の差し向けた兵に征服されるまで、少なくとも紀元前1世紀から紀元106年まで一帯を支配していた。
ナバテア人はヘグラで「香料の道」を差配していた。香料の道とは、アラビア半島南部から地中海まで、乳香などの香料が行き来するのに用いられた交易路のことだ。
ナバテア人以前は、もうひとつのウラー文明であるダダーン=リフヤーン王国が貿易を取り仕切っていた。
サウジとフランスによる共同任務が始まった2008年以降、ヘグラでは定期的な発掘調査がおこなわれ、古代ナバテア人の日常生活や儀式などはその多くが明らかになっている。調査によりローマ人は当時ヘグラに前哨地を設けていたこともわかった。ローマ人居留地としてはこれまで知られた最南となる。
アッスハイバーニー博士は語る。「出土したのは陶器片や砂岩による彫刻のかけらが大半だ。どんな小さなかけらであっても、古代の生活に光明の見いだせる価値ある情報といえる。今回提供された硬貨はヘグラでもともとどういう状態であったかが不明なため科学的価値は劣るものの、純化すればナバテア人やローマ人について重要な情報も得られるはずだ」
ウラー王立委員会で広報を担当するサアド・アルマトラフィー氏は、近ごろ流布しているウラーでの金発見についての噂は否定した。「ネット上に出回っている動画は古いもので、ウラーのウム・アッダラジュで発見されたリフヤーン陶像の小片発見が誇大に喧伝されているにすぎない」
「ウラーには金はない」とアルマトラフィー氏。
『ウラー――アラビアの奇観』展は3月7日までパリのアラブ世界研究所で公開中だ。ウラーの宝物の数々が展示されている。