
ハゼム・バルーシャ
ガザ:ハニ・アルマサライさん(32)は、ガザの地元ラジオ局の司会者がヨルダン川西岸地区の地方議会選挙について話し始めると、音量を上げた。
ナブルスからの出演者が選挙について番組で質問を受けている時、理容師として働くアルマサライさんは、「ガザではなぜ選挙をやらないのでしょう?」と声を上げた。
ヨルダン川西岸地区では26日、2回目の地方議会選挙が行われた。実施地域には主要都市を含む50の都市と村が含まれ、パレスチナの諸派閥・無所属の候補者たちが選挙を戦った。ハマスとイスラム聖戦は参加していない。
「政治は私たちの生活をすみずみまで支配していますが、政治家たちは私たちが声を上げられないように、ノーという意見が言えないようにしているのですす。私たちは羊か何かのように見られているのでしょう。私たちは自分の意見を持たない存在で、誰が私たちを支配しコントロールするかは彼らが選ぶ、というわけです」とアルマサライさんはアラブニュースに語った。
彼はガザでの選挙に参加したことがない。世界の他の場所で行われる選挙をテレビで見たことがあるだけだ。
「ガザでの最後の選挙は2006年でしたが、そのとき私は16歳くらいで、まだ選挙権を持っていませんでした。それから選挙に行ける日を長い間待っていましたが、残念ながらまだ実現していません」とアルマサライさんは言う。
ファタハとハマスはこれまでも立法評議会および地方議会選挙の実施に何度か合意しているが、そのたびに異なる理由で選挙は中止されてきた。直近では、昨年5月に立法評議会選挙が中止されており、その際マフムード・アッバース大統領は、イスラエル政府がエルサレムでの選挙実施を阻止した批判した。
ラワン・ユニスさん(44)は、投票権を行使できないこと、つまりパレスチナ人がヨルダン川西岸で権利を行使しているのに、ガザでは行使できないことに憤慨している。
「私たちは分断の犠牲者です。誰も私たちを普通の市民として見てくれません。私たちには、自分たちの代表者を選ぶ権利があります。各政党が他の党のせいにばかりして、結局は選挙がないのです」とユニスさんは話した。
ラワンさんは、アッバース氏が当選した2005年と、2006年の立法評議会選挙の2回、選挙に投票したことがある。
「自分の子どもたちを見ていると、民主主義がないのならこの子たちの未来はいったいどうなるのだろうと思ってしまいます。民主主義こそ、私たち市民に公共の政策に影響を与える力をくれるものだというのに。」
ガザ地区の地方議会議員は、ハマスが、2007年に同地区を支配するようになって以来、選挙なしで数年おきに任命してきた。
アーメド・アルラバイさん(73)は、ヨルダン川西岸地区で行われている地方議会選挙には関心がないという。「これは必要のない政治的なお芝居にすぎないと思います。」
近所の人たちと一緒に自宅に座って、アルラバイさんは次のように話した。「私たちが欲しいのは選挙ではなく、子どもたちの自由と、まともな生活です。選挙は政治家のためのゲームで、誰だろうと金と権力を持っている者が勝つのです」
「私たちはこれまで選挙で何度か投票してきました。でも、選挙が行われるたびに、状況はひどくなるばかりなのです。ハマスであれファタハであれ、私たちが選んだ人は皆、人々への支配力を強めるだけで、私たちをより貧しくしてしまいました。」